心の安定を優先し、二人らしいペースで治療を継続中
嬉しいこともつらいことも共有し、治療を通して二人の絆を深めています。
常に最善の方法を模索し、不妊治療に取り組んでいるお二人。お料理上手なご主人Zさんの愛情たっぷりなサポートに支えられながら、Yさんは今、5回目の移植を目指して心と体のバランスを整えることに専念しています。
人工授精を5回試すも一度も出なかった陽性反応
2018年、4年間の交際期間を経て結婚したYさん(35歳)とご主人のZさん(34歳)。二人とも将来的に子どもが欲しいと望んでいましたが、幼稚園教諭のYさんはクラス担任を任されるタイミング、Zさんも仕事で多忙な日々を送っていたことから妊活は先延ばしに。職場環境を変えたYさんが生活リズムの変化に慣れてきた頃、本格的に子どものことを意識するようになったそうですが、「私自身に精神的な不安要素があって、体が強張ってしまうため初めてのことや痛みを伴うことができず、タイミング法自体が難しかったんです」とYさん。
そこで、地元の婦人科の先生に相談し、まずは人工授精で妊娠を目指すことにしました。ところが、約1年かけて人工授精を5回試したものの一度も陽性反応は出ないまま。
「人工授精は一般的に何回くらいするのかを先生に聞いていたから、5回を目安にしていました。ちょうど5回目の陰性と保険適用に変わるのが同じ時期だったこともあり、次のステップに進むことにしました」
ステップアップで知った“妊娠しづらい”数値のこと
提携先の不妊治療専門クリニックに転院し、婦人科では調べなかったAMH値を計測。そこで初めて0・25ng/mlととても低い数値だったことを知ったYさん。「今まで人工授精で結果が出なかったのはそういうことだったのかって納得できたし、もっと早く知りたかったというのが本音です」とYさんは当時を振り返ります。
結婚前にブライダルチェックを受けようと考えていたけれど、お互いに仕事が忙しく、機会を逃しているうちに気づけば人工授精の治療に進んでいた…という感覚。
「あの時に検査を受けていれば、もう少し違う結果になっていたかもしれないと後悔する思いもあります」
妊娠しづらいという現実を受け、体外受精にステップアップしたYさんでしたが、低AMHに加え、FSH(卵胞刺激ホルモン)が常に二桁台と高いことも判明。卵巣機能の低下は否めませんが、周期によって卵胞が育つ時もあるため「やってみないとわからない」という状況が続きます。アンタゴニスト法をはじめ試行錯誤で刺激法を変えながら採卵を目指しても、卵胞が小さすぎて採卵できない、遺残卵胞があって採卵周期に入れない、採卵できても1〜2個しか採れない、胚盤胞まで育たない、育っても空胞…の繰り返し。現在は低刺激法に移行していますが、日常生活や仕事にも影響するほどの副作用が顕著に出てしまうなど、薬との相性にも悩まされてしまいます。
ご主人の手料理と漢方で体と心のバランスを整える
そんななか、少しでも可能性を高める生活習慣の見直しを求め、効果が期待される方法をあらゆる角度から取り入れているお二人。一度に食べられる量が少なく、痩せ型で食べても太らない体質が気になっていたYさんは、治療と並行して半年ほど管理栄養士の栄養相談を受けることに。その際にZさんも同席し、足りない栄養を補う間食や、量が少なくても必要な栄養が摂れて体重を増やせる食材などを学び、日々の料理づくりに生かしているそうです。
「もともと食が細いので、食事自体が嫌になってほしくないというのが前提です。大豆製品やチーズなどの乳製品、葉酸が含まれている食材を中心に、Yがしっかりと食べ切れる量にしてあげること。毎回完食できた、ちゃんと栄養が摂れている、と実感できる食事で体重や体調を維持できるようにしてあげたいと思っています」(Zさん)
不妊カウンセラーの有資格者がいる漢方薬局では、卵子を育てる生薬を軸に慢性的な吐き気と不安に感じやすい性格を改善する漢方や、喉の詰まりを解消して食事を通りやすくする漢方など、その時々のYさんの体調や精神面に合わせた漢方を調合してもらっています。
移植前後には不妊鍼灸にも通ったり、二人でお散歩も。なかなか思うような結果が出ずに治療が長期化しているなかであっても「これを取り入れたから次はうまく行くかもしれないな」と前向きに思える時間も増えているようです。
気持ちと時間を共有して毎日を大切に過ごしたい
ようやく移植までたどり着いた4回のうち、陽性反応は出たものの胎囊確認前に化学流産した2回目以外はすべて陰性。5回目の移植の提案は初期胚と凍結胚盤胞の二段階移植で、すでに胚盤胞は確保できていますが、未だ初期胚はできず。移植待ちの状態は、そろそろ半年が過ぎようとしています。
もちろん、結果を伴うことが一番なのかもしれませんが、採卵も移植も「そこまでたどり着けたこと自体がすごいこと」というのが二人の共通の思い。
「その一つひとつがお互いに体調面や栄養面を意識して頑張った証。いろんなことを共有し、お互いの思いやりが伝わるように過ごすことが大事かなと思っています」と愛情たっぷりに語ってくれたZさん。Yさんも「一緒に頑張っていくという意識のもとで、二人の距離や絆が深まったような気がします。治療をしているからこそ、より仲良くなれたし、お互いを深く知ることもできたと思います。そして、Zは普段あまり自分の感情を言ってくれないけど、今日は気持ちをたくさん聞くことができたからインタビューを受けて良かったです!!」
休日はネイルアートに没頭するYさんと、パンづくりを始めたばかりのZさん。何気ない日常と気持ちの共有を大切にしながら「もう少し治療を続けます」と笑顔で語ってくれました。