教えて!俵先生 気になる妊活キーワード Vol.3「プレコンセプションケア 女性編 」

教えて!俵先生
気になる妊活キーワード Vol.3 「プレコンセプションケア 女性編 」

将来妊娠を考えている女性に向けた「プレコンセプションケア」が注目を集めています。健やかな妊娠・出産を迎えるために自分ができることとは?
俵IVF クリニックの俵史子先生と村林奈緒先生にお話を伺いました。

俵IVFクリニック 俵 史子 先生
2007年静岡市に不妊治療専門施設を開業。国立大学法人浜松医科大学に生殖周産期医学講座(寄附講座)を開設し、新たな精子検査法の開発や、妊娠・出産がより安全なものになるための不妊治療の研究も行っている。
俵IVFクリニック 村林 奈緒 先生
浜松医科大学医学部卒業後、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)修了。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加えて、週3回生殖周産期外来も担当。大学などで定期的に講演などを行って、プレコンセプションケアの啓発活動にも積極的に取り組んでいる。

 

―最近、妊活に関する話題の中で「プレコンセプションケア(プレコン)」という言葉をよく耳にしますが、これはどんなケアなのでしょうか。

俵先生●英語なので少しわかりにくいかもしれませんね。“Pre”は「~の前の」、“Conception”は「妊娠」や「受胎」という意味です。妊活中の方はもちろん、今は未婚でも将来妊娠を考えている女性に向けて、自身の健康状態や生活習慣などを見直し、健やかな妊娠・出産、そしてその後の生活も健康に過ごせるようにという目的で心身の管理をしていくことです。

村林先生●近年、出生率は低下し続けていますが、ハイリスク妊娠は逆に増加しています。その背景には、特に若い世代の自身の健康に対する意識が低いということがあるのではないでしょうか。

俵先生●「性や妊娠に関する正しい知識を身につける」ということもプレコンの目的の一つだと思います。年齢が高いことによる妊娠のしづらさを知らず、病院に来て初めて「もっと早く情報を知っていれば、今こんな状況にならなかった」と後悔する方もいらっしゃいます。

村林先生●妊活を始める前から知識をもっておけば、不妊治療をしなくても済むかもしれないし、治療をした場合もスムーズに進められて、より早い妊娠につながると思います。

―「プレコン」の中で特に重要な項目はありますか。

村林先生●私が一番気になっているのは体重教えて! 俵先生今回の管理です。体重過多の人もいますが、若い世代ではやせぎみの方が目立ちますね。

俵先生●極端にやせていると不妊の原因になることがあります。さらに、将来、生まれた子どもの健康にも悪影響が及ぶという報告もあるのですよね。

村林先生●やせの人が妊娠した場合、低体重児が生まれるリスクが高くなってしまいます。小さく生まれた子は栄養が少ない状態に慣れた体になってしまっているので、将来、普通の食生活を送るとパンクして、肥満や高血圧症、脂質異常症など、メタボリックシンドロームになりやすくなってしまいます。

俵先生●普段もですが、妊娠してからの食生活も良くない。浜松市の妊娠中の食生活についての調査報告によると、摂取カロリーがとても低く、食事の内容も偏っている妊婦さんが多いとのこと。自身の健康はもちろん、生まれた子どもの将来へもつながっていくので、先々を見越した健康意識をもっていただきたいですね。

―妊活に向けて食生活や栄養摂取に関するアドバイスはありますか。

村林先生●BMIは18・5以上、25未満を目標に。
食事内容では「これを多く食べると妊娠しやすくなる」というものはありません。やはりたんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン・ミネラル類をバランス良く摂取することが大切です。 肥満の人も糖質オフなど極端なダイエットは避けましょう。

俵先生●葉酸、ビタミンDといった、妊活女性に必要な栄養素も、サプリメントなどを上手に活用して補充していただきたいですね。―ほかにやっておくべきことは?

村林先生●妊活前に風疹と麻疹のワクチンは必ず受けておくようにしてください。それから、子宮がん合併妊娠も増加傾向にありますので、できれば子宮頸がんワクチンも受けておくと安心です。

俵先生●自分の月経の状態を把握しておくことも大切ですね。月経の周期が卵巣機能と関係しているという報告も。年齢が高くなってきて周期がだんだん短くなってきたら卵巣機能が低下している可能性があります。

村林先生●月経プラス、基礎体温をつけて排卵の状態も把握しておくとさらにいいと思います。スマホアプリで簡単に記録できますし、こうした情報は初診時にも役立つと思います。

―病院でプレコンの検査や指導を受けることはできるのでしょうか。

俵先生●最近はプレコンセプションケア外来を設ける産婦人科や不妊専門クリニックも増えてきました。検査項目はブライダルチェックとあまり変わらないと思いますが、プレコンチェックでは食事や生活習慣の指導、日頃の心身の悩み相談などを行うこともあります。将来妊娠を考えているのであれば、独身の方でも受けられます。費用は保険適用外で、検査内容などによりますがだいたい2~4万円程度のところが多いようです。

当院では、「女性外来」という科を新たに設けました。月経の異常や不正出血、がん検診、更年期障害などのご相談のほか、プレコンチェックもできるようにして、生涯にわたって女性の健康をサポートする体制をとっています。

村林先生●そのほか、当クリニックでは「プレコン倶楽部」という非営利団体を立ち上げて、啓発活動も行っています。いろいろな施設にチラシやパンフレットを置かせていただいたり、大学や看護専門学校で講演を行ったりして、プレコンの重要性を多くの人に知っていただけるように努めています。

―将来妊娠を考えている女性たちに伝えたいことはありますか。

俵先生●毎日お仕事などで忙しいと思いますが、日頃から自分の体に興味をもって過ごしていただきたいです。月経などによる体調不良を起こした時は放っておかず、婦人科へ。
私たち医師はどんなことでもご相談にのるので躊躇せずいらしてください。子宮頸がんワクチン接種などをきっかけに、婦人科のかかりつけ医をもつと安心だと思います。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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