西洋医学をメインに 漢方薬を試すのもひとつ。
この季節になると気になる体の「冷え」。
妊娠 にとって「冷え」は良くないのでしょうか。
ま た、西洋医学では「冷え」をどのようにとらえ、 対処しているのでしょうか。
醍醐渡辺クリニッ クの石川弘伸先生にお話を伺いました。
ドクターアドバイス
西洋医学には不妊症に直接関連する「冷え」という概念はありません
不妊と血流において 「冷え」の影響は 直結しにくい
ホルモン、栄養、酸素を 子宮に運ぶ血流は大切
西洋医学をメインに 漢方などを 取り入れるのはOK
西洋医学には「冷え」という 概念も病名もない !?
西洋医学には「冷え」という概念は なく、「冷え症」という病名もありませ ん。「冷え」を訴える方の血流を調べて も必ずしも異常が出るわけではなく、 サーモグラフィーなどで温度低下を示 すような症状は非常にまれです。また、 動脈が詰まるような血流障害であれば、 ほかの専門治療が必要になります。
「お腹が冷えると良くないですか?」と 患者様から質問されることがあります。 手足は冷えていても、体の深部の体温は 常に適温に保たれています。この深部体 温が簡単に変動してしまうと、さまざま な器官に影響が及び、体は大変なことに なってしまいます。
ホルモン、栄養、酸素を運ぶ 血流の改善は治療として有効
ホルモン、栄養、酸素を全身に運んでいるのは血液です。もちろん妊娠に も血流が大切であることは間違いあり ません。子宮の血流が悪くなると、子 宮内膜の厚さや受精卵の成長に影響す ることが考えられます。そのため、体 外受精の際や流産経験がある方には、 アスピリンを投薬することはありま す。これは血液自体をサラサラにして、 子宮や受精卵に届く血管を詰まりにく くして血流を良くする作用があります が、「冷え」の改善につながるもので はありません。
西洋医学による治療をメインに 漢方薬などを試すのも一つ
「冷え」を自覚する人に不妊症が多い というデータはなく、複数のお子さん がいる場合でも冷えでお困りの人はい らっしゃいます。当院では 10 年以上前 から毎月、体外受精の成績を集計して いますが、夏と冬を比較すると最初の 数年間は冬の成績のほうが良くなっていました。その後、培養環境を見直す ことで夏と冬の治療成績は変わらなく なりましたが、このことからも「冷え」 が血流や不妊症と直接関連することは 考えにくいと思います。患者様には「冷 えをあまり気にすることはありません よ」とお伝えしています。
それでも「冷え」を強く自覚される 方には、なんらかの治療が必要です。 そこで当院では、当帰四逆加呉茱萸生 姜湯、真武湯、加味逍遙散、当帰芍薬 散といった漢方薬をおすすめすること はあります。積極的な提案ではありま せんが、運動、漢方、鍼灸、レーザー 治療などで血流の改善を試みるのも一 つの考え方だと思います。ただ、効果 は実証されていませんので、妊娠を希 望される方は、あくまでも西洋医学の 治療が第一選択になります。