【Q&A】移植失敗…E2不足が原因?~稲垣先生【医師監修】

さくらさん(37歳)

4回目の移植をしました。4AA の凍結胚盤胞をホルモン補充周期で移植して、陰性でした。

3回目までは関西の病院で移植しました。3回目での移植は2個移植で、化学流産となりました。
この病院では自然周期にトライしても卵胞育たず、毎回ホルモン補充移植でしたが、E2がいつも低く、内膜も厚くなりにくかったです。
そのため、3回目の移植周期ではエストラジオール9錠/日、エストロジェル9プッシュ/日でした(エストラーナテープはかぶれが酷く、使えませんでした)。
今のクリニックでは「保険の場合は移植周期に採血ができない」と言われ、前医でE2が低かったことを伝えるとエストラジオール9錠/日のみで、エストロジェルは無しでした。

今回、移植4回目での結果の時に採血したのですが、hCGのみで、前医ではあったE2、Pがありませんでした。今回の結果が陰性なのは、E2が低かったのではないかと、心配です。
前医では保険で採血してくれたのに、病院や地域によって保険で採血できない、なんてことはあるのでしょうか?

まだ現クリニックに凍結胚が残っているので、今後もこちらで移植をお願いするつもりです。ですが、エストラジオール9錠だけで、ホルモン補充になっているのでしょうか?

もし、保険で採血もお願いしたい場合や、お薬の増量をお願いする場合はどのようにお伝えしたら、病院側としてご迷惑にならないでしょうか?現クリニックではエストラーナテープはあるものの、エストロジェルは取り扱っていなさそうです。

稲垣先生にお話をおうかがいしました。

【医師監修】いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生 
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●さくらさんの場合、エストラジオール 9錠のみのホルモン補充が十分かどうか、先生の視点から見ていかがでしょうか?

内服量は十分だと思います。ただ、反応が不十分であれば、状況をカルテに詳記して増量等を検討したり、服用ルートの変更(つまり薬剤変更)の検討もあると思います。しかしながらエストラジオール剤をいくら増量しても内膜厚が出ない患者さんも一定数おり、生殖医療における未解決問題の一つとも言える難しい問題かもしれません。

●前回の移植時に E2の数値が低かったようですが、今回の移植が陰性だった原因は  E2の低さにある可能性はあるでしょうか?

E2が実測されていないので、推測でお答えすることはできませんが、黄体化前にある程度のE2レベルと内膜厚が必要と考えます。基準(値)は各施設ごとに異なるとは思いますが、当院も基準をクリアしていない場合は胚移植をキャンセルします。


●保険の適用による採血の可否は、病院や地域によって違うものなのでしょうか?また、具体的な理由を教えていただけますか?

保険診療のいわゆるレセプトのチェックは各都道府県ごとに行われており、もちろんその基準は原則一定ですが、細かな解釈や判断に迷うケースなどの対応が違うことはあるようです(定期的に会合が開かれて都度是正されるそうです)過去に保険適応が可能と判断して実施した検査や処方がみとめられなかったりした場合、以降はそれらの診療は自粛せざるを得なくなる場合があります。

●さくらさんが保険で採血や薬の増量をお願いしたい場合、どのように病院側に伝えれば良いでしょうか?

しないほうがいいと思います。医療従事者側も、実施したくても適応外と判断されることを怖れて必要性はみとめているが実施できないケースも多々ありますし、場合によっては実施したにもかかわらず、保険適応がないため無償で実施されているような診療も実際はあります。いい例が超音波検査です。一般不妊治療において、排卵誘発等が行われていない場合、その周期に卵胞計測として施行できる超音波検査は月に一回です。二回目以降は実施しても費用の請求はできません。このように医療従事者もジレンマを抱えながら診療していることをぜひ知ってください。

●現在のクリニックではエストロジェルの取り扱いがないようですが、エストラジオールの増量や他の方法でホルモン補充を十分に行うことは可能でしょうか?

上記のように、所見や症状を詳記すればある程度の薬剤の増量は可能と考えます。ただし、効能の同じ薬剤を複数処方することは原則認められていないので注意が必要です。保険で適応のないもの(保険診療で認められた回数を超えた検査の施行や同効薬剤の複数同時処方など)については自費で、と考えるかもしれませんが、不妊治療においては月経から月経までの1周期が「一連の」治療とされ、その間の診療は保険であれば保険診療のみで行われなくてはなりません。すなわち部分的に自費診療で補完することは「混合診療」とみなされ、わが国では認められていません。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。