みさん(30歳)
★治療の流れ
高刺激での保険移植1~4回目→陰性(この間に検査などはしている)
セカオピとサードオピニオン先で検査のみして、いつもの病院で保険移植5回目→陰性
※AHAありの5AA~5BBまで2個移植などしていても着床経験0です
★検査
TORIO検査:ERA1日前ズレ、ラクトバチルス50%→着床の窓に合わせて移植、ラクトバチルスの膣錠とサプリを飲むの併用で対応、ラクトフェリンも念のため服用
◎セカンドオピニオン先で検査
ビタミンD、亜鉛、子宮鏡検査、CD138検査など→陰性
糖の検査、子宮収縮検査→「少しあるぐらい」だそうで薬服用
◎着床障害と不育症検査の血液検査→血流悪めなのでアスペリンとヘパリン注射服用、それ以外は陰性
夫婦の染色体検査→陰性
治療の流れと検査歴は以上です。
今までやっていないことで少しでもやった方が良い検査や治療、漢方やサプリなどはありますか?何か新しいものを取り入れたいと思っていいます。
小川誠司先生に教えていただきました。
藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●TRIO検査の結果に基づき、着床の窓に合わせた移植を行っていますが、その有効性は一般的にどの程度だと考えられますか?
TRIO検査、中でも「着床の窓」のズレを推定するERA検査ですが、最近では有効性を否定する報告も見られます。最初から全ての方にやるべき検査ではありませんが、2回以上着床が上手くいかなかった反復着床不全の方には有効とされており(実施しない方と比べて10~20%妊娠率が上昇したとする報告もあります)、みさんがこれまでERA検査の結果に基づいて移植されてきたことは決して間違いではないと思います。ただもし、みさんが現在の結果に不安を持っておられるのであれば、ERA検査のみ再検する、あるいはERPeakなど別の検査を実施しても良いかもしれません。
●みさんはこれまでにTRIO検査やビタミンD、亜鉛、子宮鏡検査、 CD138検査など多岐に渡る検査を受けられていますが、これらの検査結果を踏まえてほかに不妊治療に有効と考えられる検査はありますか?
受精卵にはご主人の遺伝子が半分入っているため、受精卵を非自己(異物)と見做さないよう、着床には“免疫寛容”と呼ばれる状態が必要です。着床不全患者様の中には、免疫応答が強いために受精卵を攻撃し、着床に至らない方がいらっしゃると言われています。みさんの場合、一通りの着床不全検査をすでに実施されておりますので、あとは免疫検査であるTh1/2比やNK活性などをお調べになるのが良いと思います。

●みさんの夫婦の染色体検査は陰性でしたが、 PGT-Aなどの遺伝的検査を受けることについて先生はどのようにお考えでしょうか?
みさんの年齢と受精卵のグレードから考えますと、受精卵の異常というよりは、着床側の要因を第一に考えます。ただ、現状では原因がはっきりしておらず、受精卵側の要因が本当にないとは限りませんので、PGT-Aは保険適用外のため、保険診療で万が一、結果が出なかった場合に考慮しても良いと思います。
●みさんの現状を踏まえ、先生でしたらどのような治療方針を提案されますか?
まずは上に記載したような、免疫関連の検査を実施されることをお勧めします。また、もしこれまで自然周期、あるいは低刺激周期で移植されたことがないのであれば、ぜひホルモン補充ではなく、自然周期での移植をお勧めします。その際はERA検査の結果は踏まえず、排卵後から計算して、120時間前後で移植されることをお勧めします。一般的にはホルモン調整周期も、自然周期も妊娠率は変わらないとされていますが、ごく稀に自然周期でしか、着床されない方を経験します。
●みさんが新たに取り入れることを検討している漢方やサプリについて、先生が推奨するものや注意すべき点を教えてください。
経過を拝見しますと、卵巣機能、胚質改善に有効なサプリメントはすでに飲んでいらっしゃるように思います。サプリメントの過剰摂取が、逆効果になることもありますので、採血で検査できるものは血中濃度を確認していただき、それ以外は用法通り摂取されることをお勧めします。
また、度重なる移植不成功で、お気持ちも落ち込みがちになっていると思いますが、ご自身の気分や体調も結果を左右します。1〜2ヶ月少し治療から離れたり、十分休養をとったり、気分転換したりなどの工夫をされても良いかもしれません。