体外受精を連続したら がんリスクは高まる?

休んだほうがいいですか?

蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病 院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、 1990 年オーストラリア・PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、 1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。O 型・おうし座。今年6月5 日で開院 20 周年を迎えた蔵本ウイメンズクリニック。スタッフ8名から スタートし、今や 55 名にまで増えました。「不妊治療施設としての質 を維持していくのが大事」と先生。JISART生殖技術認定委員会委 員長にも就任し、ますます多忙です。
ミアさん(33歳)からの相談 Q.治療を始めて3年です。1月に採卵しましたが卵巣過剰刺激症候群(OHSS) がひどく、移植を見送りました。翌月の生理後の最初の凍結胚移植は陰性、4 月にホルモン補充で BL6ABと4AA の2個の卵を戻し、1個が着床しましたが、 9日目に血中hCGが36.5と低く、結局ダメになってしまいました。主治医は 「続けてやろうと思えばできるが、5人に1人は子宮から出血するので、休ん だほうがいい」と言っています。私はできれば続けてトライしたいと思っていま すが、ネット情報では体外受精の連続はがんのリスクが高くなる、自然周期で 休ませて移植したほうが、着床確率が上がると出ていて、治療を続けるか休む か迷っています。年齢的にも休みたくないのですが…。

ネットの情報に左右されない

ミアさんはネットで情報を得て、判断に迷っているようですが。
蔵本先生 ネットにはありとあらゆる情報が載りますし、ネットの情報が正確だという保証はありません。
たとえば、ミアさんが服用しているソフィア C Ⓡは卵胞 ・ 黄体ホルモン配合剤ですが、これは凍結胚移植の前周期に使い、月経調整と卵胞発育抑制のために使ってらっしゃるのでしょう。
ホルモン補充による子宮内膜調整周期では、血中エストロゲン値もさほど上昇しませんし、体外受精を連続して発がん率が上昇するとは思われません。
ネットの情報だけに左右されずに、主治医と相談しながら、ご自分の意見も主治医にはっきりと伝えて治療を受けてください。
ただ、気になるのが、かなりたくさんの薬剤やサプリメントを使用していることです。
主治医の方針だとは思いますが、もう少しサプリメントを絞り込んで減らしても良いのでは?その辺もよく相談されるといいですね。

アシストハッチングという手も

がん発症率は関係ないとして、ミアさんの場合は休んだほうがいいのでしょうか?
蔵本先生 続けて胚移植をされていますし、精神的にも少し疲れておられるようですので、1~ 2 周期休んで凍結胚融解胚移植をされるのが良いと思われます。
その場合、ホルモン補充による子宮内膜調整をして凍結胚を戻すか、自然排卵があるようでしたら、少し方法を変えて、自然排卵周期で凍結胚融解胚移植をされてはいかがでしょう。
どちらの方法も着床率は変わりません。胚盤胞は最終的に、外側の殻である透明帯を破り、外に出て子宮内膜に着床します。
しかし、凍結融解した胚の透明帯は、新鮮胚のそれと比べて硬くなることが知られています。
そこで胚移植前に透明帯に少しだけ穴を開け、胚盤胞を透明帯から脱出しやすくさせるアシストハッチング(AHA)を行うのも良いでしょう。

子宮環境と着床率

着床率と中絶経験の相関関係は考えられますか?
蔵本先生 ミアさんの内膜の厚みが不明ですが、中絶をすると内膜が薄くなり、着床率が下る場合があります。
医師によって若干数値が異なりますが、私の施設では胚移植を決定する前に、子宮内膜の厚さが最低 7 ㎜以上あり、エコー上での診察で子宮内膜が木の葉状であれば良好な妊娠率を得ています。
また、大きな子宮内膜ポリープがあると着床率が低下します。
なかなか妊娠しない時は、凍結胚移植する前に前周期に子宮鏡で子宮内腔の状態を診て、内膜ポリープがあれば切除することが良いと思います。
子宮鏡で子宮内膜を少し引っ掻くことによってスクラッチング効果を与え、洗浄もしますので着床環境の改善にもつながる可能性はあります。
年齢については 33 歳なので、 まだ充分に妊娠できます。
要はリラックスすることです。
また、バランスの良い食事を摂ることも心がけてください。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。