目先の判定日より、視点を先へ

田村秀子先生の 心の 玉手箱Vol.23

顕微授精のマイナス判定に、 思わず診察室で泣いてしまって 激しく自己嫌悪……。

治療中の皆さんにも 同じような経験があるのでは?

秀子先生にお話を伺いました。

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤 十字病院に勤務。1991 年、自ら不妊治療をして双子を出 産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、 1995 年に不妊部門の現クリニックを開設。繊細な感性を秘 めた、おおらかなお人柄が魅力。A型・みずがめ座。今春、 京都府・市内の産婦人科医師で構成される「京都産婦人 科医会」の会長に就任された先生。昨年は「若年の性被 害を考える」のテーマでフォーラムの司会進行を担当。女性 医師の立場や視点を生かした活動が今後も注目されます。
ミッフィーさん(会社員• 36歳) Q.顕微授精の判定日にマイナス判定が出て診察室で 泣いてしまいました。私はすごく神経質で心配性、 家で調べてしまうと仕事や日常生活が手につかず 迷惑な人になるので、判定までフライングはやめ ておきました。普段ポーカーフェイスで我慢強い ので泣くわけがないと思っていたのに……。看護 師さんが何人も見ている前でヒクヒクと肩を震わ せて泣いてしまいました。いい歳でしかも初期胚 移植です。採卵も移植も1回目です。もっと大変 な人や若い人もいっぱいいるのに、次に通院する のが本当に恥ずかしくて嫌でたまりません。

ミッフィーさんの投稿に 寄せられたコメントです!

もーたんさん(主婦・34 歳) 大丈夫ですよ。私も判定日に泣きながら車を運転して帰った ことがあります。そして、昨日5回目の採卵をしてきたんで すが、採卵の後、いつもベッドでこっそり泣いています。採卵 の痛みもあるけど、空胞が多いので何だか自分が情けなく なってきて。ミッフィーさん同様に、心の中では今回もダメ とはわかっているんですけどね。私も一度泣き出したら止ま らないです。何のアドバイスにもなっていませんが、不妊治 療されている方はどこかしらで涙流してますよ。お互い精神 的に強くなれたらいいですね。
さと子さん(主婦・40 歳) 私もミッフィーさんと同じ歳の時にクリニックで泣きま したよ〜。妊娠が継続してなくて、先生から流産を言い渡 されて別室で説明を受ける時に大泣きしました……。「涙 を流す患者さんはたくさんいらっしゃるので、我慢しな いで思い切り泣いていいですよ」って言われて、さらに 大泣き……。待合室に行く時にきっと赤目で腫れていた と思います。でもその3年後に治療の末に授かりました。 流した涙は無駄ではないです。大丈夫ですよ!!

医療機関は一番 泣いてもかまわない 場所だと思います

泣きたい時は、泣いたほうがいいと思います。
だって家族の前で泣くよりも、医師や看護師の前など、医療機関で泣くほうが問題も少ないでしょう?
ご主人の前で泣いたら、やっぱりご主人もつらいし、ましてや両親や友達の前では、いろいろな事情もあるでしょうからね。
だから泣く理由がはっきりわかっている医療機関が、一番泣いていい場所だと思うんです。
医師はそんな場面を普段たくさん見ているわけですから、大げさとも思わないし、当然の反応だと思います。
当院でしたら、ここでは看護師の出番です。
「別のお部屋へ行きましょうか」と案内してもらって、だいたい泣くだけ泣いたら落ち着いて出ていらっしゃることが多いですね。
病院をそのまま出られた方でも、帰り道で泣かれる方は少なくないと思いますよ。

判定日は通過点。 目先にとらわれず 視点を次の治療へ

「期待しすぎちゃダメ!」と、診 察室に入る前に自分に言い聞かせていたのに泣いてしまった……そんな自分の思わぬ反応に、自分自身が戸惑っていらっしゃるのでしょう。
「基礎体温や体調でダメなのは 99 %わかっていました」とも文章にありました。
実はミッフィーさん、ものすごく期待しておられたのだと思います。
だからなおさら、ご自身でも抑えきれない感情がこみ上げてきて、一度あふれてきた涙が止められなかったのではないでしょうか。
反対に本気で「やっぱりダメだったな」と思っている人は泣かないと思います。
判定日が気になるのは当然ですが、あくまでも通過点と考え、指折り数えるのはやめましょう。
それよりも、生理が来るのは当たり前と受け止め、妊娠反応にマイナスが出ても、「じゃあ、次の胚移植はこのあたりかな」「次は凍結胚移植?」など、できるだけ具体的な次の治療について考えてみてください。
旅行や遊びの予定ではあまり意味がないので、治療という同系列の内容で考えるのがポイント。
目先のモヤモヤをやり過ごすことができると思います。

“悲しみの風船”が 膨らんだ時は またしぼませて

「泣く」というのは一種のガス抜きの行為ですから、泣きたい要素があるのなら、どこかで泣いておかないと無理が生じます。
こと不妊治療に関しては、泣きたい時に我慢して我慢して自分の中につらい気持ちをためてしまうと、必ずどこかで耐えきれなくなって爆発します。
それがご主人の前だったりすると、突然泣き出して相手を戸惑わせてしまうことに。
戸惑わせるだけならいいのですが、「私がこんなにつらい思いをしているのに、どうしてわかってくれないのよ!」と八つ当たりして、今度はご主人に逆ギレされかねません。
ですからご主人にぶつけてしまう前に、心置きなく泣きたいだけ泣いて、自分の中のガス抜きをすることも必要です。
悲しみでいっぱいに膨らんだ風船は、またすぐに膨らんでしまうかもしれないけれど、少なくとも爆発する前に、医療機関などで全部出し切って、思いがあふれないようにしてから、お家に帰ったほうがいいと思います。
治療で思うような結果が出ない時、立ち直る方法は人それぞれにあると思いますが、何よりためこまないこと、引きずらないことが大切です。

秀子の格言

「目先の判定日より、視点を先へ。 悲しい時は我慢せず、 医療機関で泣きましょう」
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。