3回目の移植前に先進医療を試したほうがいいですか?

相談者 :あみさん(37歳)
▶︎次回の採卵に向けた先進医療の選択について
人工授精から体外受精に切り替えて2回移植しましたが着床せず、再度採卵からスタート予定です。病院より「何か先進医療で試したいものがあったら、次回の移植時にいってください」といわれました。確率が上がるのであれば試してみたいですが、「夫婦で話し合ってください」とのことで何をしたほうがいいのか、しなくていいのかわかりません。SEET 法、子宮内フローラ、子宮内膜スクラッチなど考えてみましたが、今後の治療法はどうしたらいいでしょうか。
【医師監修】Noah ART Clinic 武蔵小杉 久慈 直昭 先生
慶應義塾大学医学部卒。東京医科大学産婦人科学教授を経て、2023 年5 月より、Noah ART Clinic 武蔵小杉の統括医師に。生殖医療専門医・指導医。臨床遺伝専門医。

2回受精卵を戻しても妊娠しない場合、反復着床不全ということになるのでしょうか。

久慈先生●通常、37歳であれば妊娠率は20%くらいだと思います。出産までいく確率はもっと下がって15%程度。そうすると1回目で妊娠しない確率は80%、2回目で妊娠しない確率は64%ということに。日本産科婦人科学会では「3回の移植で4個以上受精卵を戻しても妊娠しなければ反復着床不全といっていい」と定義づけているので、それに当てはめると、この方はまだそこまでには達していないと思います。

この方の場合、どのような先進医療を試してみるのがおすすめですか?

久慈先生●受精卵が着床しない原因として2つ考えられると思います。1つは受精卵側の問題。もう一つは受精卵を受け入れる子宮側の問題です。子宮側に着目して先進医療を考えるのなら、子宮内膜スクラッチ法、SEET法、また検査として子宮内フローラ検査が代表的なものだといえるでしょう。害が少なく、ある程度効果があるかもしれないということで広く行われています。

あみさんもそれらの先進医療を試したほうがいいのでしょうか?

久慈先生●「絶対試したほうがいい」とはいいきれませんが、ご夫婦で話し合って「受けたい」という希望があれば、この方には子宮内膜スクラッチとSEET法がいいのではないでしょうか。それぞれ異なる機序で治療するので、両方トライしてみてもいいかと思います。
子宮内フローラの検査は優先順位としては低いのでは。この方は以前、慢性子宮内膜炎を調べるCD138の検査を受けて、結果は異常なしとのこと。子宮内膜炎がない状態で子宮内フローラ検査をしてもあまり意味がないような気がします。

先生なら、今後どのような治療方針を立てますか。

久慈先生●当院であればすぐに先進医療をおすすめするのではなく、「もう一度採卵してみましょう」とご提案すると思います。あみさんはまだ採卵を1回しかしておらず、同じ方法でできた受精卵を使って2回戻しています。
メインの排卵誘発剤は同じでも補助的なお薬を変えてみるなど、誘発法に工夫を加えるのも一つのやり方だと思いますね。あみさんはあと4回保険診療で移植が可能。受精卵のつくり方を変えて次の移植にトライし、それでも結果が出なければその時に先進医療を受けることを考えられてもいいかと思います。

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