排卵検査薬が反応せず高温期も低くガタガタ。自然妊娠は難しい?

相談者 :もかさん(28歳)
▶︎排卵していない可能性もある?
ピルをやめて二人で妊活を始め、排卵予測アプリや排卵検査薬を使っていますが、なかなか授かりません。月経はピル服用前よりも経血量が減って期間も短く、検査薬は強陽性にならず、基礎体温も二相ながら全体的に低めで高温期がガタガタです。共働きで頻繁にタイミングも取れず、通院にも踏み切れず、自然妊娠への思いが残っています。自然妊娠は難しいのか、できることへのアドバイス、不妊の原因として考えられることなど、通院の心づもりとして教えてください。
【医師監修】田村秀子婦人科医院 田中 紀子 先生
京都府立医科大学医学部大学院修了。2008 年から田村秀子婦人科医院に勤務。2025 年1 月より田村秀子婦人科医院の院長に就任。日本生殖医学会認定 生殖医療専門医。

低用量ピルをやめた後、生理の量が減り、期間が短くなったそうです。

田中先生●最近は月経困難症の治療目的で低用量ピルを服用する方が増えています。服用中はピルに含まれる黄体ホルモンの働きで子宮内膜が薄くなり、生理の量を減らし、生理痛も軽くなります。長期間ピルを服用した後にピルをやめても、その影響がしばらく残ることはありますが、通常は自然な月経周期を何度か繰り返し、元の状態に戻っていくことがほとんどです。そのため、これだけが妊娠にとって大きな問題になるわけではありません。ピルを飲んでいた人と飲んでいなかった人の半年〜1年以内の妊娠率は、ほとんど差がないといわれています。実際に8〜9割の方が妊娠されているというデータもあります。

排卵検査薬が強陽性にならず、反応がはっきりしないそうです。

田中先生●タイミングの時期を見るのに便利な排卵検査薬、でも実際に使ってみると、陽性反応がはっきりせずタイミングをとれなかった、ということも。排卵の24~36時間前に脳から一気に黄体形成ホルモン(LH)が分泌され(LHサージ)、排卵検査薬は尿中のLHに反応します。反応がはっきりしなかった理由としてまず考えられるのは、排卵の時期がずれていたり、検査薬の使い方が悪かったり。検査薬を使う際は、できるだけ同じ時間に一定の条件で測ることが大切です。
また、もう一つの可能性として、LHの分泌が少なく不安定だったり、実際に排卵していなかったり、ということも考えられます。排卵期近くになると透明の水っぽいオリモノが徐々に増え、排卵の終了と共にオリモノは減ります。普段から基礎体温や排卵検査薬とあわせて自分の体の変化も観察しておくと、排卵のタイミングを逃さず、より把握しやすいと思います。この変化がわかりにくい場合には何か問題があるかもしれませんので、早めに不妊外来の受診をおすすめします。

排卵していなくても、生理はくるのでしょうか?

田中先生●月に一度「出血」があることを生理だと思っている方もおられますが、いわゆるちゃんとした「生理」は、排卵して10日から2週間後に起こる出血です。ホルモンバランスが悪く排卵をしていないようなとき、ホルモンの分泌が不安定になった影響で不正出血を起こすことがあります。このような無排卵出血では生理痛や出血も少なめで、出血期間も長かったり短かったり。排卵がある方は基礎体温が二相に分かれますが、排卵がない場合は全体的にガタガタしたわかりにくいグラフになります。もし排卵しているかどうかご不安な場合は、ご自身が排卵期と思われる時期に婦人科を受診し、超音波や血液検査などで総合的に診てもらってくださいね。

基礎体温は二相になっているものの、全体的にガタガタだそうです。

田中先生●高温期は黄体機能を表しています。排卵後に黄体ホルモンがしっかり分泌されると、体温が一定の高さで安定しますが、それがガタガタの場合や、持続期間が短い場合は黄体機能不全が疑われます。黄体期は、排卵後に受精卵が子宮内膜に着床するまでの大切な時期です。この時期に黄体ホルモンが十分に分泌されていないと、その環境が整わず、せっかく着床した受精卵も育たないことがあります。このような場合は採血でホルモン値を測定したり、超音波検査で子宮内膜の厚みや卵胞の消失などを詳しく確認します。なかには排卵しているように見えても、実際は卵胞が破れずに排卵が起こらないまま残ってしまう黄体化未破裂卵胞(LUF)の場合もあり、総合的な判断が必要になります。

ピルをやめて半年ほど自分たちで妊活されています。今後のアドバイスをお願いします。

田中先生●もかさんは28歳ですので、一般的には1年ほど様子を見てもいい年齢ですが、排卵の状態や基礎体温が安定しないなどの不安があるのであれば、検査を受けてもよい時期だと思います。妊娠には排卵だけでなく、卵子の質、ホルモンバランス、ご主人の精子の状態、卵管の通過性(卵管が通っているか)など、さまざまな要素が関係しています。
検査や受診というと、「もう不妊治療に進むの?」と身構える方もいますが、そうではありません。まずは妊娠に向けて自分の体の状態を知るための機会ととらえましょう。その後の受診も排卵前の時期に来ていただくだけでよい場合もあります。ご希望があれば自然妊娠の方向で進めることも可能ですし、タイミング指導だけでサポートできることもあります。「見えない不安」を一つずつ取り除いていくことで、今後どう妊活していくかの道筋がクリアになると思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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