【Q&A】治療再開前に不育症の検査は必要ですか~村田先生【医師監修】

ナツコさん (40歳)

8月中旬に妊娠9週で不妊クリニックを卒業したものの、その後数日で2度目の流産をしました。紹介先の産科で流産手術を受け、絨毛染色体検査をした結果、正常女児でした。
治療していたクリニックでは「流産は染色体異常によるもので、不育症というものはない」と言われていたので驚きました。手術してもらった病院では、「不育症に力を入れている病院に紹介状を書いて詳しい検査をしてもらうこともできるが、原因が見つからないことも少なくない」と言われ、ひとまず元々のクリニックに戻ることにしました。

2点ご質問です。
(1)今は生理が来るのを待っている状態ですが、流産後の排卵で生理が来る前にタイミングを取って妊娠することは可能でしょうか?先日、流産手術後16日目と18日目に排卵検査薬を試したのですが共に陽性で、検査結果が合っているのか疑問に思いました。基礎体温は低温期のままです。

(2)これから生理が来て治療を再開することになった場合、不育症の検査をした方が良いのでしょうか?年齢的にも少ない可能性を最大限に活かしていきたいと思っております。アドバイスのほどよろしくお願い申し上げます。

ARTクリニックみらいの村田先生にお話を伺いました。

ARTクリニックみらい 院長 村田泰隆 先生
1994年 名古屋大学医学部卒業後、安城更生病院にて産婦人科全般に従事。1998年 名古屋大学付属病院にて、周産期・不妊症を専門に診療および研究。2003年 名古屋大学医学部大学院卒業後、IVF大阪クリニック・なんばクリニックにて4年にわたり体外受精年間1500周期以上の臨床経験を積む。2007年 竹内病院トヨタ不妊センター長、2010年 エンジェルベルクリニック不妊センター長を経て、2016年 ARTクリニックみらい開院。7年間で約5,500例を妊娠出産に導く。個々の背景や将来の家族計画に合わせた治療を信条としている。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

流産後の治療に関する質問にお答えします。

① 流産後の排卵で、生理が来る前に妊娠が可能か?
理論的には、流産後であっても、子宮内環境に問題がなく、排卵があれば妊娠は可能です。
しかし、流産直後には子宮内に妊娠組織の一部や血腫が残っていることがあり、次の妊娠に向けては、担当医師の診察を受けてアドバイスをもらってください。
排卵検査薬が陽性ということは、体内のLH濃度が高いことを意味します。排卵期にはLH濃度が一過性に上昇し(1~3日程度)、それを捉えるのが排卵検査薬です。数日にわたって陽性が続く、また基礎体温が低温のままである場合、排卵が起こっていない可能性もあります。LH濃度が持続的に高い場合(卵巣予備能低下や多嚢胞性卵巣など)、検査薬の精度の問題も考えられます。

② 不育症の検査について
2度の流産、9週以降で児の染色体異数性のない流産を経験していることから、不育症検査の対象としてよいでしょう。流産の原因には、児の染色体異常以外にも、血液凝固異常、子宮形態異常、内分泌異常、子宮内の炎症、免疫バランスの問題などが挙げられます。原因を明確にし、回避できる流産を防ぐことは、時間が重要な不妊治療において有効なステップです。
ただし、検査は多岐にわたり、保険適用外のものや、検査法や治療法がまだ確立されていないものもあります。検査をしても原因が特定できない場合もありますので、どの検査を行い、どの治療を選択するのかは、担当医師とよく相談して判断してください。

③ 今後のアドバイス
年齢による影響は十分にご理解されていますので、ご自身を追い込みすぎず、希望を持って、担当医と相談しながら必要な検査と治療を迅速に進めてください。治療を行う立場からすると、流産してしまったものの、妊娠・着床した事実はプラスに捉えることができます。「絶対に流産しない」妊娠法はありませんが、原因不明の流産はそうそうは続きません。確率の高い方法を、早いタイミングで行うことが重要です。
もし自費診療を視野に入れるのであれば、PGT-Aによる時短戦略も一つの選択肢でしょう。

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