体外受精を希望しています

一時帰国しての不妊治療 治療のタイミングは?

妊娠後の移動は問題ない?

夫の海外赴任などで一時帰国して日本で不妊治療をする場合、 治療を効率的に受けるポイントや注意点はあるのでしょうか。

木場公園クリニックの吉田淳先生に伺いました。

吉田 淳 先生 愛媛大学医学部卒業。産婦人科・泌尿器科医。生殖医療 専門医・臨床遺伝専門医。東京警察病院産婦人科、池下レ ディースチャイルドクリニック、東邦大学第一泌尿器科非常勤 講師などを経て、1999年木場公園クリニックを開院。不妊症 治療の情報収集のため、アメリカや日本国内の不妊症専門 施設の見学・研修を数多く積んでいる。クリニックと同じ建物 内にある「木場公園トレーニングセンター」で、体脂肪7.5%の アスリート姿を初披露! この施設はビジター制で、不妊治療 中の患者さんにも最適な運動ができるマシンなどが揃っていま す。先生も仕事に向けての体力づくりを日々行っているそう。

ドクターアドバイス

採卵できたら新鮮胚移植にもチャレンジを
海外にいる間も積極的に夫婦生活はもって
治療前にしっかり方針を決めておくことが大切
なおさん(43歳)からの相談 Q.現在、期間限定(残り半年~1年半)で海外在住です。昨年8月、一時帰国時に初めて不 妊治療を受け、体外受精で採卵。最終的に1個の受精卵を凍結することができました。 そこで日本を出国し、今までタイミングをとってみましたが、夫の年齢が高いこともあ り、結果は出ていません。そろそろ凍結した受精卵を移植することも考えなくてはと思っ ていますが、受精卵は1個しかないので、今回も採卵をしたうえで移植も考え、帰国した ほうがいいですよね? 1回目の移植で妊娠できなかったら、2回目まではトライしよう と思っています。また、もしも妊娠した場合は、その時点で飛行機の長時間移動(最低で も十数時間)は問題ないでしょうか?

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

昨年8~9月、一時帰国時に不妊治療を開始。年齢が高かったこともあ り、すぐに体外受精へ進む。卵管などに問題はなかったものの、1回目の 採卵で空胞だった際に子宮ポリープが見つかり、翌月、子宮鏡での手術 と再度の採卵を行い、最終的に1個の受精卵ができて凍結保存。

不妊の原因 となる病名

不明

現在の 治療方針

海外にいる時は自己タイミングのみ。
月経は順調で、周期は平均26日。

精子 データ

特に問題なし

海外在住の不妊治療

43歳という年齢と、一時的ではあるものの海外在住ということで、治療にも工夫やタイミングが必要かと思いますが、今後、どのような方針を立てていけばいいでしょうか。
吉田先生 昨年に採卵してできた受精卵を1個凍結されているということですよね。
これは最後の手段として考えて、やはり採卵を優先していったほうがいいのではないでしょうか。
年齢、そして現在の環境を考えると、今後それほど多くの機会、採卵や移植にトライするのは難しいと思います。
ご本人も採卵はあと1~2回と考えておられるようですし。
おそらく前回の採卵もそうだったと思うのですが、クロミフェンやフェマーラ ® などの飲み薬による排卵誘発、それに少し注射をプラスする低刺激、もしくは自然周期で卵子を採りにいく。
それらの方法で採れる卵子の数は1~2個だと思いますが、少数でも確保できるといいですね。

凍結するべきか?

採卵してできた受精卵は、また凍結保存しておいたほうがいいですか?
吉田先生 年齢が上がってくると、受精卵をとにかく凍結したほうがいいのか、長期に培養したほうがいいのかなど、いろいろな意見があると思います。
卵管水腫があるケースなど、確かに人によっては、体外で培養して凍結してから移植したほうが良い場合があるかもしれません。
しかし、早く戻したほうが良い場合もあります。
特に、年齢が高い方の場合、凍結してから 移植する、つまりホルモン補充周期で受精卵を戻す場合、1カ月の時間を要してしまいます。
年齢のことを考えると、その時間がもったいない感じがしますよね。
また、加齢により受精卵がデリケートになっていると、人によっては凍結することで劣化して移植できなくなってしまったり、質が落ちてしまうこともあります。
医師によって考え方が分かれると思います が、僕は年齢が上がってきたケースでは、なるべく手を掛けないほうがいいのではと考えています。
確かに、胚盤胞での移植は着床率や妊娠率が高いといわれていますが、それが絶対ではありません。
3日目に良い状態の受精卵がいくつかあって、それを胚盤胞まで育てたら質の良くないものしかできなかった。
結局、妊娠に至ることはなく、次回の移植では3日目の受精卵を戻したら結果が出た、という方もたくさんいらっしゃいます。
いくら培養技術が進化したといっても、やはり体外の培養システムと、お腹の中の環境がイコールになるということはないんですね。
もし、なおさんが次回の帰国で採卵にチャ レンジされるなら、僕でしたら凍結せずに、一度新鮮胚で戻すことを考えてみると思います。
ただ、それも固定的な考え方ではなく、3日目、5日目の新鮮胚、凍結融解した3日目、5日目の胚など、さまざまな選択肢があると思うので、まずは3日目の受精卵の状態を見て、どの方法をとるのかご提案すると思います。
なおさんもそのような意識で臨まれて治療スケジュールを立ててみてはいかがでしょうか。

夫婦生活は積極的に

海外にいる間は自己タイミングをとられているようですが、なかなか結果が出ないようです。
吉田先生 結果は出なくても、夫婦生活は積極的にもっていただきたいですね。
夫婦生活をもつことで、質の良い卵子が採れる可能性が高まると思いますから。
治療も大切ですが、妊娠をかなえるためには、夫婦生活・適度な運動・栄養バランスの良い食生活、この3つが基本です。
もう一つ心配されているのが、もし妊娠した場合、長時間のフライトは問題ないかということですが。
吉田先生 妊娠 12 週を過ぎていれば、 10 時間以上のフライトも問題はないと思います。
また 12 週より前だとしても、出血など異常な症状がなければ、飛行機に長時間乗ったからといって流産率が高くなるとは思いません。
ただ、100%安全とは言いきれません。
フライト中、何か不測の事態があった時に対応できないのは確かです。
その程度だというふうに考えていただきたいですね。

一時帰国での不妊治療

先生のクリニックでも、海外から一時帰国して不妊治療をする方はいらっしゃいますか?   そのような場合、効率よく治療を受け るポイントはあるのでしょうか。
吉田先生 当院でも結構いらっしゃいますよ。
不妊治療はデリケートな治療ですから、海外ではなかなか細やかなコミュニケーションがとりづらくて、帰国して受けられているのではないでしょうか。
また、外国の方が来日して治療されるケースもありますね。
一時帰国して治療を受ける場合は、時間を 無駄にしないように、最初から「どのような治療をするか」を医師とよく相談してからスタートするのが大切だと思います。
だいたいの方針を決めてしまえば、スケジュールを合わせるのはそれほど大変なことではなく、なおさんのように月経が比較的順調な方なら、生理1~3日目で帰国していただく。
そうすれば、そのまま治療に入ることができます。
うまくタイミングをとれば、海外、もしく は国内の遠い地域から来られても効率的に治療を受けられますので、ご安心いただきたいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。