林先生に聞いてきました。
ウィメンズクリニックふじみ野 林 直樹 先生 1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
はるさん(35歳)
先日AIHを行い、その三日後にエコーで排卵チェック。へしゃげた卵胞が見えて、問題なく排卵していることを教えていただきました。
病院にいるときは気にならなかったのですが、そういえば排卵後に卵胞が見えたのは今回が初めてだったことに気づきました。
へしゃげた卵胞が見えたのは排卵直後だったからでしょうか?
また、処理後精子の寿命は3日程度ありますでしょうか?
AIHのタイミングが数日早かったのでは、と思い心配になりました。
排卵直後であっても、 排卵して数日経ていても卵胞がへしゃげた形にみえることがあります(容積50%以上縮小で排卵と診断)し、また逆に黄体内部に出血して大きく腫れることもあり、 後者は出血性黄体といいます。
機能的にはどちらも問題はありません。
出血性黄体の場合、超音波検査機器の解像度が高くないと内部がクリアにみえてしまうため未排卵や、黄体化未破裂卵胞(LUFS) と間違って診断されてしまうことがあります。
高解像度の超音波検査機器あるいはカラー超音波で周囲の血流を観 察することで排卵の診断の精度はより高くなります。
処理後精子の寿命は、人工授精が適用されるケースであれば、その後に子宮内の運動精子の観察をしてみると少なくとも3日程度 あると思います。
人工授精をおこなっても到底受精妊娠不可能な不良な精子性状であ れば当然もっと寿命は短いと思います。
人工授精のタイミングは最終トリガー(HCG注射など)から0~ 36時間でおこなえばよいということになっています( 米国生殖医学会のガイドライン)。
より排卵のタイミングにあわせるために36時間後に設定すると妊娠率が高いという報告も散見されますが、トリガー時にすでにLHサージが出現してしまっているとこの目論 見ははずれてかえって不都合となる場合もあるので注意が必要です。
きちんと卵胞計測による卵胞成熟度の判断( 子宮内膜の厚みと整合性があるか)や予測、LHサージの出現の有無がチェックできていれば、人工授精時に排卵前か排卵後であるかで妊娠率は変わりません。
従って排卵のチェックを毎回する必要は必ずしもないと考えます。
前述したLUFSは卵胞が未成熟であるのに( あるいは前周期からの遺残卵胞を発育卵胞と誤って判断したなど)トリガーを施行してしまったなどが無ければ、精度が高い超音波検査機器を用いると実はその頻度は極めて稀なこ とと考えます。