死産後も細菌性腟症の再発を繰り返し。
今後の検査や治療は?

久保みずきレディースクリニック 石原 尚徳 先生 高知大学医学部卒業後、神戸大学医学部大学院修了。医学博士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所勤務。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/婦人科、産科を担当する。
葉っぱさん(37歳)21 週で子宮頸管炎から陣痛→破水して死産しました。その後、細菌性腟症となり腟剤で治療。子宮鏡検査で慢性子宮内膜炎と診断され、抗生物質で治療。おりもの検査で細菌性腟症が再発し、抗生物質を飲んで少し改善した後、タイミング法をしました。その頃から腟がかゆくなり、難治性細菌性腟症が再発。先生に「次も死産や流産の可能性があるが、これ以上抗菌薬を使わず、タイミング法で妊活を」と言われています。前回の妊娠も8 カ月かかり妊娠しにくい体なのかもと思います。

細菌性腟症とはどんな疾患ですか?

石原先生●体内には多種多様な細菌が共生し、各場所に正常な細菌が分布するフローラ(細菌叢)があります。その一つが腸内フローラですが、腟や子宮にもフローラは存在します。細菌性腟症は腟内の正常な細菌である乳酸菌が減少して病原性の細菌が増え、おりものの増加やかゆみを引き起こす疾患です。通常は腟内のおりものを採取し、顕微鏡で細菌の形態を調べて抗菌薬で治療します。葉っぱさんは抗菌薬での完治が難しいので、担当の先生が難治性という表現をされているのでしょう。

慢性子宮内膜炎と関係していますか。

石原先生●可能性はありますが、それぞれにフローラが存在するため、腟と子宮は別々に検査する必要があります。とくに子宮は妊娠や流産と密接に関係しています。子宮内フローラの状態や慢性子宮内膜炎がないかどうか、次のような検査をされるといいと思います。
 「子宮内フローラ検査」や「EMMA」は着床にかかわる子宮内膜の乳酸菌の状態を調べる遺伝子検査です。検査の結果、乳酸菌が不足していれば、乳酸菌製剤やラクトフェリンというサプリメントで補います。
 「ALICE」は妊娠や流産に影響する慢性子宮内膜炎を調べる遺伝子検査です。子宮内に炎症を起こす病原菌を見つけだし、各病原菌に適切な抗菌薬と、乳酸菌製剤やラクトフェリンのサプリメントを組み合わせて治療します。また、「慢性子宮内膜炎検査(CD138陽性細胞の検出)」も有効です。子宮内膜の組織を採取して形質細胞であるC D 138陽性細胞が検出されれば、抗菌薬と乳酸菌製剤などで治療します。

今後のアドバイスをお願いします。

石原先生●腟のかゆみについては、腟内の病原菌を調べ、適切な腟の洗浄と外用薬で治療を行うことができます。それと同時に、妊娠するためには子宮内の環境を整える必要があります。先にお伝えした子宮内膜の状態を調べる検査や治療を優先されるといいでしょう。
 葉っぱさんは妊娠できていますし、遺伝子検査は費用も高額です。はじめに慢性子宮内膜炎検査を行い、その結果によって2週間程度の集中治療を行ってから、タイミング法でされてもいいかもしれません。ただ、37歳という年齢を考えると、数カ月間タイミングをとっても妊娠されないようであれば、不妊検査を受けて必要に応じて治療をされていくのがいいと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。