【Q&A】体外受精3回とも陰性でした。~林先生【医師監修】

かなさん(29歳)

TORIO検査を受けてから初めての体外受精でしたが、着床しませんでした。TORIO検査前に2回体外受精を行いましたが、その2回とも0で、一度も着床していません。ラクトバチルスの膣錠を入れたり、細菌を殺す薬を飲んだりして挑んだ体外受精だったので、ショックが大きく、さらに陰性の結果がでた日の夜(6/10)に下腹部に強い痛みが一度あり、6/12に生理がきました。早く来過ぎてて、何か問題があるんじゃないかと心配にもなり、また黒い経血がたくさん出てきたので、古い経血が溜まってしまっているのではとも不安になりました。
今通っている病院からは「エコーでは問題は見られない」と言われました。何か考えられるものがあるなら、それを治療してから次の体外受精を行いたいので、この生理のことと、免疫を調べるために血液検査をして結果待ちですが、3回とも着床していない今の状態で、何かアドバイスがあればと思い、相談させてもらいました。よろしくお願いします。

ウィメンズクリニックふじみ野の林先生に聞いてきました。

【医師監修】ウィメンズクリニックふじみ野 林 直樹 先生
1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください
子宮内フローラにおいては、ラクトバシルス菌(とくにラクトバシルスクリスパテュス)が大半を占め、有害な菌がほぼ存在しないことが、胚が着床するのに有利であるということです。除菌のための抗菌薬を使用し、ラクトバシルスの膣錠を使用しているとのことなので、おそらく不適切な子宮内環境であるとの判断がされたのだと思います。必ずではありませんが、適切な環境となったかどうかの再検査を行う場合もあります。主治医の先生とご相談ください。
20代後半ということですので胚盤胞1個移植当たりの着床率は、およそ40~50%と計算されます。ただし子宮内に異常な構造(ポリープや癒着など)が無く、子宮内と交通する卵管水腫が無いという前提です。腹腔鏡下手術の内容がわかりませんが、卵管水腫発生などの後遺症はないのでしょうか。2回移植後の累積着床率は64~75%となり60%を超えると計算されます。参考として2023年のヨーロッパ生殖医学会が発表したgood practice recommendationsによると、60%を超える段階で、反復着床不全をチェックする目的で調査や介入をおこなうことが勧められています。お二人が受けられた検査のタイミングは以上から適切と考えます。ちなみに3回の移植で、累積着床率は78~87%に達します。
ホルモン調節周期での凍結融解胚移植なのでしょうか、黄体ホルモン膣錠ではなく、ルトラールを使用するのは不適切とはいいませんが、十分な黄体ホルモン補充となっているのかが判断できないのが難点です。スタンダードに黄体ホルモン膣錠を使用しての、移植当日の黄体ホルモン値測定をしてみるのもいいかもしれません。黄体ホルモン値が基準値より低い場合には内服薬(デュファストンなど。保険適用では妊娠反応陽性後はルトラールが使用できませんので)の追加(海外では注射製剤を追加するが、わが国では製造中止となっており使用できませんので内服薬の追加で代用せざるをえません)が考慮されます。黄体ホルモン値が低いと着床率が下がり、追加補充すると妊娠率が回復することがほぼエビデンスとして固まりつつあります。最近、黄体ホルモン値ほどエビデンスレベルは高くはありませんが、卵胞ホルモン値も300~500pg/mlの範囲にあると妊娠率が高いと報告が出されました。多嚢胞性卵巣症候群であれば、フェマーラ(場合によりFSH併用)周期での移植も、通院回数やスケジュール調整の点で問題はありますが考慮してもよいと思います。黄体が存在する状況での移植に利があるかもしれません。
血液検査結果待ちとのことですが、内容は、免疫検査(抗リン脂質抗体など?Th1/Th2?ネオセルフ抗体?)のことでしょうか。異常が見られた場合、薬物療法が適用されることになると思います。
月経の色や開始のタイミング、腹痛については、正直よくわかりません。内膜ポリープを否定する意味でも、子宮鏡検査を受けてみてはいかがでしょうか。慢性子宮内膜炎があるのかもしれません。
着床前検査で胚の染色体を調べて、染色体が正常な胚を連続3回移植すると95%の女性に着床が成立し92%の女性に生児が得られるという報告(Pirteaら2021年)もあります。この意味するところは“真の着床不全”というものはあるかもしれないが、その頻度は患者さん方や医師が思うよりずっと低く5%未満であり、着床が成立しないほとんどの原因は、子宮側ではなく実は胚側にあることを意味しています。胚質はいかがだったでしょうか。場合により採卵をやり直す選択もあるかもしれません。希望を失わないで、新たな移植、採卵にかけてみてはいかがでしょうか。

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