タイムプラスを 活用した受精卵の成長

タイムプラスを 活用した受精卵の成長 について教えてください

40代の妊娠と受精卵の成長はどのようにかかわっているのでしょうか。

近 年、タイムラプスを活用した受精卵の選別について臨床研究を進めている、レ ディースクリニック北浜の奥 裕嗣先生にくわしく教えていただきました。

ドクターアドバイス

40歳以上に多い染 色体異常の受精卵。 タイムラプスで選別で きる日が来るかもし れません。

奥 裕嗣 先生 1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院勤務の後、アメ リカに留学。Diamond Institute for Infertility and Menopause にて体外受精、顕微受精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、 IVF大阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック副院長を経て、2010 年レディースクリニック北浜を開院。医学博士、日本産婦人科学会専 門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。もうすぐタイで英才教育を 受けたワンちゃんが来日。家族になる日を楽しみにしている先生。「今 いる子は日本チャンピオンなので、新しい子は世界チャンピオンに(笑) 世界を飛び回ってほしいですね」

40 代の流産の原因は 染色体異常がほとんど

流産の原因は母体の年齢によって 異なりますが、染色体異常とその他 の原因の大きく2つに分かれます。

なかでも年齢とともに染色体異常の 確率が高くなり、 20 代では 50 %、 40 歳以上では 80 %以上になります。

と くに染色体異常のほとんどは「数の 異常」によるものです。

通常は2本 ある染色体が、トリソミー(染色体 が3本)やモノソミー(染色体が1 本)になると、流産や死産の可能性 が高くなります。

一方、わずかな確 率で起こる「構造異常」もあります。 これは染色体に異常が起こり、構造 が一部変化したもので「転座型」と も呼ばれます。

しかし、 40 歳以上の 原因のほとんどはトリソミーの染色体異常です。

染色体異常以外の原因 には、抗リン脂質抗体、血液凝固系 の異常、抗核抗体などがあります。

見た目で受精卵を選ぶ 評価方法に限界も

40歳以上の受精卵については、成 長スピードが遅くなる傾向はありま すが、全員ではありません。

それよ りも厄介なのは、形態的にみてまっ たく問題がなさそうにみえる受精卵 です。

例えば、グレードが良好で理 想的な胚盤胞に成長したとしてもそ の約 40 %に染色体異常の可能性があ ります。

形態的な評価のみで移植を 行った場合のリスクは非常に高く、 染色体異常の受精卵が着床してしま うと、妊娠しないこと以上に経過が よくありません。

妊娠しなければすぐに治療ができますが、染色体異常 の受精卵が着床した場合は、流産手 術など肉体的、精神的な負担が大き いうえに、その後の治療を再開する までに3〜5カ月を要することにな ります。

仮に分割胚のグレード4〜 5の受精卵であれば、染色体異常の 可能性は十分に考えられますが、グ レードが非常に良い場合であっても 染色体異常の可能性があるため、P GS(着床前診断)が認可されてい ない日本では、そのあたりの判断が むずかしいところです。

タイムラプスによる 受精卵の選別が可能に !?

そこで、当院ではタイムラプスに よる受精卵の選別を試みています。

タイムラプス(低速度撮影)で 24 時 間、受精卵の成長をモニターしなが ら、良い受精卵を選んでいきます。

受精卵の分割過程を観察している と、通常は2分割から4分割と偶数 に分割しますが、なかには1分割か ら3分割と奇数に分割する卵子があ ることがわかります。

このような卵 子は、胚盤胞になりにくく染色体異 常のリスクが高い(妊娠率が低く、 流産率が高い)とされており、受精 卵の選択が可能な場合は、形態的な 評価は高くても第一選択で移植しな いようにしています。

また、これまで胚盤胞の成長は 平均5日目、遅いもので6日目と いうのが一般的な考え方でした。

しかし、タイムラプスで観察する と4日目で胚盤胞になるものがか なりあることもわかってきました。

早く成長するということは良い卵 子である可能性が高いということ です。

ちなみに、当院で4日目の 胚盤胞を移植した時の着床率は約80 %です。タイムラプスの導入に より、4日目の胚盤胞を選べるようになったことも大きな成果です。

40 代には分割胚の 凍結胚移植を提案

40歳以上の受精卵染色体異常の 確率は 80 %以上とお話しましたが、 それ以外の正常なものをどうレス キューしていくか。

当院では、 40 歳以上の方には凍結胚移植を積極 的に提案しています。その理由は、40 歳以上の妊娠率が新鮮胚移植で19 %、凍結胚移植では 37 ・ 5 %と 圧倒的に高く、OHSS(卵巣過 剰刺激症候群)の予防にもつなが ること。

さらに日本で開発された ガラス化法の凍結技術は、受精卵 の変性が少なく、受精卵を効率良 く利用できるからです。

また、 40 歳以上の受精卵の成長 スピードは遅い傾向にありますか ら、受精卵を凍結している間に黄体ホルモン補充を行い、「着床の窓」 といわれるインプランテーション ウィンドウの開閉を遅らせて着床 しやすいタイミングをつくること ができます。

さらに、絶対的ではありませんが、40 歳以上の受精卵は体外培養のスト レスに弱く、胚盤胞よりも早く移植 するのが望ましいとの報告がありま す。

例えば、アメリカのビル・リー 医師は、採取した卵子と精子を卵管 内で受精させるG I FT法を奨励しています。

そこで、当院でも 40 歳以 上の凍結胚移植においては、胚盤胞 ではなく、2日目の分割胚を初回は 実施しています。

最後に、 40 歳以上の妊娠・出産率 は、さらに年齢を重ねるにつれ、低 くなる一方です。

例えば、 40 歳でご 結婚された方は、その時点ですでに ご自分が不妊症である可能性がある と思っていただくことが妊娠への近 道です。

すぐに病院にかかられるこ とをおすすめします。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。