良好胚を移植して期待するも陰性。希望はありますか?
不妊原因は不明とのことです。どのような検査を受けるべきでしょうか。
化学流産を流産とするならば、あそうさんは現在までに3回流産していることになるので、習慣流産と考えてもよいでしょう。そこで、私が提案する検査は不育症検査と夫婦の染色体検査、胎児側の流産絨毛染色体(POC)検査です。流産の原因の約8割は胎児側の染色体異常、また、約5%には夫婦いずれかの染色体異常が確認されています。習慣流産が認められた場合の染色体検査はどちらも保険適用になるので費用面での負担は少なくなります。遺伝のことや遺伝子の異常などについて十分な説明を受けたうえで意思決定するためにも、できれば臨床遺伝専門医のもとで検査を受けることをおすすめします。
保険適用の回数は残り3回です。先生ならどのような提案をされますか。
本来ならPGTーAを受けて正常な胚を戻すことを提案しますが、これは自費で受けなければなりません。「できるだけ保険診療内で」と希望されるなら、今残っている5個の凍結胚盤胞のうちグレードのよい4個を2個ずつ、2回移植する方法があります。しかし、保険を2回使うことになりますし、双子の可能性も考えなければなりません。あそうさんは 151cmと小柄であり、お腹の中で2人育てるのは体格的にリスクがありますから、2個戻しについては主治医の先生とよく相談されてください。
今後のアドバイスをお願いします。
我々医師が治療を提案する際にはデータを重視します。たとえば、PGTーAのもと、正常な胚を移植した場合であれば「妊娠率は7割。しかし、3割は妊娠しない」と実証されている数値を伝えます。そのようなデータをもとに患者さん自身に治療や検査を選択していただくのですが、このような場合、生殖心理カウンセラーに相談することも有用で、当院では移植後に心理カウンセリングをすすめています。この時にもっとも必要なことは「あとで後悔しないような決断をする」ということ。何かを選ぶ場面ではその都度、夫婦で向き合い、二人で決めるという実績を積み上げていくことが大切です。
不妊治療は女性主体という側面はありますが、半数は男性に起因することを忘れてはいけません。常に「二人の子どものために」という意識をもって、治療に向き合っていただきたいですね。