【Q&A】子宮内膜症あり、妊娠の可能性は?~髙木先生【医師監修】

りんごさん(29歳)

タイミング8回、人工授精2回目です。
第1子は自然妊娠ですぐに授かりました。

性交後、次の日に椅子に座るとおしりの奥が痛むため、医師の内診時に膣の奥を押してもらいました。その際、おしり側の奥の方に痛みを感じました。主治医からは骨盤内膜症と診断を受けましたが、これは慢性子宮内膜炎とは異なるのでしょうか。主治医に「もし慢性子宮内膜炎があったとしても、体外受精を何度か失敗してから検査をしましょう」と言われており、もやもやしています。

検査薬陰性を繰り返すことによる精神的な落ち込みもあるため、体外受精に進む前に検査や治療をしたいのですが難しいのでしょうか。

このまま人工受精や体外受精をして、陽性が出ることはありますか。

津田沼IVFクリニックの高木先生に伺いました。

津田沼IVFクリニック 院長 髙木 亜由美 先生
千葉大学医学部附属病院、千葉メディカルセンターなどで不妊治療に従事。特に千葉大学医学部附属病院時代に、専門の生殖医療や内分泌医療のほか、不妊の患者様の腹腔鏡手術や子宮鏡手術等も数多く経験する。その後、2024年9月より津田沼IVFクリニックの院長に就任。それぞれの女性にあったきめ細かい医療を目指す。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●骨盤内膜症と慢性子宮内膜炎の違いについて教えてください。

まず、慢性子宮内膜炎と子宮内膜症(骨盤内膜症)は全く異なる疾患です。子宮内膜症は、子宮内膜またはそれに類似した組織が、本来の子宮内膜以外の骨盤内(卵巣、卵管、ダグラス窩、骨盤腹膜など)に存在し、月経周期に応じて増殖・出血・炎症を繰り返すことで、さまざまな症状を引き起こす病気です。原因は不明ですが、月経血の逆流説などが有力で、ホルモン依存性疾患です。強い月経痛・性交痛・排便痛の症状があり、不妊の原因としては卵管閉塞・卵巣癒着・排卵障害など、より多方面で妊娠の妨げになります。
一方、慢性子宮内膜炎は子宮内膜に炎症が起きている状態です。主に細菌感染が原因です。
軽度の不正出血やおりもの増加もありますが、無症状も多く、不妊の原因としては着床障害です。

●慢性子宮内膜炎の検査を体外受精前に行うことは可能ですか?

可能です。慢性子宮内膜炎に対しては、子宮鏡検査や子宮内膜生検(CD138陽性の形質細胞)を行います。
子宮内膜症(骨盤内膜症)は臨床症状や内診所見、超音波、MRIなどで診断します。


●人工授精や体外受精での妊娠成功率について教えてください。

人工授精での1回あたりの妊娠率は、およそ 5〜10%です。
体外受精1回あたりの妊娠率は、日本産科婦人科学会(JSOG)のデータでは35歳未満で約35〜40%、施設によりますが20代では50%を超えると思われます。

●精神的な落ち込みを軽減する方法についてアドバイスをお願いします。

ゴールがみえないのはつらいものです。今回質問してくれたように、わからないことを聞くことで進むべき道がみえてきたり、また、もやもやした気持ちを出して、聞いてもらうことやアドバイスを受けることで、すっきりするのこともあるのではと思います。一人でかかえこまず、相談してくれると良い思っています。結果が出ない方向で立ち止まるよりは、より妊娠率の高い治療に進むのも良いでしょう。また妊娠をめざすことは心身ともに健康を目指すことでもあるので運動や趣味なども加えて楽しく健康ライフとして過ごすようにするのも良いです。

●現在の治療方針に対して、先生でしたらどのような提案をされますか?

相談者さんは、性交痛やお尻の奥の痛みがあるのと医師の内診の判断から子宮内膜症(骨盤内膜症)があると思います。一般的に妊娠に不利な要因であるので、早めの妊娠がすすめられます。ホルモン依存性疾患なので、年々症状はすすみますし、年齢が上昇すると妊娠はさらに難しくなってしまいます。
検査は、先に述べたように子宮内膜症については臨床症状や内診所見や超音波検査である程度診断がつきますが、MRIをとることもあります。所見が強いなら早く進みましょう。
慢性子宮内膜炎があるかどうかについては子宮鏡検査を勧めます。所見があれば抗生剤治療やプロバイオティクスの治療をします。さらに子宮内膜組織を採取してCD138検査をすることもできますが、どの段階でやるかは要相談です。今後の治療方針としては、内膜症の評価をし、体外受精に進むことを検討してみてください。きちんと評価して話し合うことで、あなたにあった、うまくいく方法が見いだせるはずです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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