周期数、妊娠率、出産率…… 数字マジックに惑わされない!
ドクターアドバイス
施設の種類によって異なる メリットとデメリットを知る
初めての不妊治療であれば、ほとんどの人が一般の産婦人科・婦人科を受診します。自宅から近く、行きやすいというのが一番の理由でしょう。一般的な不妊治療で結果が出なければ、不妊治療専門クリニックへの紹介状を書いてもらいます。当院にも地元の産婦人科医から紹介状をもって来られる患者さんは多いですね。
大学病院や総合病院は複雑な検査や診断が必要な症例に強く、出産まで同施設内に任せられるという安心感もあります。ただし、基本的に担当医制ではないので診察のたびに医師が替わります。また、原則日曜・祭日休診で、夜間診療はありません。施設ごとにガイドラインがあるため、患者さんの年齢や卵子・精子の状態など個々に応じた最適な治療スケジュールを立てづらいという点もあります。
専門クリニックのメリットは最初から最後まで一人の医師が患者さんを診ることができ、夜間診察を行う施設が多いため仕事帰りに受診できるなど時間的な融通がきくこと。また、新しい技術や治療法の導入に積極的で、不妊症に特化した治療を受けることができます。しかし、入院設備がない施設も多く、その場合は麻酔や入院を伴う手術を受けることができません。特に、不妊症の検査として重要な腹腔鏡検査を受けることができないというのはデメリットになり得ますから、病院選びの一つの参考になるでしょう。
施設ごとに公開されている データを正しく読み解く
見るべきは治療周期数(採卵数)で、年間1000件以上を目安とします。採卵1000回ということは、患者数にして250人。平日のみで計算しても来院患者数は1日5人ですから、そう多くはありませんが、年間300件以下の施設が8割というのが現状ですから、症例数の多さを目安と考えてもよいでしょう。しかし、日本は治療周期数世界一でも出産率は世界ワーストということも知っておかなければならない事実です。周期数が多い理由は、低刺激が主流で毎月採卵する患者さんが多いこと。低刺激が多い最大の理由はARTの女性の平均年齢が39 歳と高齢であるからです。可能性を考えれば高刺激のほうがよいというのは明白ですが、日本ではこのようなギャップがあることはあまり知られていません。
治療の最終的な目的は妊娠ではなく出産、すなわち自分の胸に赤ちゃんを抱くことですから、出産率を明らかにしているかどうかも選ぶ目安になります。ここで注意すべきは、出産率を出す際の分母を何にしているか。なぜなら、周期数を分母にすると1000周期で妊娠率 10 %だけど、患者数に置き換えると妊娠率 50 %になるという数字のマジックを用いている施設が残念ながらあるからです。日本産科婦人科学会で定められている、周期数の妊娠率・出産率を開示しているかどうかを、見極めるポイントにしていただきたいですね。