グレードの良い胚盤胞を移植しても流産、もしくは着床に至りません

AAやABなど良好な胚盤胞を移植しても流産したり、 着床しないのは何が原因なのでしょうか。

京野アートクリニックの京野廣一先生に伺いました。

京野 廣一 先生 福島県立医科大学卒業後、東北大学医学部産科婦人科学教室入 局。1983年、チームの一員として日本初の体外受精による妊娠出 産に成功。1995年レディースクリニック京野(大崎市)開院、2007 年、京野アートクリニック(仙台市)開院。そして2012年秋、東京・高輪 に新クリニック「京野アートクリニック高輪」を開院。100年以上継続 するクリニックを目指し、真摯な姿勢で生殖医療に取り組む

ドクターアドバイス

●子宮鏡で中を調べ、環境をきれいに
●掻爬法や無月経にする治療も有効かも
●カウンセリングで精神状態を良好に
まるちゃんさん(33歳)からの投稿 Q. 昨年7月、9月、今年の3月に胚盤胞移植をしました。今 回5月にも移植しましたが、判定は微妙で、移植後8日 目でhCGの値が25。9月は妊娠8週で流産、7月、3月 は着床しませんでした。3月に不育症の検査を受けて、 その結果、先生からは「問題ない。不育症や抗リン脂質 抗体症候群ではなく、流産や着床しないのはたまたまだ」と言われました。胚盤胞のグレードはAAやAB、B A、BBで、不妊治療は男性因子によるものです。なぜ着床しないのか、今後、どのような治療をしていけばいい のでしょうか。

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

胚盤胞移植を4回実施し、3回のうち1回は妊娠後8日目で流産。
2回目、 3回目は着床せず、3回目の判定後に不育症の検査を受けました。
結果は、 抗PE IgM抗体 キニノーゲン+0.956 キニノーゲン-0.547 他の項目は基準値内でした。

不妊の原因 となる病名

男性不妊

現在の 治療方針

体外受精を続行中。

精子 データ

精子濃度は正常ですが、運動率は20%以下。

化学的流産?習慣性流産?

良好な胚盤胞を戻しても着床しないということは、不育症の疑いがあるのでしょうか。
京野先生 血液凝固系に関連するキニノーゲンの値は確かに高めだと思いますが、ほかに第 12 因子の異常など、もっと総合的に見てみなければわからないので、この値だけで不育症とはいえないですね。
一般的に不育症や習慣性流産は、3回続けて流産すると疑われます。
化学的流産は習慣性流産には含まれないので、そのような定義から考えると、この方は1回の流産ということになりますね。
担当医の先生がおっしゃるように、これまで流産したり、着床しなかったりしたのは、不育症によるものではないのかもしれません。

子宮内の検査を徹底する

では、着床しない原因は?
京野先生 一般的に、流産したり、着床が継続しないのは、受精卵側に8割、子宮内膜側に2割原因があるといわれています。
受精卵側だと染色体異常などが考えられますが、これを詳しく調べる検査は、現在、日本で受けることはできません。
まるちゃんさんはまだ年齢的にお若く、良 好な胚盤胞ができています。
もしかしたら受精卵側ではなく、着床する環境、つまり子宮内膜側に問題があるのかもしれませんね。
治療歴1年ということですが、子宮の中の状態をきちんと調べたことがあるのでしょうか。

子宮筋腫なども着床を妨げる

どのような状態だと着床に支障をきたすのですか。
京野先生 器質的なもの、たとえば子宮の形が変形していたり、奇形になっていないかどうか。
子宮筋腫なども着床を妨げることがあります。
また、卵管の状態も重要ですね。
卵管が詰まっている状態で、卵管水腫があると、卵管の中の悪いものが子宮の中に戻ってきて着床を妨げることがあります。
これら子宮や卵管などの状態をきちんと調べてみることも大切だと思います。
もし、まだされていないようでしたら、一 度、治療周期の中で子宮鏡の検査をされてみてはどうでしょうか。
中の状態がわかるうえ、その際、生理食塩水や蒸留水で子宮の中を洗って、きれいな環境にすることもできます。

症状に応じた投薬

ほかに子宮側にアプローチする治療は?
京野先生 1つは、移植の前の周期に子宮内膜の掻爬をしてみる。
内膜を少し引っ掻くことで炎症が起こり、その時に着床にとって良い物質が分泌されると考えられ、最近、この治療の成功例は多く発表されています。
もう1つは、半年くらい無月経にしてしまうという方法。
GnRHアゴニストの注射や点鼻薬で無月経の状態にして、生理機能を一度リセットしてから移植を行うと、着床率が上がったというケースもあります。
ほかに、排卵日くらいから副腎皮質ホルモ ンのプレドニンを服用したり、昔、子宮内膜症の治療薬として用いられていたダナゾールを服用するという方法もあります。
不育症の詳しい検査を受けて、やはり疑わ れるということであれば、バファリンⓇの投与も有効かもしれません。
初期流産というのは、血が固まるなどして赤ちゃんへ行く血流が遮断され、栄養が行かなくなることで起こ ります。
バファリンⓇという薬には血液の凝固を防ぐ作用があるので、もし免疫異常などがあれば、試されてみてもいいかもしれません。

良好胚盤胞が出来ているから、誘発法は合っている

排卵誘発法などを変える必要は?
京野先生 これだけ良好な胚盤胞ができているということは、排卵誘発の方法は合っていると思われますね。
やはりこの方の場合は、子宮内の着床環境に問題があるのではないでしょうか。
まだお若いし、グレードの良い胚盤胞もできている。結果は流産だったとはいえ、一度妊娠されているわけですから、期待は十分持てると思います。

ストレスから治療が不調に…

まだお若いからこそ、なぜ成功しないのか悩んでいらっしゃるんでしょうね。
京野先生 着床障害や不育症について、その原因や治療法はまだはっきりと解明されていません。
薬についても実は、きちんとしたエビデンスがないのが現状なんですね。
以前、学会で東大の先生が報告されていた のですが、不育症にとって有効なのはやさしいカウンセリングだとか。
人間の精神力は無限大なので、このような考え方も確かにあるかもしれません。
たとえば基礎体温なども、毎日毎日つけな ければいけないと思うとストレスになるじゃないですか。
それをやめて、タイミングも関係なく夫婦生活をもつようになったら妊娠した、という方も多くいらっしゃいます。
まるちゃんさんは移植でなかなか結果が出 ず、気持ちが少し落ち込んでいるのでは。
男性不妊ということで、ご主人もストレスを感じているかもしれません。
一度、ご夫婦でカウンセリングを受けられてみてはどうでしょうか。
そして、まだお若いので、しばらく治療をお休みしてみてもいいかと思います。
精子の運動率は 20 %と確かに低い値ですが、絶対的な不妊ではない。
これだけ良い胚盤胞ができるのなら自然妊娠の可能性もまだ期待できるので、男性不妊でも治療と関係なく、夫婦生活をもっていただきたいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。