子宮卵管造影検査で 癒着の詳細まで わかるのでしょうか?

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精 グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995年より現在の東 京・亀有にて産婦人科医院を開業。6月末、ドイツで開かれたヨーロッパの 不妊学会に出席。オフの時間は同行した息子さんとグルメやドイツビール を堪能。時間には正確だけれど、時速200kmを軽く超えて飛ばす現地の タクシーにはびっくりしたとか。
hanakoさん(37歳)からの相談 Q.先日、子宮卵管造影検査を受けました(薬名がイソビスト300Ⓡだったので、水溶性の 造影剤だと思います)。片方が詰まっていたが、少し押したら通ったとのこと。また、レ ントゲンを見ながら「片側の卵巣の位置が上にあるので癒着しているかもしれない」 といわれました。帰宅後、気になって調べると「子宮卵管造影検査は翌日もレントゲン を撮る」と書いてありましたが、私は撮られませんでした。通院しているのは田舎の普 通の産婦人科で、不妊治療に熱心なわけでもなく、このような感じで癒着の詳細がわ かるのか心配です。卵巣の位置が違うというパッと見で診断できるのか、卵管や卵管 采の癒着などを見落とすことはないのか? 癒着の判断材料は何なのでしょうか。

子宮卵管造影について

子宮卵管造影とはどのような検査で、受けたことで何がわかるのでしょうか。
臼井先生 子宮卵管造影検査は、子宮の頸管から子宮内に造影剤を注入して、子宮の形や卵管の通過性を調べるレントゲン検査。
当院でもそうですが、多くの施設では不妊のスクリーニング検査の1つとなっています。
造影剤にはいくつか種類があるのですか?
臼井先生 水溶性の造影剤と油性造影剤の2種類があります。
どちらを使用するかは医師の好みや経験によるところが大きいのでは。
効果に大きな差はないと思いますが、なかには、油性のほうが卵管の通りが良くなって検査後に妊娠する確率が高いという考えを持っている先生もいらっしゃるようです。
また、油性は薬代が安く、水溶性に比べて3分の1程度の費用で済みます。
ただし、油性は造影剤がお腹の中に長期間残ってしまうという欠点が。
水溶性はすぐになくなってしまうので、当院では水溶性の造影剤を採用しています。
hanakoさんは「翌日もレントゲンを撮らないのはおかしい」と疑問を持っていらっしゃるようですが、水溶性の場合は1日の検査で終了します。
調べた情報は油性の場合だったのでは?
油性はその場では拡散具合 がよくわからないことがあるので、翌日もう一度診ることになります。

正確に見るには腹腔鏡検査

癒着の疑いもあると診断されたようですが。
臼井先生 子宮卵管造影検査では、卵管の周りの癒着もある程度わかります
「癒着の判断材料は?」というご質問がありますが、それは造影剤が入っていく抵抗と拡散具合で判断することになるかと思います。
上のほうで癒着していると、そちらのほう に造影剤が偏って拡散していくので、担当医の先生は癒着の可能性があると診断されたのではないでしょうか。
しかし、どの程度の癒着なのか詳細な情報 は子宮卵管造影検査だけではわかりません。
精密に調べるためには、お腹の中を直接みる腹腔鏡検査が必要になってきます。

タイミングを2~3周期

では、hanakoさんは腹腔鏡検査を受けたほうがいいのでしょうか。
臼井先生 腹腔鏡検査をおすすめするのは明らかに卵管が詰まっている方や子宮内膜症などがひどく、卵巣が腫れているような方。
hanakoさんの場合、癒着の疑いはあるけれど卵管はしっかり通ったということですよね。
それでしたら、卵巣の機能を確認する意味でもタイミング療法を2、3周期やってみてはいかがでしょうか。
治療年数が1年ということですから、それで結果が出なかったらステップアップを考えていく。
一般的な産婦人科で正しい診断をしてもらえるのか不安があるようですね。
臼井先生 先生はきちんと診ていらっしゃると思います。
検査における診断は施設どうこうというより、医師の経験によるものが大きいのでは。子宮卵管造影検査を数多く経験されている医師ならご心配はないと思います。
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