排卵前にルトラール®を 飲むように言われましたが 問題ありませんか?

黄体ホルモン補充のために出される薬「ルトラール®」。

排卵前? 排卵後? どの時期に飲むのが正しいのでしょうか。

とくおかレディースクリニックの徳岡晋先生に伺いました。

徳岡 晋 先生 防衛医科大学校卒業。同校産婦人科学講座入局。自衛隊中 央病院産婦人科勤務後、防衛医科大学校医学研究科に入学 し、学位(医学博士)取得。2000年より木場公園クリニックに 勤務。5年間の勤務を経て2005年に独立し、とくおかレディー スクリニックを開設。A型・みずがめ座。「これからは妊娠率だけ ではなく、より質の高い不妊治療を目指していきたい」という先 生。そのためには患者さんの理解も必要。受診前の方も治療中 の方もぜひ、月1回同院で実施している勉強会に参加していた だきたいとのことです。

この薬が知りたい!

●ルトラール ®

排卵・受精後の子宮内膜が受 精卵を受け入れやすく、着床 しやすくなるように用いる経 口の黄体ホルモン剤。排卵後 2~6日目くらいから6~ 10 日間続けて補充する。

●デュファストン ®

ルトラール ® と同様に、排卵後 の黄体ホルモン補充に使い、着 床率を上げる。ルトラール ® で 副作用が出る場合、代わりに 処方されることもある。
くるみさん(30歳)からの投稿 Q. 卵胞が良い状態に成長したので、排卵を起こす注射をしました。その 日に性交渉をして、翌日からルトラール®を朝晩1錠ずつ服用するよ うに言われましたが、インターネットで調べたところ、「ルトラール®は 排卵前に服用すると、排卵を抑制してしまう」と書いてあったので、翌 日の朝は怖くて服用できませんでした。その日の夜に排卵痛があった ので、夜はルトラール®を服用。翌日からは朝晩1錠ずつ服用してい ます。 10日分処方されたので、最後に服用しなかった1錠が余りますが、そ の1錠は11日目の朝に服用するべきでしょうか?

■これまでの治療データ

検査・ 治療歴

3年前に体外受精を実施。1年前よりタイミング法から不妊治療を再スタート。

不妊の原因 となる病名

不明

現在の 治療方針

タイミング法

精子 データ

不明

ルトラールとは

くるみさんは現在、タイミング法にトライされていてルトラール ® を処方されたそうですが、これはどのような薬ですか?
徳岡先生 ルトラール ® は、女性ホルモンの一種である黄体ホルモン(プロゲステロン)と同様の働きをする黄体ホルモン剤です。
黄体ホルモンは、月経周期の後半や妊娠中の黄体、胎盤から分泌されるもので、妊娠を維持させるために必要なホルモンです。
不妊治療においては、排卵・受精後の子宮内膜が受精卵を受け入れやすく、着床しやすくなるように、黄体ホルモン補充のために用います。
自分のホルモンだけだと下がってしまう方 もいるので、黄体機能不全を予防して、しっかり安定した状態をキープするために、タイミング法でもほとんどの方に処方している薬なんですね。
排卵後のホルモン環境を維持するために、ルトラール ® の他に、デュファストン ® という薬もよく使われています。
関東の施設ではデュファストン ® 、関西方面の施設ではルトラール ® を使う傾向があるようですね。

デュファストンとの違い

薬の強さや効き目は同程度なのですか。
徳岡先生 どちらも長期服用しなければ安全ですが、ルトラール ® のほうが少し強く、効き目も高いように思います。
副作用としてごくまれに、むくみや頭 重感、悪心、特にむくみを感じる方がいらっしゃるようですが、合わない場合は、当院ではルトラール ® の代わりにデュファストン ® をお出ししています。
デュファストン ® で副作用が出る方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。

ルトラール服用のタイミング

性交渉の翌日からルトラール ® を服用するように言われたようですが、通常、この時期から飲み始めるものなのでしょうか。くるみさんがご心配されているように、排卵を抑制してしまうことはありませんか?
徳岡先生 くるみさんは、排卵を促すためにHCGの注射をされていますよね。
一般的には、注射をすると大体 36 ~ 40 時間後には排卵する、と考えられています。
その計算からいくと、やはり飲み始める時期が少し早いのではないでしょうか。
排卵する前ということになりますから。
ご心配されている「排卵を抑制してしまう」 ということはないと思いますが、あまりに早く黄体ホルモンを補充してしまうと、着床障害の原因になってしまうことがあります。
受精卵が入ってくる時に、ちょうど子宮内膜も受精卵を受け入れやすい状態に整っているのが理想なのですが、早くに黄体ホルモンが上がってしまうとそのタイミングがずれてしまいます。
そうすると、受精卵が子宮内膜につきにくくなってしまうんですね。
黄体ホルモン剤は緊急避妊薬、いわゆる着 床を妨げるピルのような作用がありますから、排卵する前に摂りすぎてしまうと、着床の環境には良くない状況を作ってしまうのではないかと思います。

超音波で確認して

やはり、服用の指示が早すぎるということでしょうか。
徳岡先生 そうですね。ご担当の先生の真意についてはわかりませんが、不妊治療専門のクリニックであれば、排卵後から飲み始めることをすすめると思います。
当院の場合、以前は、排卵後3、4日目くらいから約 10 日間補充していたのですが、最近はスタートをもっと遅くして、5、6日目くらいから6~8日間補充する形にしています。
ルトラール ® は結構強い薬なので、長く服用すると体温が下がらないという患者さんもいらっしゃいました。
しかし期間を短くすることでそのようなこともなくなり、子宮内膜も十分良い状態に維持できるということがわかりました。
患者さんが来院される手間を考えてのこと だったのかもしれませんが、超音波で排卵をきちんと確認してから黄体ホルモン剤を出す、というのが望ましいことかもしれません。

情報に左右されないで

くるみさんは怖かったので、排卵痛があった夜からルトラール ® を飲み始め、1錠余ってしまったということです。
徳岡先生 排卵痛があったということは、おそらく排卵があったということですから、その後に飲むのは問題ないと思います。
ただ、今回は間違っていなかったと思いますが、インターネットの情報をそのままご自身に当てはめてしまうのは少し危険がありますね。
特に薬の服用については気を付けていただく必要があると思います。
病気の治療にはさまざまな薬が使われます が、特に不妊治療は、薬を飲むタイミングや量をその方の状態に合わせてきちんと計算してお出ししています。
ですから、自己判断や他の方の情報をもとに飲み方を変えたり、飲むことをやめてしまうと、治療の効果が望めなくなってしまう場合も。
もし出された薬や飲み方に疑問を感じたら、担当医、もしくは看護師、薬剤師、受付でも構いませんから、遠慮せずに相談されたほうがいいと思います。
また、副作用など、飲み始めて体の異変を感じたら、すぐに先生に報告をすること。
服用しなかった1錠についても、どうした らいいか、直接先生に伺ってみてはどうでしょうか。
安心・納得して不妊治療を受けていただくために、正確かつ早めに疑問を解決していただきたいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。