誘発方法を変えたほうがいい?

石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病 センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2012年より久保みずき レディースクリニック 菅原記念診療所院長。不妊治療から周産期・小 児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、 不妊治療/婦人科、産科の外来を担当する。恵まれた自然環境や、産 科や小児科も併設された施設の中でゆったり治療が受けられるのも同院 の大きな魅力。最寄り駅からの送迎バスに加え、マイカーで通院される患 者さんも多いため、現在は駐車場を拡張して整備中。

受精卵はすべて グレード1 なのに 結果がともないません

ゆうさん(35歳)からの相談 Q. 不妊治療4年目で、去年から簡易IVFを始めました。成熟する卵子は全てグレード1 なのに、なぜかなかなか妊娠できません。まず1回目は、3個のうち2個が変性卵で、 初期胚1個を移植したものの、化学流産に終わりました。2回目は、4個のうち1個が 変性卵で、2個の胚盤胞を移植するも撃沈。3回目は、4個のうち2個が変性卵で、 1個が未成熟、初期胚移植でも、やはり陰性でした。誘発方法は毎回同じで、クロミ ッドとHMGです。治療を始めてからどんどん体重が増えはじめ、最近、精神的にも つらくなってきました。誘発方法を変えたほうがよいのでしょうか?

採卵個数当たりの変性卵

変性卵が多いということですが、ご相談の「簡易IVF」など、体外受精の方法が影響することはありますか?
石原先生 卵巣刺激の方法というよりも体質の影響かもしれません。
「簡易IVF」とは、おそらくクロミフェンなどを服用するマイルド法による卵巣刺激のことをおっしゃっているのだと思いますが、一度、ロング法、ショート法、アゴニスト法といった標準的な卵巣刺激を行うことをおすすめします。
飲み薬による簡易な方法による卵巣刺激では、どうしても回数を重ねないと難しい場合もあると思いますね。
当院での治療 1 回あたり、変性卵が 1 個でも出現する割合はどの方法でも 20 %前後ありますが、採卵 個数あたりの変性卵率は 2 ~ 4 %と高くはありません。
採卵数が増えれば変性卵ではない卵子も増えてくるかもしれませんね。

妊娠への近道

卵巣刺激の方法が合っていない?
石原先生 そうかもしれません。それに治療に時間がかかるというのは、患者さんにとっては大きなストレスです。
いくら簡易とはいっても、何周期にもわたる刺激で回数を重ねると負担に感じる方もおられると思います。
飲み薬から標準的な卵巣刺激に変えた場合、実際に少しお腹が張るなど、身体的な負担は多少増えるかもしれませんけれど、それよりもしっかりとした標準的な治療で採卵個数を増やし、胚移植が可能な卵子、受精卵を増やしていくのが、もしかすると妊娠への近道になりうるかもしれませんね。

変性卵が多いのは体質?

変性卵が多いと、凍結胚移植は効率 が悪い治療なのでしょうか?
石原先生 多嚢胞性卵巣症候群などの場合は変性卵が増えることもあるかと思いますが、ゆうさんの場合、そうではなさそうですね。
凍結胚移植に関しては、グレードの低い胚は着床率も低いとして、凍結しない方針の施設もあるようです。
クリニックの方針にもよると思いますが、排卵誘発法を変えると、変性卵が多くても、なかにはそうではない、しっかりとした卵子が採卵できる可能性がありますので、子宮内膜やホルモン環境のよい時期を狙って、凍結胚移植を試してみる価値は十分あると思います。

治療とストレス、体重…

体外受精は昨年から始められたようですが、体重の増加なども気にされています。精神的にもつらいとのことです。
石原先生 体重増加については、当院でも治療時に増えてしまう方がいらっしゃいます。
ストレスもそうですし、薬の影響もあるのかもしれません。
そういう方は身体的な負担よりも、治療の回数を重ねて「時間がかかる」ことが大きなストレスの原因となっている可能性があります。
もしそうであれば、やはり1回あたりの採卵数をしっかり確保する方法に挑戦してほしいと思います。
クリニックの方針にもよると思いますが、主治医の先生にもそのあたりをよく相談され、納得のいく治療を受けられることをおすすめします。
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