▶︎低AMH値で採卵が難しい場合の治療方針
流産したことをきっかけに半年前から不妊治療を始めています。今まで3回の採卵をしましたが、1回目は変性卵のみ。2回目、3回目は空胞でした。年齢的なこと、AMH 値が0.12ng/ml と低いことから、今後、良い卵子が採卵できるか不安です。先進医療も含めて少しでも確率の高い治療をしたいと思っています。仕事のストレスもあるため、仕事を辞めて治療に専念するべきかとも考えています。これからどのような治療を行っていくのがいいでしょうか。

岩見 菜々子 先生
札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。
不妊治療の進め方や、採卵が難しい状況を改善する方法はありますか?
岩見先生●通院中のクリニックでは超音波検査などを経て最適な採卵の時期を決められているかと思います。良い結果が得られなかった場合は、採卵方法を変えてみるのも一つの方法です。たとえば、これまで自然周期だったなら排卵誘発剤を使ってみる。逆に排卵誘発剤を使って採卵してみたけれど、良い卵子が得られなかったなら、自然周期での採卵も選択肢としてあります。AMH値が低い方は、薬をたくさん使って誘発させるより、自然周期に合わせて採卵したほうがうまくいくこともあります。また、AMH値がゼロではないことから、卵子が獲得できる周期はあると思います。きむちさんに合ったタイミングでの採卵ができるように、採血でエストロゲンやFSHの値を見ながら採卵の日を決めていくのも一つの方法だと思います。
流産を予防するにはどうすればいいでしょうか?
岩見先生●42歳という年齢ですと、受精卵の染色体異常が流産の原因であることが多いです。先進医療も含めて、少しでも確率の高い治療をされたいとのことですので、採卵ができて、顕微授精をするのであれば、P I CS I(ピクシー)やI MS I(イムジー)といった、より良い精子を選別して顕微授精を行う先進医療をオプションで選択するのもよいかと思います。DNA損傷の少ない精子で受精できることで、染色体異常の割合が減り、流産を予防できる可能性があります。
転院を考えられる場合は、通院できるエリアにある、42歳以上の方の妊娠率が高い病院を選ぶといいでしょう。40歳以上の卵子は繊細ですから、この年代の治療例が多いクリニックなら、より親身になってくれるでしょうし、受精卵の培養環境や培養士の経験も豊富なのではないかと思われます。
ストレスのある仕事を辞めることも考えられているようです。
岩見先生●仕事を辞めるかどうかは良し悪しです。不妊治療だけに専念してしまうと、治療自体がストレスになりますから、仕事を逃げ道と考えることもできます。きむちさんは、月経周期が安定していてAMH値もゼロではなく、着床や妊娠ができることもご自分の体で証明できています。実績のあるクリニックで治療をすれば、今後、採卵できる確率のほうが高いでしょうから、頑張って治療を続けていただきたいと思います。