【Q&A】PGT-A以外にできることはありますか?~蔵本先生

蔵本先生に質問してみました。

蔵本ウイメンズクリニック 蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990年オーストラリア・PIVET メディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

まめさん(36歳)

現在36歳、6月で37歳になります。
2019年12月から不妊治療クリニックの通院を開始し、約2年半、休むことなく治療を続けています。
夫は精子数が極端に少なく、運動率も悪いため、はじめから顕微授精一択で治療を始めました。
1回目の採卵で3個の凍結胚盤胞を獲得し、最初の移植で妊娠したものの、5週目で流産、続けて残りの2個も移植しましたが、ともに陰性でした。
その後、クリニックの都合で主治医が代わり、2回目の採卵を試みたところ、なんと5個の凍結胚盤胞ができました。
グレードも前回より良いものが多く、期待も大きかったのですが、3個続けて陰性に終わってしまいました。
あと2個を残している状況ですが、一刻も早く妊娠したいので、主治医と相談し、PGT-Aに進むことにしました。
今月、3回目の採卵を終え、2個の凍結胚盤胞を検査に出したところです。
このクリニックでは検査ができないため、県外の検査機関に送るとのことで、結果がわかるのは来月末だそうです。
この検査にかけるしかないと思いつつも、たった2個しか胚盤胞まで育たなかったことにショックが大きく、どちらもダメだったらどうしようという不安に押しつぶされそうになっています。
これまでに6個もの卵を移植しても結果に結びついていないのに、たった2個で何とかなるとはなかなか思えません…。
本当に卵だけの問題なのか、もっと他に原因があるのではないかとも思っています。
しかし、主治医はあくまでも卵の検査を優先するという方針です。
ERA検査も少しずつ普及してきてはいるがまだまだエビデンスが少ないし、何より子宮を傷つけることには反対だそうです。
私たち夫婦は、主治医を信じたいと思っていますし、これからもついていくつもりです。
しかし、ここまで陰性が続くと、このまま、今までと同じように移植を繰り返すだけでいいのだろうかと、どうしても考えてしまうのです。
そこで、何か他にできることがあれば教えてください。どんな些細なことでも構いません。
主治医に相談できるような検査などはないでしょうか? 他の医療機関でできることが何かあるでしょうか?
PGT-Aの結果を待って、次に移植できるのは早くても7月です。この待機期間を利用してできることはないでしょうか?
もう、卵を無駄にしたくありません。早く我が子をこの手に抱きたい、その一心です。
どうか、アドバイスをよろしくお願い致します。
反復着床不全だと思います。原因として、

1. 卵子や胚の問題

これが原因の半数以上を占めていると思います。卵質、胚質不良の場合は 2 ヶ月程度治療をお休みし、ストレスを少なくして、次は卵巣刺激法を変更します。複数卵子を採取するためにロング法、アンタゴニスト法、PPOS 法等のいずれかの方法を取ります。それでも卵質が良くなければ、卵巣への負荷を減らす意味でやや低刺激法を取ることもあります。
培養液も変更を考慮します。また、タイムラプスインキュベーターを使用することで、定期的に培養器を開けることなく培養器内のカメラで胚発生を撮影でき、胚にかかる負荷を軽減することができます。さらに可能であれば PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を行い、染色体数の異常のない胚を選んで胚移植します。顕微授精がこれまで通常法なら、ピエゾを用いて卵子への負担を少なくする PIEZO-ICSI を行っても良いでしょう。

2. 子宮環境

子宮底近くに着床の妨げとなる内膜ポリープがあると着床率が下がるので、子宮鏡検査を行い、ポリープがあれば除去します。また、子宮内膜にも細菌は存在し、酸性の強い乳酸を作り着床の妨げとなる腸内菌などが子宮内に入ってこないようにするラクトバチルス菌が90%以上子宮内膜にあれば子宮内細菌叢は良好です。
これは EMMA/ALICE(子宮内細菌叢検査)で分かります。黄体期(高温相)で内膜が 7mm 以上になったら、特殊なカテーテルで内膜を吸引して採取します。異常があれば治療することで着床環境、妊娠率は改善します。次に、胚盤胞移植は黄体ホルモン膣剤を投与開始して 120 時間(5 日後)頃が最も良いとされ、この時期に着床に関連した遺伝子が多く内膜に出現すると言われています。これを「着床の窓」と呼びます。着床不全の 30%近くにこの「着床の窓」が出現する時期がずれていると言われており、この時期を見る検査が ERA(子宮内膜着床能検査)です。EMMA/ALICE と ERA は併せて EndomeTRIO と呼ばれ、PGT-A で正常染色体数の胚を戻す前に行います。結果は 3 週間で出ます。着床の窓がずれている方は、ずれた時期に合わせて胚盤胞を子宮内に胚移植(個別化 ET;pET)します。

3. 母体の全身状態の異常

甲状腺刺激ホルモン TSH が 2.5 以上が 2 回連続してあり、甲状腺ホルモンのフリーT4 が正常の場合、潜在性甲状腺機能低下症と言い、流産しやすくなるため、甲状腺ホルモン(チラーヂン S)を服用して正常化させます。細胞性免疫である Th1 が高いとリンパ球が胚を攻撃し、着床不全や流産することがあるため、これまでは Th1 と液性免疫である Th2 を測定し、Th1/Th2 が高かったり、Th1 が高値の場合は、妊娠中も服用可能な免疫抑制剤であるタクロリムスを投与していました。2022 年 4 月より ART が保険適用となり、現在 Th1、Th2 は保険適用外なので測定していません。また、インスリン抵抗性検査(空腹時血糖値:FBS、インスリン値:IRI)で FBS×IRI÷405 が 2.0 以上となればインスリン抵抗性があり、卵巣の反応が悪くなったりすることもあります。その場合、インスリン抵抗性改善薬のメトホルミンを処方することもあります。多嚢胞性卵巣症候群でインスリン抵抗性があれば、保険でメトグルコ(メトホルミン塩酸塩)が処方できるのではないかと思います。
以上、着床不全の原因は胚のみという単純なものではありません。
36 歳で AMH が 3 なら十分な数の卵子が採取できると思いますので、まだ諦める必要はないと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。