卵子の凍結保存について

自然妊娠したものの死産。

現在40歳の私は、卵子を 凍結保存しておいたほうがいい?

自然妊娠したものの、死産という悲しい結果に。

年齢も考えると、卵を凍結保存をしておいたほうがいい?

内田クリニックの内田先生にお話を伺いました。

内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員と して、1987年、島根県での体外受精による初めての赤ちゃん誕 生に携わる。1997年に内田クリニック開業。1階は奥様が副 院長を務める内科・胃腸科、2階が婦人科。先生が最近腑に落 ちないのは、国も理解と動きを見せていたはずなのに国会で不妊 治療の助成金カットが決まったこと。「負担の大きい患者さんに、 少しでも妊娠のチャンスを増やしたいのに」と残念に思っていらっ しゃるそう。

ドクターアドバイス

●卵子の凍結には条件があるので受精卵の凍結保存を
●まずはカウンセリングなどで心の状態を整えて
●今後のことを夫婦で話し合うことが大切
ゆきさん(40歳)からの投稿 Q.39歳で自然妊娠しましたが30週で破水し、緊急帝王切開。赤ちゃんは原因 不明の肺疾患で、生まれてすぐ亡くなりました。年齢のこともあり、1日も早く 次の妊娠を望んでいますが、帝王切開したためしばらく間を置かなくてはなり ません。早くしないと妊娠できなくなってしまうのでは、という焦りと不安で、 うつ病になりそうです。 主人は「今から不妊治療まで考えなくてもいい」と慰めてくれますが、私が主 人より8歳年上で高齢なばかりに不幸にしてしまい、申し訳なくてなりません。 生理は産後2カ月で始まり、排卵らしきおりものもありました。今から卵子を冷 凍保存しておいたほうがいいのでしょうか?

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

不妊治療歴1年。
AMH:0.34ng/mL。
2013年2月、セ トロタイド法で排卵誘発、総採卵数3個。
成熟卵3

受精卵の凍結保存を

ゆきさんは現在 40 歳。昨年、自然妊娠したものの、死産という結果に。その後、しばらく妊娠できない期間があることから、年齢を考慮して卵子を凍結保存することを考えているようです。
内田先生 卵子の凍結保存についてはどこの施設も、患者さんの希望というよりも、悪性疾患に限って適応としている所がほとんどです。
たとえば、乳がんなどが見つかった場合に凍結しておくケースなどですね。
そういった条件なしに、若いうちに卵子を凍結しておくことはできないということですか?
内田先生 そうです。
たとえば、仕事でキャリアを積んでから妊娠を考えている女性が、若いうちに卵子を凍結保存しておこうというようなことは、現在の日本では適応されていません。
ゆきさんは、 40 歳という年齢や、帝王切開後の今、何もしないで過ごすことに焦りを感じている。
そのことは十分に伝わってきますし、僕も何らかの治療は早めに始めたほうがいいと思います。
でも、卵子の凍結保存は先ほど述べた通り規制があります。
ですから、凍結保存するのであれば受精卵を保存しておいたほうがいいと思います。
加えて、卵子の凍結保存はまだ技 術的に発展途上にあり、妊娠から出産に至る確率も低いとされています。
一方、受精卵の凍結は、1回の体外受精で複数個の受精卵が得られた場合、その周期で用いられなかった受精卵を凍結保存しておきます。
その後、子宮内膜やホルモンの状態に合わせて、凍結受精卵を融解して移植することができ、妊娠のチャンスも増えます。

卵子凍結、受精卵凍結の妊娠率

それぞれの妊娠の確率は、数字でわかりますか?
内田先生 2010年の統計(日本産科婦人科学会雑誌 64 巻9号掲載)では、凍結融解卵子を用いた治療による結果は、移植総回数 91 のうち妊娠数が 18 で、妊娠率は 19 ・8%。移植あたり生産率が9・9%(9人)です。
一方、凍結融解受精卵を用いた場合の結果は、移植総回数79,944のうち、妊娠数26,905で、妊娠率は 33 ・7%。移植あたり生 ※ 産率は 22 ・4%(17,883人)です。
これらの数字から、受精卵の凍結 胚移植がいかに多く、また妊娠率も卵子凍結に比べてかなり高いということがわかっていただけると思います。
実際に出生率も高くなっています。
この調査に答えた全国587施設のうち、凍結融解受精卵での妊娠分娩例報告施設数は411施設もあります。

カウンセリングの活用

ゆきさんは 39 歳で初めて妊娠し、不幸にも 30 週で赤ちゃんを亡くす悲しい思いをされています。ご主人より8歳年上で、今後の妊娠・出産への不安もかなり大きいようです。メンタルケアはどのようにしたらいいでしょうか?
内田先生 初めての妊娠で、その大切なお子さんを亡くされた悲しみもあり、つらい毎日だと思います。
ご主人より8歳年上ということから、焦りや不安が生じ、さまざまな感情が入り混じるのも当然だと思います。
しかし、心のバランスが崩れると どうしても前向きな気持ちになれなかったり、ご主人との関係もぎくしゃくしたりするのではないでしょうか。
まずは、今の気持ちを素直に打ち明けてよく話し合い、今後の計画を二人で考えることが大切だと思います。
また、ゆきさんは、相談の文面から、ご自分でうつ状態だと感じているようです。
そんな時は早めにカウンセリング窓口を訪ねてみてはいかがでしょうか。
産婦人科の施設によっては、カウンセリングを行っているところもありますし、行政や一般のカウンセリング窓口もあります。
そうした相談機関を気負わずに利用することで、気持ちが楽になったり、切り替わったりすることもあります。
優しいご主人に申し訳ないと思う気持ちだけでは前に進みません。
一度、気持ちの整理をするためにも、専門家に相談してみることをおすすめします。

夫婦間でのライフビジョンを共有

気持ちが不安定な状態では、ベストな治療はできないということでしょうか。
内田先生 そうです。
妊娠・出産は夫婦二人の問題であり、どちらか一方に責任があるということではありません。
今回ご提案した受精卵の凍結と体外受精というプランは、金銭的な負担もありますし、何よりご主人の協力が必要です。
また、妊娠・出産さえすれば夫婦間が安泰かというと、それはわかりません。
治療の前に、まずはお二人がしっかりと話し合い、築きたい家庭や家族のあり方、ライフビジョンについての考えを確認し合うことが大切なのではないでしょうか。
※生産率:移植などの治療を実施した場合に、赤ちゃんが生まれる確率。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。