採卵はたびたび行っても 子宮に影響はないのですか?
膠原病という持病をもちながら、10年 以上不妊治療を続けてきたものの、今後 どう治療を進めていけばいいのか不安 に。
膠原病と不妊はどういう関係がある のか、また、採卵する際には子宮を休ま せるべきか、蔵本ウイメンズクリニック の蔵本先生にお尋ねしました。
蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科 副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990年オーストラリア・ PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、1995年蔵本ウイメンズクリニック開院。 JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。
目次
ドクターアドバイス
●膠原病でも妊娠は可能。
●採卵は子宮への影響はほとんどない。
●卵巣への負担が少ない低刺激法を。
ジュン大好きさん(41歳)からの相談 Q.年明けに採卵、胚移植を2度しました。年齢的なこともあるので早くやるべきなのでしょ うが、次回6月末の診察で再度チャレンジしたい旨を伝えるつもりでいます。4月中旬 にIVFを最後にしました。もともと14歳から膠原病を患っており、生理も薬での調 整でしか起こりません。採卵するにはほぼ毎日の注射にも通いますが、少し期間をお いて子宮を休めるほうがいいでしょうか。すぐに行っても関係ないものですか?
相談者は若い頃から全身性エリテマトーデス(SLE)の治療を続けておられるそうです。
病と不妊の関係性はありますか。
蔵本先生 SLE や関節リウマチに代表される膠原病は、女性患者が多いといわれる自己免疫疾患で、当院にも SLE とつきあいながら不妊治療を行っている方が一定数おられます。決して珍しい疾患ではなく、治療により病気が安定しているのであれば妊娠は可能だと考えます。
膠原病があれば妊娠しづらい状態になる可能 性があります。たとえば治療にステロイドが大量に投与されるなど、薬の副作用が原因で妊娠に影響が及ぶことは考えられます。そのような持病をお持ちの方は、必ず主治医からの妊娠許可をもらってから不妊治療に取り組むことになります。当然、妊娠中にも内科の専門医を受診していただきます。
子宮を休ませるべきかと、ご自身の婦人科機能について不安のようです。
蔵本先生 エストロゲン製剤と経口黄体ホルモン剤を服用して生理を起こしているそうですが、この場合、相談者は無月経だと予想されます。現在 41 歳という年齢もふまえると、AMH値が低下し、FSH 値も上昇し、卵巣機能が低下しているかもしれません。子宮について不安をおもちのようですが、相談者が憂うべきは「卵巣」です。採卵を物理的に説明すると「卵胞に針を刺す」というシンプルなもので、よほどの問題がない限り、心配されているような子宮へのダメージはまずないと言っていいでしょう。
採卵の期間、方法などアドバイスはありますか。
蔵本先生 卵巣刺激で卵胞の発育を促すことで、採卵を行うことができます。成熟卵子が採取され、受精・胚発育が順調なら全胚凍結することが多いと思います。ただし、 41 歳というご年齢を考えると発育卵胞数は少ないと予想されます。卵巣内の卵子数が多いか少ないかを見るAMH 値を測り、1ng/ ml 以下であれば低刺激法で卵巣への負荷をできるだけ少なくする方法がよいでしょう。
卵巣も働きすぎるとバテるんです。発育でき る卵胞数が 5 個以下と少ない方は高刺激を続けて薬剤に耐性ができると卵子が採れにくくなることもあります。 1 回で1つでも多くの卵子を採ろうとする高刺激より、採れる数は数個と少ないけれど1カ月おきで採卵でき、卵巣への負担が少ない低刺激で何度か挑戦するほうが、相談者の現状に合っているかもしれませんね。
そして内視鏡を使い、子宮内に妊娠を妨げるようなポリープがないか検査を行うことも重要です。