【Q&A】多嚢胞性卵巣症候群のステップアップについて~浅田先生【医師監修】

めーさん (25歳)
タイミング法5回陰性でした。原因が分からず、今後も妊娠できないのではと思ってしまいます。
今すべきは生活習慣を整えることと、次のステップアップを考えるしかないのでしょうか。
私としてはもう少し頑張りたいですが、主治医に「5回目がだめだったら治療を休もう」と言われました。私の治療は積極的にしなくても良いという判断なのでしょうか?
また、残尿感のような下腹部の違和感、かゆみ、行為中の痛みなどありますが、何の検査を受ければいいのか、何科を受診すべきでしょうか?

浅田先生に聞いてきました

【医師監修】浅田レディースクリニック 浅田義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

AMHが5.27ng/mLと高いので、多嚢胞性卵巣症候群だと思います。ただ、無月経の期間があり、その間は黄体ホルモンが作用せず、黄体ホルモンに対する体の慣れがないのでPMS(月経前症候群)のような症状があり、ホルモン療法をされていたのだと思います。

膣分泌物からブトウ球菌やカンジタなど、通常ではない病原菌が検出されていますので、もしかすると下腹部の違和感やかゆみ等はそれらが原因かもしれません。カンジタ膣炎は、よくある病気で、不妊の原因に直結するわけではないので、安心していただきたいと思います。ただ、腟内に炎症があると性交しにくくなりますので、膣の健康という意味で乳酸菌製剤などを使用することをおすすめしますが、一度、主治医の先生に相談されたほうがよいと思います。

主治医からの「5回目がダメだったら治療を休もう」という提案があったようですが、当院では、患者さんの強い要望が無い限り治療を休むことはありません。
なぜなら、卵は、女性が産まれる前に1度だけ作られ、その後は卵巣に長期間保存されています。多胞性卵巣症候群の方は卵が発育していくその途中の段階で発育が止まるため、卵が未成熟となってしまいます。排卵の半年前から卵が育ち始め、その半年のうちの後半3ヶ月はホルモンに依存して発育しますので、順調に排卵するよう卵巣刺激を続ける必要があるからです。

現在行っている卵巣刺激は、1~2ヶ月後まで卵胞の発育に影響を与えていますので、それを考慮して上手に刺激をしていく必要があり、治療を中断してしまうと元の状態に戻ってしまいます。
多嚢胞性卵巣症候群の方の刺激は非常に難しいですが、不妊治療専門医であればそれができなければいけませんし、上手に刺激をすれば1回の採卵で多くの卵を採ることができるので2~3人目の卵も確保することができ、理想的な体外受精となりますので、早めにステップアップすることをおすすめします。

先にも言いましたが、多嚢胞性卵巣症候群の方はいい加減な卵巣刺激では、成熟卵を採ることはできません。めーさんで言えば、25年間休眠状態であった卵子の遺伝子を再稼働させるための卵巣刺激になりますので、再稼働に必要な遺伝子が十分に働いていない卵を採ると、その後の受精率や胚盤胞到達率、妊娠率は良くなりません。

また先進医療についてですが、先進医療と言えば聞こえがいいですが、現在、不妊治療の先進医療となっているものでタイムラプス以外の先進医療は、しっかりとしたエビデンスがないものばかりです。
そのため、そういったことに貴重なお金と時間を使うより、しっかり成熟卵を採るための卵巣刺激ができ、多嚢胞性卵巣症候群の人でも安全な卵巣刺激ができる施設を探して、転院されることをおすすめします。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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