しのさん(32歳)
高橋敬一先生にお伺いしました。
金沢大学医学部卒業。国立病院医療センター(現・国立国際医療研究センター)、虎の門病院を経て米国ワシントン大学に留学。1996年虎の門病院に復帰した後、1999年千葉市に不妊治療専門『高橋ウイメンズクリニック』を開院。2014年ベストドクター認定(ベストドクターズ社)。2022年10月に開院から累計で妊娠2万例を達成する。
2回の流産で、ご不安になっているのですね。
I-CAM・H療法については、私は経験がないので調べてみました。
確かに情報は少ないです。
ICAMはIntercellular Adhesion Molecule(細胞間接着分子)の略で、細胞の炎症や免疫反応に関与するようです。ご主人の血中のICAM因子を子宮内に注入することで、免疫の改善や着床を促進することが目的なのでしょう。臨床上の意義としては、現時点ではまだ研究段階の位置づけです。効果や副作用などもまだ明確ではないようですね。リンパ球混合培養試験(MLC)の意義も、現状、世界的には一般的に認められていない方法です。おそらく、免疫療法にこだわって先進的におこなっているものと推測しますが、実績に関しては担当医に直接質問する必要があります。
他の方法ですが、一般論としては、心拍確認後の流産が2回続くことは珍しいことではありません。最も可能性が高いのは、偶然おきた胎児の染色体異常なのです。流産絨毛の染色体分析は受けていますでしょうか。不育症の検査としては、子宮鏡検査も受けていますか。子宮内癒着は超音波検査や子宮卵管造影検査で分からないこともあります。
お2人の染色体検査は正常でしたでしょうか。
その上で、治療法としては、
1)このまま特別なことをせずに妊娠する、という方針はあり得ます。確率的には、何もしなくても75%程度は、次回の妊娠は継続するのです。
2)不育症の検査が問題ないならば、あとは明確な対策はないのですが、しばしば取られる方法としては、バイアスピリン(バッファリン)の使用や、HMG注射などで排卵誘発をしっかりとおこなって妊娠初期のホルモンの状態を高く維持しておく、などがとられることがあります。
3)先進医療としては、子宮内フローラ(細菌叢)、子宮内の慢性子宮内膜炎(CD138)、子宮内膜擦過法、などもあり得ますが、基本的には妊娠しない方におこなう方法です。
実際には、妊娠初期の流産の主な原因は、偶然おこる胎児の染色体異常なので、子宮に対する治療法はあくまで補助的な位置づけになるのですね。今回のICAMも試してみてもよいとは思いますが、あくまで補助的な意義であることをご理解いただく必要があります。