マメさん(36歳)
PRP療法は受けた方が妊娠の確率があがるのでしょうか?
1人目の時に採卵した受精卵を凍結しているのを戻していますが、PGT-A検査はした方がいいでしょうか?
他におこなった方がいい検査などはありますか?
小川誠司先生に教えていただきました。
藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●マメさんが PRP療法を受けることで妊娠の確率が向上する可能性があると思われますか?
PRP療法は、もともと子宮内膜がなかなか厚くならない患者様に実施して、良好な妊娠成績が報告されてきました。最近ではマメさんのように複数回移植を行なってもなかなか着床がうまくいかない方にも実施されるようになり、有効であったとする報告も出てきています。
ただ、PRP療法を行っても、着床不全の要因があれば、妊娠にはつながりません。お一人目を出産されることにより、免疫をはじめ、ご自身の体質が変化する可能性もありますし、産後、特に帝王切開分娩の場合は子宮内に炎症が起きていることも少なくありません。したがって、マメさんの場合は、子宮鏡検査だけでなく、自己抗体や凝固因子検査、甲状腺ホルモンや慢性子宮内膜炎検査、「着床の窓」を調べるERA検査、子宮内細菌叢を調べるEMMA/ALICE、免疫検査(Th1/2比)などの着床不全検査を、移植の前に一通り実施されることをお勧めします。もし検査の中で異常が見つかれば、治療することにより妊娠される可能性は非常に高まると思いますし、原因が何も見つからないようであればPRP療法が着床を促進し、妊娠率が向上する可能性はあると思います。
●凍結している受精卵に対して PGT-A検査を行うことをお勧めしますか? また、その理由も教えてくだい。
マメさんの場合、凍結胚のPGT-Aを実施することはお勧めしません。
理由は2つあり、1つはPGT-Aを実施するためには、凍結胚を一旦融解→細胞を採取→凍結→移植時に再度融解といったように凍結と融解を繰り返すことになり、これは胚にとって負担となります。もう1つはマメさんのご年齢から考えると、残りの凍結胚の中にも正常胚が存在する可能性は高く、PGT-Aを実施せずに移植しても、確率的に正常胚を移植する可能性が十分にあるためです。むしろマメさんの場合は、上記に記載したように、着床側の要因を精査された方が良いように思います。
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●子宮鏡実施予定とのことですが、ほかに先生が推奨される検査があれば教えてください。
上記に記載した、着床不全検査を一通り実施されることをお勧めします。
●二人目治療中のマメさんに対して、先生でしたらどのような治療方針を提案されますか?
基本的にはお一人目の時と全く同じプロトコール(自然周期か、ホルモン補充周期か、ホルモン補充であれば全く同じ薬剤を使用する、SEET法やヒアルロン酸使用の有無なども含め)で移植されることをお勧めします。
また上記に記載の着床不全検査を実施し、異常があった場合は、しっかりと治療をして改善していることを確認してから移植に進みます。検査を実施しても原因が見つからない、あるいは原因を改善した上で移植しても妊娠が得られない場合に、PRP療法をお勧めします。
先にも述べました通り、PRP療法を行っても着床不全の要因があれば妊娠にはつながりませんし、PRP療法を行いますと保険診療では移植できないというデメリットもありますので、十分にご検討されてから実施されることをお勧めします。