さまざまな理由で仕事をしながら不妊治療をしたくても、体外受精にステップアップすると両立は難しくなる? 退職を悩んだ時の考え方について、秀子先生にお話を聞きました。
何もしないうちから辞めるのはもったいない
仕事をしながら体外受精をしている人はたくさんいます。仕事はいつでも簡単に辞められますから、まずはできるところまでやって、「やっぱり両立はしんどい…」と感じた時に辞めても遅くないと思います。先生という職業は待遇面で恵まれています。経済的な理由で退職を迷っているなら、出産や育児後の再就職の厳しさを考えても、何もやっていないうちから辞めるのはもったいないと思います。
仕事を辞めると時間のゆとりはできます。ただ、同じ治療をしていても、時間があれば良いというものでもなく、時間があるからしんどいこともあると思います。特にずっと仕事をしてきた人は、ほかのストレスに直面することもあるでしょう。女性は仕事を理由に家事を分担できたり、食事をコンビニのお弁当で済ませたりと、許されていることがけっこうあります。でも仕事を辞めてしまうと、家事の分担ができなくなったり、食事の手を抜く自分を許せなくなってしまう人もいます。仕事を辞めればすべてがうまくいくかというと、そうでもないんだろうと思います。
仕事の都合に合わせて採卵や移植日の調整も可能
「人工授精にあと3回チャレンジするつもり」とありますが、自分のなかで区切りをつける意味ならそれもいいでしょう。そうでないなら治療回数にこだわる必要はないのかなと思います。ご夫婦ともに問題がないのではなく、何かあるから妊娠しないわけです。原因不明のなかには受精しない、胚盤胞にならない、着床しないといった問題があり、それは体外受精をしてみないとわかりません。
仕事と体外受精との両立には、もちろん職場の協力は必要ですが、お仕事の都合に合わせて、お薬での通院コントロールも可能です。主治医の先生に「仕事の都合に合わせて採卵したい」と相談してみるといいですね。たとえば、自己注射を使った排卵誘発であれば、定期的な卵胞チェック以外は通院回数を減らせます。また、生理をコントロールするお薬で、採卵日を土曜日に設定することもできます。凍結胚移植を行う場合もホルモン補充周期であれば、移植日を調整できるので、仕事との両立は不可能ではないと思います。
早く妊娠して、育休を取ろうと気持ちを切り替えるのも一つ
モンスターペアレントなどの社会問題もあるなかで、クラスの担任をもつのは大変なことだと思います。仕事のストレスにも、アドレナリンが出るようなポジティブなストレスと、精神的ダメージを受けるネガティブなストレスの2種類があります。人との関わりや通勤がつらいと感じたり、「私は主婦が向いている」と思う人は、辞めてもいいのかもしれません。
結局、両立できるかどうかは、仕事に対する情熱や覚悟があるかどうかだと思います。経済的な理由で仕事を続ける人は、出産後に辞めてもいいでしょうし、キャリアアップを考えて仕事を続けたいと思う人は、自分で道を切り拓きながら先に進んでいくしかありません。現状から逃れられないのであれば、仕事も不妊治療も深刻に考えすぎて嫌いにならないことです。そして、「体外受精にステップアップし、早く妊娠して産休・育休を取ろう」というくらいの気持ちで、何でもチャレンジする精神で進んでほしいと思います。そうすれば、「仕事を辞めなくて良かった」と思える時が来るかもしれませんよ。
秀子の格言
チャレンジ精神でいきましょう。
まずはできるところまでやって両立が難しいと感じたら退職も