1度目の妊娠は初期流産、不妊治療を再開して授かった2人目も17週で後期流産してしまった天使ベアさん。今後の妊娠に向けて、不育症検査やPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を受けた方が良いのかどうか、ARTクリニックみらいの村田泰隆先生にお話を伺いました。
天使ベアさん(33歳)2014年に妊娠初期で流産し、掻爬手術を受けました。その後、不妊治療を再開して4回の採卵、7回目の移植にて昨年ようやく妊娠。今年安定期に入ってホッとしたのも束の間、17週で破水し流産、死産となってしまいました。毎回子宮内膜が厚くなりにくいため、PRP療法を2回受けています。昨年採卵して顕微受精した受精卵4AA、4BAを現在凍結中で、いつかお迎えしようと思っていますが、また同じように流産や死産になってしまったら…と不安で、不育症検査やPGT-A検査を受けるべきか悩んでいます。不妊治療再開に向け、他にも受けた方が良い検査などありますでしょうか?
2回目の流産が後期流産ということですが、不育症検査は必要でしょうか?
週数が進んでからの流産で、とても悲しい思いをされたことと思います。妊娠17週は一般的には安定期であり、流産は稀な出来事となりますので、考えられる原因について、何らかの情報があるといいですね。破水から始まったとすると、絨毛膜羊膜炎の可能性があります。また、赤ちゃんの発育がゆっくりであったり、胎盤や臍帯の形成が悪かったり、赤ちゃん自身のご病気が疑われる、何らかの奇形があった、などのことはなかったでしょうか。胎盤や臍帯については、感染や血栓の傾向がないかなど、詳しく調べられている可能性があります。担当された医師からの情報をもとに、どんな検査をしたらよいか、対策を考えていかれるとよいと思います。
後期流産には何らかの原因が隠れている可能性が高いということですね。
そうですね。突然の破水からはじまった場合、まずは、細菌感染を引き金とした絨毛膜羊膜炎の可能性が考えられるかと。
細菌感染については、どのように気をつければ良いのでしょうか。
細菌性膣症といって、自覚症状が無くても、膣内細菌のバランスが崩れている場合があります。流早産のリスクが高まるといわれていますので、妊娠経過中、膣分泌物の状態には注意を払い、洗浄したり、乳酸菌を増やす対策をとるなどし、膣内環境のバランスを保つことも予防につながると思います。また妊娠前から、膣内環境や子宮内膜炎の有無にも注意を払い、良い状態で胚移植に臨むとよいでしょう。医師と相談し、既往を元に慎重に診てもらうことが大切だと思います。
PGT-A検査については受けた方が良いでしょうか?
考えてもよいと思いますよ。PGT-Aを行っても、今回経験したような破水・流産を防ぐことはできませんが、染色体異数性による流産は回避することができます。また結果につながらない胚移植も避けることができ、妊娠までの時間を短縮することができます。妊娠治療は時間との闘いあり、時間の影響は無視できません。一方、デメリットがないわけではありません。凍結してある胚を融解し、細胞の一部を切り取って、再び凍結することになりますので、胚にストレスをかけます。高い技量が必要であり、施設の経験値も求められます。高額な費用もかかります。メリット・デメリットの兼ね合いを、担当の先生とよく相談するとよいでしょう。
流産が続く場合、他にも受けた方が良い検査はありますか?
すでに確認済みと思いますが、甲状腺や耐糖能、ビタミンやミネラル不足には注意が必要です。また子宮の大きさや形態、頸管の状態など、早産に繋がりやすい要素がないか、気になります。また最近では、母体が赤ちゃんを拒絶してしまう免疫的影響が唱えられ、治療が試みられています。免疫バランスの検査をしてもよいかもしれません。天使ベアさんは子宮内膜が薄いということですが、PRP療法も取り入れて着床に成功、途中まででしたが妊娠はしました。つらい経験でしたが、治療をする側としては、今後の挑戦に大いに希望を持つ情報です。しかし時間が経つと不利になります。不安はあるでしょうが果敢に早い段階でチャレンジすることをお勧めします。必ずや赤ちゃんに出会えると思います。