チョコレート囊胞あり。2人目妊活中ですが妊娠までいきません…

相談者 :タマさん(43歳)
▶︎凍結胚が全部で5個。移植方法に悩み中です
8cm のチョコレート囊胞あり。37 歳の時、アンタゴニスト法で採卵し、7個の胚盤胞を凍結。そのうち1つを移植し、出産。2人目妊活で残り6個を移植するもすべてNG。PPOS 法で7個採卵するも胚盤胞までいかず。その後、自費のショート法で16 個採卵でき、3個胚盤胞に。今、胚盤胞のKID Score※が 9.6(グレードAA)、7.5(BB)、5.5(BB)、4.7(BC)、2.0(CC)と5個ありますが、2個移植しようか迷い中です。
※ KID Score:タイムラプスで胚の発育をAI 解析し、数値評価したもの。
【医師監修】高崎ARTクリニック 吉田 敬三 先生
日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医学会生殖専門医。母体保護法指定医。東京大学経済学部卒業後、食品メーカーに勤務。「もっとみんなに喜んでもらえる仕事をしたい」と考え、45 歳の時に信州大学医学部入学。卒業後、高崎ARTクリニック、操レディスホスピタルなどを経て、2024 年、再び高崎ARTクリニックに戻り院長に就任。ソムリエの資格も持つ。

数値の良い9.6(AA)と7.5(BB)を2個移植することについて、先生のお考えをお教えください。

吉田先生●妊娠率を高めるために受精卵を2個同時に移植する2個胚移植の方法を希望される方は、結構いらっしゃいます。43歳の方の胚移植の妊娠率は日本産科婦人科学会のデータでは約15%となっていますが、2個胚移植ですと当院のデータでは、1個胚移植に比較して約1.4倍になります。一方で、タマさんが移植を考えられている胚盤胞はともに良好胚に分類され、良好胚を2個胚移植した場合の双胎妊娠の割合は約20%とかなり高くなっています。

双子を妊娠した場合、タマさんの状況から考えて気をつけたいことは?

吉田先生●タマさんの場合、心配なのは43歳という年齢と8㎝のチョコレート囊胞です。高齢妊娠では妊娠合併症のリスクが高く、さらに双胎妊娠では妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を増悪させる可能性があります。また、妊娠でお腹の中のスペースが狭まることにより、チョコレート囊胞で大きくなった卵巣の捻れが戻らず、捻転をおこし、腹痛につながる卵巣茎捻転や、大きくなった子宮に押されてチョコレート囊胞が破れ、腹腔内に内容物が漏れることで感染や腹痛を起こすといったリスクも双胎妊娠では上昇します。

タマさん自身は低刺激や中刺激法も視野に入れているそうですが、もし次に刺激法を行うならどれを選ぶのがいいでしょうか。

吉田先生●37歳の時にアンタゴニスト法で採卵した卵子で受精した胚盤胞で正常妊娠・出産されていますし、その後のいずれの刺激法でも7~14個とたくさん採卵できているので、タマさんは強刺激のままでいいと思います。その中でも、妊娠、出産に至ったアンタゴニスト法に戻してみるのもありだと思います。

その他、やっておくといい検査などがありましたら教えてください。

吉田先生●一般的にチョコレート囊胞は摘出手術より妊娠を優先しますが、8cmの大きな囊胞では、そのまま妊娠した時のリスクを考えると摘出後の移植もありかと考えます。摘出は腹腔鏡下手術でできますので、グレードの良い胚盤胞を貯めてから手術をし、術後1~3カ月くらいでの移植をおすすめします。また、チョコレート囊胞など子宮内膜症の方は、免疫細胞の異常から着床障害や不育症になることも多く、Th1/Th2比検査、NK細胞活性検査等を受けられることをおすすめします。

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