初めての人も安心して治療をスタートするために

英ウィメンズクリニック塩谷雅英先生の不妊治療講座

妊娠しにくいかも…と思ったら、早めに始めたい不妊治療。 治療が大変そう…と不安で受診をためらっていませんか。

不妊治療の流れを理解し、安心して最初の一歩を踏み出す ために、塩谷雅英先生に詳しくお話を伺いました。

今回は、 治療の大きな鍵を握る「検査」についてです。

 

塩谷 雅英 先生  1985年島根医科大学卒業。京都大学 産婦人科に入局、体外受精チームに 所属。1994年医学博士(京都大学) となる。神戸市立中央市民病院に勤 務、兵庫県初の顕微授精による児の 誕生に貢献。2000年不妊治療専門 クリニックとして英ウィメンズクリ ニックを垂水駅前に開設、2004年に さんのみやクリニックを開設。

「不妊の原因と検査」まとめ

●避妊をしないで半年間妊娠の兆候がなければ、1度受診を。

●初診の場合、女性は月経中・排卵前・排卵後の3つの時期に分け、約1カ月かけて検査を行う。

●一人ひとりの不妊の原因に応じた適切な治療法を決定するためには、治療前の検査が大きな鍵を握っている。

早めの治療が妊娠への近道。 約1カ月の検査で原因を究明

不妊治療は早めに受診することが大切です。結婚後、避妊をしない状態で半年間妊娠の兆候がなければ、一度受診したほうがいいですね。たとえば 20 代であれば、半年間避妊しなければ妊娠する方が多いわけです。妊娠の兆候がないということは何かトラブルが起こっている可能性が考えられます。早めに不妊治療を開始することで、妊娠の可能性も高まります。

治療においては、まず体の状態を把握し、ご夫婦の不妊症の原因を見つけ出すことが不可欠です。そのため女性の場合は、月経中・排卵前・排卵 1 週間後と 3 つの時期に分け、約 1 カ月かけて検査を行います。原因を調べるための 1 カ月は患者さんによっては長く感じられて、すぐにも治療を開始したいと言われる方もいます。しかし原因がわからず当を得ていない治療をスタートして数カ月が経っても結果が出ていなかったら、もっと遠回りになります。一人ひとりの不妊の原因に応じた治療を行うためにも、治療前の検査で不妊の原因を特定することが不可欠です。

当院の場合の一般的な女性の検査の流れを紹介しましょう。初診では内診と超音波検査を行います。超音波検査の目的は、子宮筋腫卵巣嚢腫がないか、子宮の内膜はちゃんと厚く育っているかなどを確認することです。これに加えてとても大切なこととして、卵巣の胞状卵胞数(AFC)のカウントを行っています。これは超音波検査の際、卵巣の中に見える 2 ~ 10mm の小さい卵胞の数を数えるものです。卵胞の数は誰でも年齢とともに減っていきますが、その減り方を調べ、卵巣の中に残っている卵胞の数を推測します。卵巣年齢がわかるという意味では、血中の AMH 値を測る検査と同じですが、AMH のように採血する必要がなく、余計な費用もかかりません。

また、腟分泌物検査も初診で行っています。従来、子宮の中は無菌状態だと考えられていましたが、腸内に善玉菌がいるように、実は子宮にも善玉菌である乳酸菌がいて妊娠しやすい環境をつくっているということがわかってきました。ですから初診の方は腟分泌物の菌の検査を行い、乳酸菌の有無を調べて、有害な菌には早めに手当を講じることがあります。

おもな不妊の原因

女性

卵管の問題

卵管は妊娠の成立にかかわる とても繊細な器官。しかし最 近では、菌の感染による炎症 で、卵管の癒着や閉塞が増え ています。卵管に問題がある と、卵巣から飛び出す卵子を うまくキャッチできなかった り、卵子を卵管から子宮まで 運べなくなったりして、不妊 症や異所性妊娠の原因に。

排卵の問題

月経が規則正しければ月に1回 のペースで排卵が起こり、妊娠 のチャンスが訪れます。しかし 月経が不規則な場合は、排卵が うまく起こっていない可能性が。 排卵は脳の視床下部、脳下垂体、 卵巣の三者が連携して初めて起 こるため、いずれかに異常があ ると排卵がうまく起こりません。

子宮の問題

受精卵は子宮で着床します。子 宮に異常があると、着床や胎児 の発育が望めません。月経が長 引く、不正出血がある、月経量 が多い、下腹部が張るなどの症 状がある場合には、子宮内膜ポ リープや子宮筋腫、月経痛が強 い場合には子宮腺筋症の疑いが。 気になる症状があれば受診を。

男性

精子の問題

乏精子症(精子の数が少ない)や精子無 力症(精子の運動性がよくない)など、 男性因子の多くは、原因のわからない体 質的なもの。原因がわかるものには、長 期間の薬の服用、幼少時の鼠径ヘルニア の手術、また15歳以降の男子が流行性耳 下腺炎になった場合などがあります。

子宮鏡・子宮卵管造影・通水 3つの検査で卵管を調べる

月経中(月経 3 ~ 5 日目)には、主に卵巣の働きを調べるため、血液中のホルモン検査を行います。当院では、血中の 6 種類のホルモンをこの時期に測定します。また、貧血や肝臓の異常、糖尿病の有無など、健康状態も確認できます。


次に排卵前(月経開始から 7 ~ 12 日頃)には、子宮鏡検査と子宮卵管造影検査、通水検査を行います。子宮鏡検査では受精卵が着床する子宮内腔の状態を調べます。子宮口からやわらかく細いファイバースコープを挿入し、子宮内腔をモニターに映して観察します。粘膜下筋腫、子宮形態異常のほか、卵管への入り口も観察できて卵管の子宮鏡・子宮卵管造影・通水 3つの検査で卵管を調べる閉塞、癒着などもわかるため、とても大切な検査です。特に子宮内膜ポリープは見逃されやすく、この検査をしないと見つからないことが多いので、当院では全員が子宮鏡検査を受けています。

また、子宮卵管造影検査も必ず受けていただきたい検査でこれは造影剤を子宮に注入する際に、加える力によって痛みを感じることがあります。検査の中で最も痛いと怖がる患者さんが多いのですが、当院では圧を測定しながら丁寧にゆっくりと注入し、一定の圧力を超えると薬が入らないようにしています。全身の力を抜いて、リラックスして受けていただきたいですね。

さらに通水検査は、抗生物質を溶かした生理食塩水を子宮に注入し、卵管の通り具合を調べます。これら 3 つの検査を通して卵管をよく観察し、 1 つでも異常があれば、卵管に異常があると診断されます。

最後に排卵 1 週間後の基礎体温が高い時期には、黄体機能を評価するため血中のホルモンを測定します。

以上の基本的な検査のほか、自費となりますが、抗精子抗体検査、感染症検査、風疹抗体検査、抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査などもすすめています。

また、男性対象の検査は精液検査です。一般的な精液検査によって判明するのは、精子減少症、精子無力症、奇形精子症などで、いずれも自然妊娠の可能性が低くなります。

不妊症の検査についてお伝えしましたが、すでに受けたもので同じ検査を繰り返す必要がないものは、ご負担のないように省くのが原則です。そのためにも以前の病院で渡された検査結果も、初診時にすべて持参していただきたいです。

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