子どもは夫婦が幸せになるための絶対条件ではない

田村秀子先生の 心の 玉手箱 Vol.18

不妊治療を始めて1年半。

卵巣機能の低下を指摘され、 私以上に落ち込んだのは、 問題のない主人のほう……。

夫婦の向き合い方について、 先生、アドバイスをお願いします。

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一 赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双 子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開 設。繊細な感性を秘めた、おおらかな人柄が魅力の先 生は、A型・みずがめ座。卵子の老化の改善に有効な アンチエイジング系のサプリメントにも詳しい先生。残念 ながら、まだ「これは!」というものには出会えていないそう ですが、いつも最新の情報をキャッチすべく、アンテナを 張っているそうです。
みちょさん(会社員・38歳)  Q. 体外受精の事前検査でAMHの値が0.1未満と 非常に低い値が出てしまい、 FSHの値も4から24に上がっていました。 先生もこの結果には驚かれたようで、 「厳しいけれど可能性はゼロではないから 頑張りましょう」と言ってくださいました。 私もかなりショックを受けたのですが 主人の落ち込みがひどく、 申し訳ない気持ちでいっぱいです。 「子どものいない人生はつらい」と 以前から言っている主人なので、 離婚したほうがいいのかとも考えてしまいます。 主人はそんなことは考えていないと 口では言っていますが、 私にはその態度がつらいです。

みちょさんの投稿に 寄せられたコメントです!

匿名(会社員・44 歳) まだ諦めるのは早いと思います「。自分が原因」と思い詰め ないことです。子どもができないのは夫婦の問題で、どちら か一方のみが悪いということは決してないと思います。ま ずは体外受精、頑張ってみましょう。私は鍼灸、漢方、生活習 慣の見直しなどで体外受精にステップアップして半年で妊 娠できました。旦那さんはみちょさんのネガティブな気持 ちに引きずられているだけだと思いますよ。明るく、自信を 持って、子どもを授かれるように頑張っている姿勢を見せ ましょう!
とくめー(主婦・33 歳) 私も主人に同じことを思い、「婦人科系が健康な子と結婚し てたら今頃パパだったね。もしこのまま子どもができなかっ たら離婚してもいいよ」と言ったことがあります。主人には 「子どもは欲しいが、お前あっての人生だ。二度と言わないで くれ」と叱られました。みちょさん以上にショックを受けて いるというご主人、大丈夫ですか? 夫婦の協力なくして不 妊治療はやっていけません。体外受精の前に、もう一度、お二 人の将来について話し合ったほうがいいと思います。

ご主人が どのくらい 子どもを望んでいるか

これは重いテーマです。
相談に「ご主人の落ち込みがひどくて」とありますよね?
要は、ご主人がどのくらい子どもを欲しいと思っていらっしゃるのかということによると思います。
たとえば、お寺や自営業など、家に跡取りが絶対に必要な場合。極端な話をすると、慰謝料を払ってでも離婚したいというケースは少なくないでしょう。
「夫婦に子どもがいない状態も、ある程度は頭に置きながら治療していきましょう」ということはたやすいですが、少し無責任なように思います。
相談の内容を拝見すると、みちょさんの不妊の原因は、明らかに卵巣の機能低下によるものだと思います。
FSHの値が 20 を超えるような場合、一過性ということもあるにはあるけれど、FSHに加えて、以前はそれほどでもなかったAMHの値が1年半ほどで 0.1 まで急激に下がっています。
これは、静かに卵巣の機能が低下しているサインです。
女性のほうは残された時間を大切にしたいと、体外受精に向けて気持ちの整理がついたかもしれないけれど、ご主人の落ち込みが激しいという点がやはり気になりますね。
うーん、詳しい事情は書かれていないのでわかりませんが、ただ、このご夫婦の場合、ご主人が奥さまに八つ当たりしたりしていないところが唯一の救いだと思います。

子どもをもつことが 幸せな夫婦の 絶対条件ではない

私が一番良くないと思うのは、「あなたが悪い」「私が悪い」とお互いに思ってしまうこと。そもそも、結婚したら子どもが必ず生まれると思う、その前提が間違っているわけですよ。
夫婦の契約のなかに、もちろん「子ども」は入っていません。
それなら、自分の子どもを産んでくれれば相手は誰だっていいわけです。
でも、夫婦の幸せの形ってそうではないでしょう?
「子はかすがい」 とはいうけれど、子どもはあくまでも追加点であって、それはメインではないはず。
そういう夫婦間の人生観を持つことができれば、気持ちに変化が生まれると思います。
人生は、子どもを持つことがすべてではないし、夫婦が幸せに生きていく絶対条件ではない。
夫婦がまっとうに夫婦として同じお墓に入っていくための、一つの付帯条件なんです。
子どもがいるから必ず幸せになれるとは限らない。
ただ、もしお二人が夫婦になって2、3年のカップルだとしたら、「夫婦としてのつながりはどうなんだ!」って問うのは酷かもしれませんね。
確かな絆をつくるには、それなりの時間が必要です。

かわいげのない 女にならないで

それでは、これからどうしていくのかですが、落ち込んでいるご主人を前に、みちょさんができること。
それは、精一杯かわいらしくいることです。
不妊治療で精一杯の努力をするのはもう当然のこととして、与えられている時間を有効に使いましょう。
自分のなかに悔いが残らないように、この際、仕事は急に熱が出たと言って休んででも、治療のスケかわいげのない 女にならないでジュールを何よりも優先して体外受精をするべきです。
だからといって、重く、深刻になりすぎないことがポイントです。
なおかつ、「主人に申し訳ない。こんな私だから……」という態度もいけません。
今みたいに萎縮してしまっている間は、ご主人だってどんどん離婚を考える方向へ傾いてしまうでしょう。
自分であらがえない運命というものは確かにあります。
でも、だったら今できることでベストを尽くしていきましょう。
ほら、いじけてるヤツって、人間でも動物でもかわいくないじゃないですか!  反対に向こうから寄ってくるヤツは、ヨシヨシって感じでかわいいでしょ?
ご主人が離婚を考えるような、かわいげのない女には絶対になってはいけません。
ここが女の見せどころです。
どんなに重く、つらいことを抱えていたとしても、明るく、あっけらかんと。
そんな駆け引きがうわべだけでなく本心からできる人は、この先に訪れる夫婦間の困難もうまく切り抜けていけると思います。

秀子の格言

子どもは夫婦が幸せになるための絶対条件ではないはず。 今の自分のベストを尽くしましょう
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。