いつかはママになる女性のための「プレコンセプションケア」とは?

いつかはママになる女性のための「プレコンセプションケア」とは?

元気な赤ちゃんを授かるためには、 夫婦ともに健康であることが大切。

特に、ママには“準備期間”が必要だとか。 栄養は偏っていませんか?

生理のトラブルを 放っておいたことはありませんか?

必要な予防接種は受けてきましたか? ママになるための体の準備は、 10代から始めるのがベストとも……。 あなたは、大丈夫?

佐藤 雄一 先生 医学博士・産婦人科専門医・日本産科婦人科内視鏡 学会技術認定医・日本生殖医学会生殖医療専門医。 2018年、体づくりができるフィーカレディースクリニック (東京日本橋)を開院。佐藤病院院長・高崎ARTクリニッ ク・Fika Ladies’ Clinic理事長を務める。専門分野だけ でなく、栄養学や抗加齢医学などの知識も深く、患者 さんにも積極的に生活習慣の改善を指導。

明日かもしれない、ママになる日のために…

“コンセプション(Conception)”は、“受胎”という意味で、“プレコンセプションケア”とは、将来的に妊娠を望む女性とそのパートナーに向けた健康管理のことです。

このような概念は、2010年前後から、まず欧米で広がり始めました。男性ももちろんですが、特に女性に喫煙や飲酒、麻薬の使用、性感染症などがあると、妊娠・出産の際にトラブルが起こることが多いため、若いうちからそのリスクについて知ってもらい、自身の体と向き合い、自身を大切にするよう促したのが始まりです。2012年にWHO(世界保健機関)がそれに賛同したことで世界的に広まり、日本では2015年に国立成育医療研究センターが国内初の「プレコンセプションケアセンター」を設置しました。

国によって女性が置かれている状況は異なるので、とらえ方もまちまちですが、日本では10代初めの思春期前からの健康管理、妊娠・出産を視野に入れたライフプランづくりにも役立ててもらえればと期待しています。

知っておきたい正しい知識やっておくべき健康管理

たとえば、子宮頸がんはワクチン接種で防ぐことができます。性行為での感染が主な原因なので、セックスを経験する前の低年齢のうちに受けておくと安心です。妊娠中にかかると胎児に悪影響を与える風疹もまた、ワクチン接種で防げる病気です。他の婦人科系の病気も、定期的に検診を受けていれば早期に発見でき、万一かかっても妊娠の可能性を多く残すことができるでしょう。

また、健康にとってはもちろん、妊娠においても肥満もやせすぎもよくないとか、生物学的に高齢になるほどに妊娠率が低下するとか、そういったこともこれまでの教育現場では語られてきませんでした。今や女性が仕事をもつのは当たり前で、重要なポストに就くのもまれではありません。結婚や妊娠は予期せぬことが多いものですが、どのタイミングで妊娠・出産するのがベターかなど、将来設計を考えるうえで、まずは女性の体についての知識をもつことが大切です。

生理の異変を見逃さずに“かかりつけ医”に相談を

産婦人科医の立場から言わせていただくと、女性にはもっと生理に関心をもっていただきたいですね。無謀なダイエットによる無月経、激しい生理痛があったのにもかかわらず市販の鎮痛剤でしのいで悪化させてしまった子宮筋腫、生理不順に至るまで、放っておかずに早くに診療・治療を受けていれば、不妊治療をしなくて済んだかもしれないというケースも少なくありません。持病、遺伝性のある病気なども妊娠・出産には影響し得るので、あらかじめ医師に相談しておくのもお勧めです。「生理やおりものが、いつもと少し違う気がする」などと、些細なことも気軽に相談しに行ける、“かかりつけの医師”を若いうちからもつことが、女性の健康を守り、維持するためには大いに役立ちます。

折しも、2019年12月から「成育基本法(成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律)が施行されました。いつかは親になるであろう若い世代への医療サービスの充実を、政府も推奨します。婦人科はもちろん、小児科、内科、精神科、さらには学校などの教育機関との連携も期待され、「不安なく赤ちゃんを産める社会環境づくり」もまた、プレコンセプションケアの理念となりつつあります

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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