【Q&A】なかなか着床しない。~滝口先生

ねこさん(38歳)  胚移植3回しましたが全部陰性。2回目を移植する前にTRIO検査をした結果、移植するタイミングは大丈夫だったが、乳酸菌が通常値より少なかった為インバクを使用したけど、2、3回目ともにどちらも陰性。4回目を移植する予定ですが、着床させるために何か行った方がいいことはありますか?

滝口修司先生に聞いてみました。

滝口修司先生 山口大学医学部医学科卒業。山口大学医学部附属病院、済生会山口総合病院、正岡病院などの勤務を経て、2012年より浅田レディースクリニックに勤務。2017年1月、故郷・広島の玄関口である広島駅前に「IVFクリニックひろしま」を開院。
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TRIO検査について教えてください。

TRIO検査とは、「子宮内膜受容能検査」と「子宮内細菌叢検査」を同一検体で同時に実施する検査で、当該検査受託会社の商品名です。いずれの検査も、現在、先進医療Aとして保険収載の可否の審査を受けている段階です。その有用性については賛否両論があり、まだ一定の評価はありませんが、状況により試す価値のある検査と期待されています。

子宮内膜には、受精卵が着床できる時間や時期が限定されている可能性が報告されています。この子宮内膜が受精卵を受け入れることのできる時期を「着床の窓」と呼んでいます。「着床の窓」には個人差があり、形態良好な胚盤胞を複数回胚移植しても妊娠に至らない場合、その原因として「着床の窓」がずれている可能性が考えられます。子宮内膜受容能検査とは、この「着床の窓」がずれていないかを調べる検査です。

従来、子宮内は無菌と考えられていましたが、近年の技術の進歩により、子宮内の極少量の細菌叢を分析することが可能となりました。子宮内細菌叢検査は、これらの細菌叢(常在菌である乳酸桿菌とそれ以外の細菌)のバランスの異常などを知ることにより、慢性子宮内膜炎の存在あるいは発症リスクへの対応が可能となる検査です。

どのようなカップルに適応がありますか?

子宮内膜受容能検査の適応は、反復着床不全です。胚移植を施行しても2回以上反復して妊娠(着床)に至らない症例が適応となります。子宮内細菌叢検査の適応は、慢性子宮内膜炎が疑われる症例です。慢性子宮内膜炎は、反復着床不全あるいは不育症との関連が注目されています。

子宮内細菌叢を整える腟錠型サプリメントを使用しても、子宮内の細菌バランスが変わらないことはあるのでしょうか?

種々のサプリメント(腟錠、内服錠)が存在しますが、その効果に一定の評価はありません。しかし、ねこさんの場合、2回目と3回目の胚移植で妊娠に至らなかったからと言って、子宮内の細菌叢のバランスが改善しなかったとは言えません。子宮側よりはむしろ、移植胚が正常だったか否かの方が重要ではないでしょうか。

着床のためにできることがあれば教えてください。

もし未検であれば、子宮鏡検査や子宮卵管造影検査により、子宮奇形や卵管水腫の有無などを精査すべきと思います。また、子宮内膜症などの合併症の有無により、併用すべき治療法も存在します。

ただし、忘れてはならない大切な事があります。形態良好胚盤胞による胚移植反復不成功の場合、つい、子宮内膜に問題があるのではないか、あるいは不育症ではないか、と思い込みがちですが、今一度、移植胚は本当に正常か、ということも考えるべきだと思います。見た目が良好な胚盤胞だとしても、染色体数的異常を生じている可能性は否定できません。そして、この胚染色体異数性は女性年齢の上昇とともに増加することも知られており、胚移植反復不成功の一因となります。しかし、移植胚の染色体異数性の有無の検査(PGT-A)を勧めている訳ではありません。PGT-Aは流産率を低下させる効果は期待できても、妊娠数自体を増加させるとは言えないからです。やはり、卵巣刺激・採卵・授精操作・胚培養を通じて的確な医療を行い、良好な受精卵を作る事こそが重要です。さらには、自分の受精卵を信じて、粘り強く胚移植を続けることも大切です。ぜひとも頑張ってほしいと思います。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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