田村秀子先生の心の玉手箱Vol.39
妊活のボーダーラインともいわれる35 歳を目前に、そろそろ子どもが欲しいと思っても、ご主人とうまくコミュニケーションがとれずイライラが募ります。そんなお悩みについて、秀子先生にアドバイスをいただきました。
卵子の老化が気になる年齢でもまだ焦らなくて大丈夫?
このコロナ禍では、妊娠中の生活が制限されることはあります。とはいえ、あえて妊娠を避ける必要はないと思いますよ。私が患者さんに「いま妊娠してもいいですか?」というご相談を受けた時は、「大丈夫ですよ。でもいまは旅行や飲み会は控えて、一般の人よりもさらに3密を避けましょうね」とお話ししています。
ご主人が「コロナ禍だから子どもは待ったほうがいい」とおっしゃるのは、先ほどのお話とは違って、本当は「焦らないでほしい」ということを伝えたいのではないでしょうか。
年齢的に焦るお気持ちはわかります。でも「もう34歳」を「まだ34歳」に変えてみてはどうでしょう。たしかに35歳頃から卵子の質は低下していきますが、急激に変化するわけではないのです。街中で34歳と36歳の女性の見た目の区別がつかないように、卵子も同じなんですね。もちろん卵巣年齢は延びませんから、早く妊娠されることに越したことはありません。だからといって「1日も早く」という問題でもないと思います。
36〜37歳でお一人目を授かって、二人目は40歳でという方もたくさんいらっしゃいます。多くの患者さんに接していると、焦る感情は卵巣年齢を上げてしまうように感じます
一人で空まわりせず、心を落ち着かせましょう
焦ることによって、34歳の卵子が38歳になっちゃいそうです。「忘れた頃に妊娠する」とよくいわれますが、これは真理です。焦りがなくなり、心にゆとりができるから妊娠するんですね。それに、ご主人が「妊活の話題を一度もしない」というのも、すごくよくわかる気がします。だって奥様にこの話題を振ったら、機関銃のようにまくしたてられ、叱られ、さんざん嫌味を言われ…と、何が起きるかわからないじゃないですか(笑)。
おそらくご主人は、この2年間に焦りを感じている奥様の精神的な変化を感じていて、以前のゆとりのある奥様に戻ってほしいと思われているのではないでしょうか。だから「一人でいいの?」と言われたら、妊活のことはわかっていても、売り言葉に買い言葉で「一人じゃダメなの?」と言い返したくなるのかも。または、ご主人なりの価値観があって、本当にお子さんは一人でいいと思っていらっしゃるのかもしれません。兄弟姉妹には兄弟姉妹の良さ、一人っ子には一人っ子の良さがありますから。
ご主人が動いてくれないからといって一人で空まわりせずに、気持ちにゆとりをもちましょう。自分よりも恵まれた人にだけ目を向けていると、イライラは募るばかりです。最近のメディアでは40歳手前で一人目を授かる女優さんも見かけます。一歩引いてまわりを見わたすと、いろんな幸せのかたちがあることに気づくはずです。
まずは病院の先生に相談を治療が必要ならご主人を説得
まだ治療をされていないのでしたら、病院で「私は早く妊娠したほうがいいですか?」と相談されてみてはいかがでしょうか。ほとんどの先生は「そんなことはないですよ」と言ってくれると思います。また、この2年間に自然に授かれていないのだとしたら、何か原因があるかもしれないという見立てもあるかもしれません。検査を受けられて、妊娠しにくい重度の子宮内膜症や精子の問題が見つかれば、早い治療が必要になりますし、ご主人を説得する理由になります。でも、いまの焦りの根拠は34歳という年齢だけです。ご主人を納得させるだけの大きな理由ではないんですね。
検査をされて問題がなくても、ご主人がおっしゃるとおり焦らないことですよ。医学的には、38歳でお一人目を産んでもいいんです。34歳と38歳では何が違うのかといえば、38歳になると公園でコケたお子さんをダッシュで助けにいけないことでしょうか(笑)。どちらにしてもまずは病院に行ってみましょう。先生に「焦る必要はないですよ」と一言もらうだけで、気持ちがラクになるかもしれません。
秀子の格言
「もう34 歳ではなく、まだ34 歳。焦りという感情は、卵巣年齢を引き上げてしまうかも」