多発性 の子宮筋腫。 AMH値が低くても 手術を受けるべき?
子宮筋腫は着床に影響があれば手術の適応になることが多いようですが、 高齢でAMH値が低い場合、手術を受ける選択は正解なのでしょうか。
ファティリティクリニック東京の小田原先生に伺いました。
ドクターアドバイス
これまでの治療データ
検査・ 治療歴
不妊の原因と なる病名
服用している薬
精子データ
多発性子宮筋腫とはどのような病態なのでしょうか。
小田原先生 子宮筋腫は子宮の中にある良性のこぶのことです。名前の中に「筋」とありますが、これは平滑筋という筋肉が変化を起こし、硬くなって腫瘤を形成しているからです。多発性子宮筋腫はこの筋肉のこぶが子宮内のさまざまな場所にたくさんできてしまう病態。
子宮筋腫自体は決して珍しい病気ではなく、当院の患者さんでも大きさを問わなければ3分の1程度の方に見られます。多発性のケースもまれではなく、なかには「手術をして 30 個取ってきました」と いうような方も。
子宮筋腫は女性ホルモンに影響されて起こる病気ですから、初経からの月経周期数が多くなればなるほど増えてきます。そのような起因から、 40 歳くらいから多 くなってくるという傾向がありますね。
コロさんは担当医から手術をすすめられているようですが、やはり受けるべきですか。
小田原先生 一般的には、子宮の内腔に飛び出ている粘膜下筋腫、あるいは子宮の内腔を大きく変形させている筋腫は着床を阻害するといわれているので、手術の適応になるケースが多いですね。手術をするかしないかは、大きさというより、子宮の内腔がどのような状況になっているかで判断します。
また、動物実験の段階ですが筋腫が子宮の収縮などに影響するという報告も。大きさや数、位置などに関係なく、筋腫があること自体が着床障害の原因になる可能性があるといわれています。
どのような手術をするのでしょうか。開腹する必要性は?
小田原先生 赤ちゃんを望まれている方の場合、子宮を全部取るわけにはいきませんから、妊よう性を残す施術が基本になります。着床に影響する部分だけ取り除くということですね。多発性の場合は将来、大きくなることがありますから、取れる範囲のものは全部取るという方針で臨むことが多いようです。
原則は子宮鏡、腹腔鏡による手術になりますが、筋腫の位置や数によっては開腹が必要なケースもあります。筋内に複雑に入り組んでできる子宮腺筋症と異なり、子宮筋腫は比較的正常な部分との境界が明瞭なので、手術としてはそれほど難しいものではありません。
年齢が 41 歳で時間的にあせりを感じられているようですが、術後、時間を置かずに不妊治療を再開できるのでしょうか。
小田原先生 一般的には術後3カ月程度で胚移植に臨めると思います。前後しますが、内視鏡および開腹手術の場合、決めてすぐに受けられることは少なく、数カ月程度の待ち時間を要することが多いようです。となると、年齢が高い方にとっては大きな時間のロスになってしまうことは否定できません。今やるべきことは、全体の治療計画をしっかり立てることだと思います。
手術を受けるとなった場合、まず現時点で優先するのは卵子、受精卵を確保するということ。コロさんは優良胚盤胞が確保できているようですが、何個凍結されているのでしょうか。1個しかないようなら、手術までにかかる時間をうまく利用して採卵を行い、できるだけ多くの胚盤胞を凍結しておけるといいでしょう。
筋腫により卵巣の位置が移動し、採卵時に針が刺しにくくなり、まれに手術を優先しなければならないこともあります。しかし、コロさんは以前、採卵をされていますから、それはないと思います。となれば、採卵を優先したほうがいいですね。
AMH値の低さを心配されていますが、卵子が採れて胚盤胞もできています。今の 段階で数字にこだわってナーバスになられることはないのでは。このまま前向きに治療を進めていっていいと思います。
手術後、着床率や妊娠率が上がることを期待できますか。
小田原先生 手術をして子宮内膜の状態が改善されれば、これまで以上に妊娠は期待できると思います。
ただし、場合によっては筋腫を切除し た際、内膜がかなり薄くなってしまうことがあります。そうなると赤ちゃんの成長に耐えられず、妊娠中に子宮破裂などを起こすリスクが生ずることも。
妊娠後のことまで考えたら、できれば産科の先生と連携しながら進めていければ安心ですね。筋腫の手術するのも分娩するのも同じ施設で、経緯がわかったうえで診ていただくのが理想的と思います。
まだ手術を受けるかどうか迷われているようですね。限られた期間で妊娠・出産にたどり着くために、それらを阻害する要因をなるべく排除しておきたい。医師側も、 万全な状態で準備をしたうえで、患者さんには移植に臨んでいただきたいという思いがあります。やはり、治療計画をきちんと立てたうえで手術を受けていただくのが最良の選択ではないでしょうか。