治療のやめ時といわれてしまいました

Q なかなか移植まで至りません。 もう治療を諦めるべき?

永井 泰 先生 東京医科大学医学部卒業。産婦人科・麻酔科認定医。1989年、 埼玉県三郷市に開院。さらに環境を整え、より良い医療を提供す るために、2015年に診療所から病院へ改組。産科、婦人科を はじめ、不妊治療、形成・美容外科、小児科と、女性が生涯関 わる総合的な医療を、温かく、優しい環境の中で提供。クリスマ スに開催予定の院内コンサートを企画中。俳優さんが朗読する童 謡に合わせて行うピアノやバイオリンの生演奏は以前開催した時も 大好評で、小さな子どもたちも夢中になって聴いていたとか。
ちよさん(35歳)からの相談 Q.今まで体外受精を5回しましたが、受精したのは1個だけで、 それも胚盤胞までいかず移植できたことがありません。9カ 月前に嚢腫が邪魔をして採卵できなくなり、嚢腫、筋腫、癒 着剥離の手術を実施。癒着が広範囲で、先生からは「自然 妊娠も可能性はあるが、体外受精がいいでしょう」といわれ ました。今年2月の採卵では受精せず。先日、採卵無麻酔の 病院に転院して診てもらったところ、嚢腫と筋腫、癒着がま たできていて、AMHの値は0.18ng/ml、FSHは37mIU/ mlでした。先生からは「嚢腫の隙間から見える卵子は採れ ないことはないが激痛で、そんな思いをして採ったところで 良い卵子とは思えない。治療のやめ時でしょう。あと1~2年 早かったら」といわれてしまいました。全身麻酔なら採卵で きると思いますが、本当にもうやめ時なのでしょうか。

9カ月前に子宮内膜症や子宮筋腫などの手 術を受けたのにもかかわらず、また再発をし たということです。

永井先生 なかには手術をしても半年くらいで再発してしまう人もいます。特に多発筋腫の人はまたすぐにできてしまうことが多いようですね。筋層内筋腫でも子宮内膜を圧迫しているものや粘膜筋腫だと着床に影響することがあるので、そのような影響が考えられるのなら二度目の手術に臨むという選択もあるかと思います。

受精率が低く、胚盤胞までいかないとい うのは、やはり卵子の質が悪いからなので しょうか。

永井先生 確率は低いけれど一応受精はして、でも、その後がうまくいかないということは、やはり卵子の質が悪いことが考えられます。AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低いのが気になりますね。これは卵巣の予備能、残っている卵子の数を表して いる数値といわれ、卵子の質とは関連していませんが、低いとそれだけ妊娠のチャンスも少なくなってきているということです。

さらに気になるのがFSHの数値。年齢の割に極端に高く、閉経に近い数値です。これは子宮の疾患があるから上がってしまったということではなく、もともと卵巣の働きが悪く、早発閉経になるような傾向があったのではないでしょうか。

確かに厳しい状態ですが、AMH値 0.1 以 下の方でも妊娠している方はいらっしゃいます。FSHに関しても、カウフマン療法 などでFSHを一度下げて安定させてから排卵誘発を行えば、妊娠するチャンスはあると思います。

治療する際のポイントなどはありますか。

永井先生 これまでどのような方法をとってきたのかわかりませんが、もし同じような形で卵子をつくっていたのなら、排卵誘発の方法を変えると胚盤胞までいく可能性が出 てくるかもしれません。

卵子をたくさん採ることを目指すのでは なく、このような状況の方は低刺激でいいものが出てくるのを待つという方法もある かと思います。ただ、採卵は急いだほうがいいでしょう。採れるうちに卵子を確保し て受精卵を凍結し、再手術に臨むならその後に受けることを考えます。移植は急ぐことはありませんから。とにかく採卵を優先したほうがいいと思います。

「嚢腫が邪魔をして採卵しにくい」という ことについてはどう思われますか。

永井先生 これは無麻酔だから採りにくいということですよね。それなら、麻酔をして採卵をすれば問題ないでしょう。施設によっ て考え方が異なるかもしれませんが、ちよさんのような症例にも対応できる施設はあると思います。いろいろ問題があってハードルは高めではありますが、できることはまだあるはず。ここで諦めることなく、前向きに治療に臨んでいただきたいですね。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。