【Q&A】卵子提供かPGT-Aか~小川達之 先生【医師監修】

ゆきさん(36歳)

はじめまして。二人目不妊治療中です。

過去採卵3回、移植5回、出産1回、6W流産4回しています。
次のステップとして、PGT-Aするか、卵子提供を受けるか迷っています。
PGT-Aは卵子の質をあげられるわけではなく、検査かと思いますので(違っていたらご指摘ください)、仮にPGT-Aをしても判定Aがもらえるのかなと思っています。
先生のご経験から、この成績でPGT-Aをした時に移植できる胚が出来るまでどれくらいかかりそうでしょうか?
卵子提供を受けるか、PGT-Aをしてみるか、アドバイスをいただけると幸いです。

亀田IVFクリニック幕張の小川達之先生にお伺いしました。

【医師監修】亀田IVFクリニック幕張 小川達之 先生
2009年山梨大学医学部卒業。2016年より山梨大学医学部附属病院産婦人科にて不妊治療にあたる。2024年4月より亀田IVFクリニック幕張に入職。ひとりひとり個別の状況に対応し、患者様の立場に立った医療を提供したいという想いを持って日々、診療に従事。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医。日本生殖医療学会生殖医療専門医・指導医。日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください
流産を4回繰り返しているとのことで、大変辛い思いをされていることと思います。
これまでの流産では絨毛染色体検査を実施されたのでしょうか。夫婦染色体検査はされましたか。また、不育症検査は済んでいるとのことですが、原因と考えられる異常値などはあったのでしょうか。
PGT-Aのメリットは正倍数性(いわゆるA判定)の胚を選んで移植することができること、卵子提供のメリットは自分よりも若い女性の卵子を用いて、正倍数性の胚である可能性が自身の卵子を使用するよりも高まる可能性がある(もちろんその際にPGT-Aまでされていれば正倍数性を選ぶことができますね)ことです。もしこれまでの流産原因がトリソミーなどの染色体異常であれば、PGT-Aや卵子提供は有効である可能性はあるでしょう。しかし、これまでの流産絨毛染色体検査の結果が正倍数性であれば、PGT-Aや卵子提供を受けても生児獲得率が上がるとは考え難いです。その場合は、凝固あるいは免疫因子の不育症診療を受けることが有用である可能性があります。「保険診療の生殖補助医療+妊娠成立後の不育症診療」で対応可能かもしれません。不育症診療を積極的に行っている施設での相談もご検討ください。

PGT-Aは「すべて自費診療」になりますが国内の多くの施設で実施することが可能です。一方で卵子提供は、近くでは台湾など、海外の施設に赴いて実施することになるでしょう。費用はPGT-Aの数倍になること、パートナーの精子は使用できますが、卵子は提供者のものですのでご自身の遺伝情報が含まれないことが最大のデメリットにはなります。

一般的に36歳の経産婦ということであれば、PGT-AでA判定の胚が手に入る可能性や、PGT-Aをしなくても生児獲得できる可能性はあると考えられます。したがって、何にプライオリティを置くか、ご自身の卵子を用いてA判定の胚が手に入るのかどうか、などが卵子提供に踏み切る判断基準になると考えられます。本当に卵子提供を検討されるのでしたら、日本国内で説明会を行っている海外のクリニックも複数ありますので調べてみてください。
応援しています。

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