混合診療の疑問やP G T – Aの謎にも回答!

子どもをもちたい方が安心して治療を受けられる社会にするための第一歩です

不妊治療が保険適用になって喜んだ方もいれば、モヤモヤした方もいるようです。そこで適用になった経緯や、自費診療との違いなどを厚生労働省の原澤朋史さんに伺ってみました。

厚生労働省保険局医療課 原澤朋史さん 医師・医学博士(救急科専門医)。2009年、群馬大学医学部医学科卒業。同年、東京厚生年金病院(現 JCHO東京新宿メディカルセンター)初期臨床研修医に。2011年、前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科勤務。2016年、厚生労働省入省。医政局地域医療計画課、健康局結核感染症課エイズ対策推進室を経て、2019年4月より現職。
保険適用はどうやって決まったの?
制度がどうやって作られたか、保険診療項目はどのように決まったかなどについてお聞きします。

万人に安全で有効な診療を保険適用の項目に

保険適用の項目を決める際、どんな準備をされましたか。

原澤さん●不妊治療の保険適用は、子どもをもちたい方が、有効で安全な治療を受けられるようにするために始められました。

保険適用に至るまでは令和2年9月に出された菅内閣の閣議決定や、令和2年12月の全世代型社会保障改革の方針の中に記載されている「工程表」に沿って準備をしてきました。

また、議論にあたっては、厚生労働省の子ども家庭局で実施した不妊治療の実態調査の結果や、日本生殖医学会により作成された「生殖医療ガイドライン」の内容などを参考にしました。

議論された期間はどのくらいでしょうか。

原澤さん●まずは令和2年10月に医療保険部会(医師、患者などいろいろな立場の方で構成)で「不妊治療を保険適用の対象とすることについてどう考えるか」という議論が行われました。そこで「前向きに検討すべき」といった意見があったことを踏まえ、具体的な適用の範囲等について、中央社会保険医療協議会で令和3年1月から議論を開始しました。トータルで1年半、議論をしていました。

保険適用になった診療と、適用外の診療があります。それらを一緒に受ける「混合診療」が禁止なのはなぜですか。

原澤さん●保険適用となる診療は、有効性や安全性が確認されていることが必要。一方で有効性や安全性がよくわからないものは特殊療法といわれ、保険適用外になっています。いわゆる混合診療とは、保険適用の診療項目と特殊療法を一緒に行うこと。組み合わせて診療することで保険適用となっている診療項目のクオリティが一定に保てない可能性があることなどから、すべて自費での診療という扱いになります。

PGT – Aが先進医療と認められなかったのはどうしてでしょうか?

原澤さん●先進医療とは、その診療自体は保険適用外ですが、保険適用の診療と組み合わせて実施することができ、先進医療にあたる診療のみが自費に、それ以外は保険診療になるものです。今般の保険適用についての検討が行われた際、まだPGT – Aの取り扱いについて、関連学会において検討がなされている状況でした。本年1月に、日本産科婦人科学会が、PGT – Aについては、まず先進医療として実施することをめざすとの見解を示されており、現在、先進医療会議において審議が進められています。したがって、今後、先進医療に認定される可能性があります。

今後、保険適用の項目や内容が変わっていくことはあるのでしょうか。

原澤さん●もちろんあります。改定は2年に1回で、さまざまな学会から「この治療を保険適用にしたい」というご提案を毎回1000件ほどいただいております。それを1件ずつ審議し、適用可否を決定します。不妊治療の保険適用に関しても同様で、今は特殊療法でも今後、安全性や有効性が認められれば議論を経て保険適用になることもあります。

また、先ほど話に上がった先進医療については、2年に1回の改定とは関係なく、随時審議しています。

今日はありがとうございました。最後に不妊治療中の方へメッセージをお願いします。

原澤さん●今は保険適用外でも、今後定期的な見直しの中で保険適用になるものもあると思います。子どもをもちたい方が有効で安全な治療を受けられる社会にするため、患者さんや医師の方などから「現場の声」を聴いて、次の施策を考えたいと思っています。これからもご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。