※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
PGT-AでA胚がある割合は、平均があっても個人差が非常にあります。47歳を過ぎると、受精卵ができても9割以上は染色体に異常があるというのが一般的な見解です。当院の経験では48歳6ヶ月のときの卵子において、20個の胚盤胞のうち、19個に染色体異常があり、1個のみ正倍数性胚があり、その正倍数性胚を移植して妊娠された方がいらっしゃいます。ただ、その正倍数性胚もいつできるかわかりません。採卵で1個しか採れなくても、それが正倍数性胚で妊娠する可能性がないわけではないといえます。
染色体異常の受精卵ができる原因は、卵子が古くなっているからです。生まれる前の胎児のときにできた卵子は、休眠して長い間卵巣に保存されているため、47歳なら47年以上経過した古くなった細胞です。DNAは壊れても修復する機構がありますが、DNAを束ねている輪ゴムや針金のようなものが傷んでおり、染色体の数の異常が生じます。これは何かで改善できるものではありません。傷み具合が少ない卵子に巡り合ったときに、染色体の数の異常がない受精卵ができると解釈した方がよいでしょう。

ライフスタイルでは妊娠率を変えられません。どれほど体を鍛えようが、47年経った卵子の細胞を、外から修復できるわけではありません。
妊娠率を変えるには、不妊治療施設にて成熟した受精卵を適切に採卵することです。高齢の方では卵子の活性が落ちており、ホルモンの異常も生じやすいため、若い方と同じように採卵すると未熟な卵子しか採れないことがよくあります。その方に応じた高度なレベルの調節卵巣刺激を行うことで、成熟した卵子を採ることが重要です。
どのタイミングでいつ正倍数性胚が得られるかわかりませんが、正倍数性胚を移植することが妊娠率を上げるのに大切です。PGT-Aをしたからといって、妊娠率は移植あたり6割程度にしかなりません。あとの3~4割はカップルお二人の遺伝子の組み合わせによるものです。受精卵は1個ずつ兄弟のように遺伝子が異なり、そのうちよいバランスのものが赤ちゃんまで育ちます。このようなイメージを抱いていただきたいと思います。
PGT-Aをする場合は、胚盤胞まで育てられる高度な培養技術も必要です。受精卵が育たない、もしくは受精卵を胚盤胞まで育てられないというのでは、妊娠までの効率が悪くなってしまいます。PGT-Aでは生検の技術も確かでないといけません。生殖医療の経験が長く、このような高度な技術が備わっている施設での不妊治療をおすすめします。