未成熟の卵子が多く、胚盤胞到達率がかなり低めです。
胚盤胞到達率が低い原因として、どのようなことが考えられますか。
伊藤先生● 毎回未成熟卵が多いと気にされていますが、成熟卵も7~9個程度採れています。年齢もまだ20代で卵子の質は良いと思うので、女性側に原因があるとは考えにくいですね。そうなると、やはり精子側に問題があってなかなか良い受精卵ができないのではないでしょうか。
現在までの治療以外で、何か試してみてもよいと思われる方法は?
伊藤先生●現在、顕微授精を行っているそうですが、細かく見て精子を選別されているのでしょうか。まだ試されていないようなら、高倍率の顕微鏡を用いたIMSI(イムジー)で顕微授精をすることをおすすめします。通常の顕微鏡は200倍程度ですが、IMSIは1000倍ほどの倍率なので、小さな損傷や欠損がないかなど詳細な情報を得たうえで良好な精子を選ぶことができます。
また、自費診療になりますが「ザイモート」という精子の選別法もあります。これは遠心分離を行わずに良好な運動精子を回収できるので、精子へのダメージを抑えることができます。
採卵や移植に関しては、これまでの方法を変えたほうがいいのでしょうか。
伊藤先生●MONOさんはこれまで3つのクリニックでさまざまな治療や検査をされてきたようですね。そのなかで良い胚盤胞ができているのはアンタゴニスト法で採卵した時です。
また、移植に関しては1軒目のクリニックで新鮮胚移植した時のみhCGの値が8mIU/mlになり、あとはまったく反応がなかったとのこと。
それらの結果を踏まえれば、MONOさんにはアンタゴニスト法で採卵し、新鮮胚で戻すという方法が一番合っているのではないかと考えられます。
二段階胚移植も考えているようです。
伊藤先生●2つの胚を移植するという意味では単一で戻すよりも確かに着床率は上がると思いますが、本当に妊娠率が上がるかどうかははっきりしたエビデンスがないので何ともいえません。
当院だったらそれよりも「カルシウムイオノフォア」をご提案すると思います。卵子の活性化処理をして胚盤胞までもっていきます。これは保険診療でできるので、もしこれまでされていないようなら試してみる価値はあると思います。
また、胚盤胞に執着せず、初期胚メインで戻していくという選択も。もしかしたら、MONOさんにはそのやり方のほうが合っているかもしれません。