【Q&A】精子の正常形態率が低いと胎児に影響する?~寺井先生【医師監修】

ゆちもぐもぐさん(28歳)

精子の奇形率が多い場合、妊娠できても児への障害リスクが高いのでしょうか?

泌尿器と男性不妊のクリニックの寺井先生に聞いてきました

【医師監修】泌尿器と男性不妊のクリニック 寺井一隆 先生 
2002年順天堂大学医学部卒。杉山産婦人科の生殖医療科(新宿)などへの勤務を経て、2022年4月に泌尿器と男性不妊のクリニックを開院し、院長に就任。全国でわずかしかいない泌尿器科の男性不妊専門医として多くの不妊に悩む男性患者さんの気持ちを汲み取った診察を行う。日本生殖医学会生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
まずはじめに、2021年に改訂されたWHOラボマニュアルでは、精子の形を評価する言葉として、精子の「奇形率」という言葉はありません。奇形率という言葉は、生まれてくる子どもの奇形を連想してしまうかもしれませんが、全く異なったものを評価しています。精子の形を評価する方法としては、正常な形をしている精子がどれくらいの割合であるのかということで評価され「正常形態率」と言われます。この正常形態率の基準値は4%となっています。これは、4%以上の精子が正常な形をしていればよいということになります。

検査の方法としては、精子をスライドガラス上で染色して、人の目で見て精子をひとつづつ観察し、正常な形をしたものかどうか評価します。この方法は人の目で見て行うことから、検査を行う人によってバラツキが出てしまうこともあります。ご主人様の精子はこのような方法で評価されたものでしょうか?
正式な方法で評価されたものであったとすると、奇形率が高いということは、正常形態率が4%以下であったということになります。

以上のことを踏まえ回答させていただきます。

●パートナーの精子の正常形態率が低いという状況について、先生はどのような評価をされますか?

正常形態率については、検者や施設間で結果の差が出やすいことが知られています。また、施設によっては簡易的な方法で測定しているところもある様です。検査方法や値がどうであったかにより、評価が異なると考えます。また、正常形態率と不妊治療における妊娠率についての相関は下記のように報告されています。

人工授精のおける妊娠率:正常形態率4%未満は12.4%
             正常形態率4%以上 は14.2%
●正常形態率が低い場合、妊娠が成立した際の胎児への影響はありますか?

精子正常形態率は人工授精における妊娠率、出生率に影響を与えなかったという論文(J Urol. 2019 Oct;202(4):801-805. )や、体外受精において正常形態率が4%以下の場合受精率の低下に関係するが、先天性異常などの胎児への影響はない(Andrologia 2020 Jun;52(5):e13568.)といった報告があることから、精子正常形態率が胎児へ与える影響はないと考えます。

●正常形態率が低い場合、どのような検査を行うか、また治療について教えてください。

精子を作っている精巣に問題がないか、精子を作るために働くホルモンの状態がどうであるかを調べます。
治療方法は上記の検査を行った結果によります。

●改善するための日常生活やサプリメントの使用などアドバイスをお願いします。

活性酸素を減らすような生活習慣や、抗酸化作用のあるサプリメントの服用が良いとされています。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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