石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病セン ター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2012年より久保みずきレディー スクリニック菅原記念診療所院長。不妊治療から周産期・小児医療まで、 地域に根ざした総合的なサポート態勢が整う同クリニックで、精力的に活動 する。水泳が得意で、海やスキューバダイビングが大好きという先生。とはい え、忙しすぎるのか「最近あまり行ってないなぁ」と、何だか遠い目に。夏休み は久しぶりに沖縄・石垣島へ家族旅行がしたいと語ってくださいました。
りんかさん(31歳)からの相談 Q.先日、初めての体外受精が陰性という結果でした。10月に初めて採卵しましたが、 OHSSのため6個の受精卵を凍結。12月28日から生理になり、1月12日が胚移植 でした。インターネットなどで調べると、 ※ ホルモン補充周期の場合は、生理19日目、もしくは20日目で移植している方が多いので、私の場合は16日目で移植したのは早かったのではないかと心配になっています。 次回は2カ月後、凍結胚移植にチャレンジしたいので、ぜひいい結果が出るように、移植日の決め方の、ある程度の基準を教えてください。
移植のタイミングは?
初めての体外受精で、胚移植のタイミングが早かったのではないかと気にしていらっしゃいます。
石原先生 確かにちょっと早かったかもしれませんね。
でも、黄体補充を開始する前の子宮内膜の厚さが7~8㎜あり、血液中のエストロゲンのレベルが200 pg / mL 以上あれば、多少早くても問題はないと思います。
そもそも移植のタイミングについ ては、何日目だからと日数で決められるものではありません。
ホルモン剤を投与し始めて、内膜の状態やホルモンレベルがちょうどよくなるのが、だいたい 14 日目くらいの「仮想の排卵日」になるということ。
自然に起こる月経の周期で、だいたい 14日目に排卵日がやってくるだろうと予測するのと同じです。
移植日の決定基準
先生はどのようにして移植日を決めているのですか?
石原先生 当院の場合、貼り薬の女性ホルモン剤をメインにして、あとは内服薬や、塗り薬を補助的に使います。
だいたい 14 、 15 日目に内膜の厚さが7~8㎜以上で、採血をしてホルモンレベルが十分であれば胚移植を行う段取りに入ります。
胚盤胞移植なら、そこからプラス5日かかるので、結果的に月経から 19 ~ 20 日後の移植日となるんですね。
りんかさんの場合、卵管閉塞でさ らにOHSSということなので、すぐに体外受精、胚の凍結保存、ホルモン補充周期での凍結融解胚移植という治療方針になったのだと思います。
移植のタイミングにも特に問題はありません。
2回目も同じくホルモン補充周期を使った移植だと思いますが、ホルモン補充周期で移植するのか、自然排卵周期で移植するのかは、医師や施設の考え方によるところが大きいです。
子宮内膜や自然の排卵に問題がなければ、自然排卵周期での胚移植も可能です。
担当の先生と相談してみてもいいでしょう。
次回の移植方法
2回目の胚移植に向けて、何かできることはありますか?
石原先生 一般的なことですが、内臓の血流をよくするために食生活にも気をつけて、体を冷やさないようにすること、鍼灸などもいいでしょう。
小さなことの積み重ねがよい結果につながりますよ。
残念ながら1回目の胚移植では妊 娠できませんでしたが、グレードのよい受精卵が6個も凍結できていますし、 31 歳とお若いので、あまり悲観的に考えることはないと思います。
見た目の評価なのであまり気にしなくても大丈夫ですが、4AAという胚盤胞のグレードも素晴らしい。
年齢的には、自然排卵の周期で移植してもいいような気もします。
一つ気になることといえば、卵管閉塞に起因する卵管水腫の有無ですね。
水腫があると移植してもなかなか着床できないので、一度先生に確認しておくとよいでしょう。
1日も早くよい結果が出ることを祈っています。
※ホルモン補充周期(胚移植法):ホルモン製剤を使用して自然排卵を抑え、子宮内膜を受精卵の着床に適した状態に調整して、胚移植をすること。胚移植日の変更や調節が困 難な自然周期胚移植法に比べ、胚移植日を調節でき、排卵障害による不妊でも適応可能であることがメリット。