できる限りの検査を実施し、血流と子宮線筋症以外は異常なしとの判断になりましたが、着床はかすりもせず全て陰性でした。体外受精6回目を迎える前に、クリニックからは腹腔鏡手術をした後に残りの卵を移植することを勧められています(手術を拒否する場合はホルモン剤にて半年間生理を停止)。
卵は残り11個(4AAは残り1つ、他4AB以下)。
次のステップとして「腹腔鏡手術を受けるか否か」「転院し、採卵からやり直すか否か」について悩んでおります。
ご意見いただけますと幸いです。
浅田先生に聞いてきました。
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
子宮腺筋症の腹腔鏡手術をすべきかどうかは、非常に難しい質問です。不妊治療を受けている方の半数程度が、多かれ少なかれ子宮内膜症があるといわれています。子宮内膜症の一部で、子宮の中に内膜症の組織があるのが子宮腺筋症です。軽症の方も含めるととても多くの方が子宮腺筋症といえます。
子宮腺筋症が着床の妨げになっている方がどれほどいらっしゃるかはわかりません。子宮腺筋症で手術をしなくても妊娠される方はいらっしゃいます。私の不妊治療30年の経験において、子宮腺筋症が重く、妊娠しても子宮が固くて赤ちゃんが大きくなれずに、通常の子宮の10倍くらいの大きさがある症例では、3人程度腺筋症を削る手術をしてもらったことがあります。ただ手術後に妊娠が順調にいっても、早産で子宮破裂を起こす危険性があります。
多くの場合、手術をしなくても妊娠しているというのが私の認識です。腹腔鏡で手術ができるくらいの腺筋症ならば、あえて手術をしなくてもよいのではないかと思います。開腹手術をしなければならないようなときにしか、私は手術を勧めていません。
4AAや4ABという胚盤胞のグレードは、全く当てになりません。胚盤胞の染色体異常とは必ずしもリンクしていないからです。見た目がよい方が、染色体異常の確率が少しは低いため、野球で例えるならグレードは打順を決めているようなものです。実際に見た目のよい順番で移植するなら、PGT-Aをして染色体異常を調べるのが正しい判断であり、不要な移植はしないで済みます。お悩みでしたら、胚盤胞を作る技術、そして生検する技術に優れ、レベルの高いPGT-Aが受けられる施設への転院をお勧めします。
保険診療で採卵し凍結した受精卵があり、治療が回数制限に達していない場合、基本的には次の採卵へ移れません。ただしPGT-Aを希望されるならば、保険診療で凍結保存している受精卵を保留として、自費診療で採卵・培養した受精卵でPGT-Aができると保険適用の解釈が変わりました。