俵先生に 聞きました!

妊娠にまつわるウソ!ホント?

「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠 にまつわる噂や俗説……。

ウソなのか、ホントなのか、 俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説し ていただきます。

 

妊娠はうつるって ホントですか?

ことり(主婦/28 歳)Q.結婚4年目で妊娠した親友は、旦那さんの職場に妊婦さんが3人いて、よくお腹を触らせてもらったそう。妊娠ってすごいパワーがあるのかも…と、私も親友のお腹を触らせてもらい、いつも身につけられるように、親友の携帯ストラップをもらってきちゃいました。
A.あくまでもジンクスで科学的根拠はありません。高額な商品に騙されないよう、楽しんで取り入れて

インターネットで、妊娠菌が付いた米を食べると子宝に恵まれる「子宝米」が販売され、詐欺だとして話題になりましたね。当然ながら、科学的根拠は一切ありませんが、妊娠を祈願したジンクスは、古くから存在します。たとえば、マトリョーシカやさるぼぼは子宝を願って作られたものですし、子宝にご利益のある神社は各地にあり、参拝する人も少なくありません。陣痛中の妊婦さんに富士山の絵を描いてもらうといい、というようなものも知られています。

ジンクスだと知りながら信じてしまう、そうした心の動きの多くは、社会心理学的に説明できます。自分に都合の良い意見のみを信じてしまうことは「確証のバイアス」という用語で説明されますし、妊娠したい自分と、なかなか妊娠しない現実に、お守りやジンクスをこじつけて解消しようとするのを「認知不協和の解消」と言います。つまり「子宝米」や「お腹を触ると妊娠する」も、妊娠を、ジンクスやお守りの効果として誤認していると考えられます。

  とはいえ、これらは決して悪いこと ばかりではないのです。本来、お守りやジンクスは、精神的な支えを得るためのもの。お守りがあることで心の支えになったり、前向きな気持ちになって不安が和らいだりして、結果的に体調に良い影響を与える可能性は大いにあります。医学の世界にも「プラシーボ(偽薬)効果」といって、薬ではないビタミン剤等を与えたら、それを薬と信じて飲んだ人の痛みが治まった、という現象があります。ですから、お守りやジンクスを楽しめているのであれば、心の支えとして取り入れてもいいのではないでしょうか。ただし、くれぐれも不安や悩みに付け込んだ高額な商品や勧誘に騙されないよう気を付けてください。

デブだと 妊娠しにくいの?

ぶぅ子さん(主婦 / 35歳)Q.結婚3年目ですがなかなか妊娠しません。これまで主人の両親か らは何も言われたことがなかったのですが、先日主人が義父に、私 が太ってるからでは? ダイエットさせなさいと言われたと聞き、 昨夜はショックで涙が止まりませんでした。太っていると妊娠しに くいですか?
A.肥満は妊娠に悪影響があるという報告があります。その後のライフサイクルのためにも体重コントロールを
 体重と妊娠の関連性についてはこれまでさまざまな形で報告されていま す。およそ50万人のART患者を対象にした研究(2016年、アメリカ)。 これによると、痩せすぎおよび肥満の女性は、標準体重の女性より妊娠率、 出生率とも低く、どちらも低体重児と早産のリスクが高いことが明らかに なっています。(※1)
 また、これもアメリカの研究ですが、約24万人の新鮮胚移植実施者を、 痩せ、普通、肥満に分類し(BMIの数値では痩せBMI:18.4kg/m2 以下、 普通18.5~24.9kg/m2、肥満25.0kg/m2 以上)、BMIが普通の人と 肥満の人との妊娠結果を比較したところ、痩せや普通の女性に比べて、肥 満の女性はBMIが高くなるほど妊娠率が低下し、逆に流産の確率が上が るという結果が公表されています。つまり、肥満女性のほうが、通常体重 や痩せすぎの女性よりも妊娠しにくく、流産しやすいと言えます。(※2)
 そして何より、肥満による悪影響は、不妊治療や妊娠・出産だけに限っ たことではありません。肥満は、脂質異常症や糖尿病、子宮内膜がんや乳 がんのリスクに密接に結びついていることがわかっています。喫煙よりも 肥満のほうが死亡率を高める重要な因子 となるとさえ言われ、肥満であることは、 その後の人生にも大きな影響を与える一 因になっているのです。妊娠、出産はも ちろんですが、それらを含めた女性のラ イフサイクルを長い目で見た時、やはり 適正な体重コントロールが必要です。そ うしたリスクを取り除き健康を保つには、 BMIを20~24ぐらいに保つのがもっ とも良いとされています。不妊治療の際 には、そういった要素も視野に入れて、 取り組んでいただければと思います。
※1=出典/Fertility and Sterility vol.106,2016Dec,1742-1750
※2=出典/Fertility and Sterility vol.105,2016Mar,663-669

お酒は不妊の 原因になる?

サンさん(主婦 / 31歳)Q.不妊治療3年目の主婦です。私はお酒が大好きで晩酌は毎晩、週末 は必ず外に飲みに出かけます。不妊の原因になり得るだろうなと思いつ つ、治療のストレスもありやめることができません。やはり子づくり をしようと思ったら飲んではいけませんか?
A.アルコール摂取量が多いと妊娠しづらいという研究結果も。男女とも、適量を意識して
 アルコール摂取量と妊娠の関連性について調べてみました。アメリカで タイミング指導を行った女性124人を調査したところ、自然妊娠では、お 酒を飲まない人の妊娠率は24.5%、1週間に91g以上のアルコールを摂取 した人の妊娠率は8.3%でした。1週間に90g以内の摂取量であれば、飲 まない人との大きな差は見られませんでした。(※3)
 また、2545組4729周期のIVF実施女性のアルコール摂取状況を調べ たところ、1週間に4ドリンク(56g)以上飲んでいた女性は、それ以下 の女性に比べて出生率が16%低下。さらに、男女両方が1週間に4ド リンク飲んでいた場合は、出生率が21%低下していたと報告されていま す。(※4)アメリカの調査なので「1ドリンク=14g」となっています が、日本では厚労省が日本人の適量な飲酒量として「1日平均純アルコー ル20g」を目安と定めています。これはビール中ビンなら1本(500ml)、 缶チューハイ1缶(500ml)、ワインはグラス1杯(約180ml)に相当す るため、いずれもこれと照らし合わせて考えることができます。
 同様に、男性不妊への関与についての調査もあり、過去1年間に1週間 のうち最低でも5日間あたり、アルコール度数40~50%のブランデーな どを最低でも180ml飲んでいた66人を調べると、精巣の構造や精子形成 に影響を与えることがわかっています。(※5)
 お酒を飲むこと自体は、リラックス効果が得られるなどのメリットもあ りますが、やはり適量を心掛けていただきたいですね。覚えておきたいの は、男性より女性のほうがアルコール代謝能力が低いということ。顔が赤 くなるかどうかは、お酒の強さの 基準にはなりません。また、過剰 な飲酒は乳がんや骨粗しょう症の 影響も心配されます。
 言うまでもありませんが、妊婦 の飲酒は胎児性アルコール症候群 や成長障害といった悪影響を及ぼ しますので、絶対にやめてください。
※3=出典/Hakim et al., Fertility&Sterility,1998
※4=出典/Brook et al., Obstet Gynecol,2011
※5=出典/Muthusami et al., Fertility&Sterility,2005

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