【Q&A】グレードの違う胚盤胞2個移植はできる?~重富先生【医師監修】

みこさん (40歳)
次回の移植で胚盤胞2個移植します。
5AAと3BBなのですが、発育段階の違う卵を同時に移植してもよいのでしょうか?
それとも3BBを先に融解してもらったほうがよいのでしょうか?

重富先生に聞いてみました。

【医師監修】ASKAレディースクリニック 副院長 重富洋志 先生 2003年、奈良県立医科大学卒業。星ヶ丘厚生年金病院、奈良県立医科大学で産婦人科医の経験を重ね、2017年よりASKAレディースクリニックの副院長として従事。患者様が納得して治療を進めてもらえるような診療がモットー。患者様の生活スタイルに合わせた診療を行い、土日祝だけでなく、夜は20時まで受付時間を設けている。生殖医療専門医、日本産科婦人科学会専門医。趣味はマラソン。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

グレードが異なる胚盤胞を同時に移植することについて、先生の見解を教えてください

グレードが異なる胚盤胞を同時に移植しても、特に問題は生じません。受精卵のグレードは、割球数、均一性、フラグメンテーション(細胞断片)などの形態に基づいて評価されます。グレードは各胚の妊娠確率を示すものであり、染色体異常を判断するものではあり
ません。たとえば、5AAの胚盤胞で妊娠に至らず、3BBの胚盤胞で妊娠が成立することもよくあります。「グレードが異なる」こと自体が同時移植のデメリットにはなりません。

先に3BBの胚盤胞を融解させることのメリット・デメリットについて教えてください。

「先に融解させる」という表現は、先に3BBの胚盤胞を一つ移植する(単胚移植)という意味でしょうか。5AAの胚ではなく、3BBの胚を先に単胚移植することには、特別なメリットはないと考えられます。これまでに9回の移植を行っておられるので、できるだけ妊娠率の高いグレードの良い胚を移植する方が、身体的負担が少なくなると思われます。
3BBと5AAの胚盤胞を同時に移植する場合、グレードの差によって移植日をずらす必要はありません。基本的に、胚盤胞は黄体ホルモンの投与や排卵後の5日目に移植されます。

5AAと3BBの胚盤胞を持つみこさんに対して、先生ならどのような移植計画を提案されますか?

これまで9回移植を行われていることから、身体的・精神的負担を考慮すると、2個の胚盤胞を同時に移植することも一つの選択肢として提案できます。ただし、複数胚移植には多胎妊娠のリスクが伴います。このリスクについて十分ご理解いただいた上で、施行することが重要です。

胚盤胞2個移植の成功率やリスクについて教えてください。

成功率については、胚盤胞のグレードの判定基準がクリニックによって多少異なるため、一概には述べることが難しいです。申し訳ございませんが、具体的な成功率については、担当医にご相談いただけますでしょうか。

1個移植と2個移植の成功率の比較について、現在わかっている範囲でご説明します。胚盤胞を2個移植することで、単に移植数が増えることにより妊娠確率が高まると考えられます。さらに、以下のような生物学的な要因が妊娠率の向上に寄与する可能性が示唆されています。

1. 分泌因子の相乗効果: 胚盤胞は成長過程で様々な成長因子やホルモンを分泌します。2個の胚が同時にこれらの因子を分泌することで相乗効果が生じ、子宮内の環境がより妊娠に適した状態になる可能性があります。

2. 子宮内膜への刺激: 2個の胚盤胞が着床を試みることで、子宮内膜に対する刺激が増え、内膜がより受け入れやすくなるという説もあります。この刺激により、着床が成功しやすくなる可能性があります。

ただし、これらの生物学的な要因については、まだ研究が進行中であり、確定的なものではありません。
リスクについては、先ほども述べたように多胎妊娠があります。多胎妊娠は、母体と胎児の双方にとってリスクが高まります。

母体へのリスクとしては、以下が挙げられます。
– 妊娠高血圧症候群
– 妊娠糖尿病
– 早産
– 帝王切開のリスク増加

胎児へのリスクとしては、以下が挙げられます。
– 早産
– 低出生体重
– 発育遅延
– 先天性異常のリスク増加
これらのリスクを十分に理解した上で、慎重に治療方針を決定することが重要です。

一度に複数の胚盤胞を移植することに対する、先生のクリニックの方針について教えてください。

日本産科婦人科学会は、多胎妊娠を抑制するために単胚移植を推奨しています。また、日本生殖医学会の「多胎妊娠防止のための移植胚数ガイドライン」および日本産科婦人科学会の「生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解」において、35歳以上の女性や2回以上続けて妊娠が成立しなかった女性については、複数胚移植が許容されています。
そのため、当院でも基本的には単胚移植を推奨しておりますが、症例によっては多胎妊娠のリスクを十分にご理解いただいた上で、複数胚移植を検討する方針をとっています。

私たちとしては、1日でも早く妊娠していただきたいという思いと、多胎妊娠を避けたいという思いとの間でジレンマを感じることもあります。そのため、患者様とよく相談しながら、最適な方針を決定していくことが重要だと考えています。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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