柏崎 祐士 先生 京都府立医科大学医学部卒業。2000年まで日本大学板橋病院で主に 不妊治療に従事し、その間、米国エール大学医学部産婦人科で研修。その 後、「かしわざき産婦人科」副院長に。日本生殖医学会生殖医療専門医、日 本産科婦人科学会認定医。O型・おとめ座。かしわざき産婦人科は不妊治 療からお産まで診てもらうことができるので、妊娠後も安心。先生にとっても、 赤ちゃんを抱くまで患者さんを見届けられるのはとても嬉しいことなのだそう。
ガンバさん(37歳)からの相談 Q.凍結胚盤胞移植をして、1週間後に陽性の判定を受けました。その時、病院からもらった 血液検査の結果、β-hCGの値が20.7でした。半年前、新鮮胚移植をした時の判定日の 値は49.3。その時は結局、子宮外妊娠をしてしまいました。今回はその時より低い数値。 通常は50くらいないと妊娠継続は厳しいようですが、やはり望みは薄いのでしょうか。 また、冷えはよくないと思い、判定日と翌日にカイロを子宮のあたりにあてていましたが、 これが受精卵に悪影響になるということはありますか? 次回の判定日までに日常生活 で何かできることは? やっとできた胚盤胞なので、なんとか望みを持ちたいです。
β - h CGとは?
β - h CGとはどのような物質なのでしょうか。
柏崎先生 β - h CG(β - ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、胎盤から出てくる、女性ホルモンや黄体ホルモンの分泌を促すホルモンです。
h CGの中でもα鎖とβ鎖というのがあり、このうちβ鎖を持つβ- h CGが妊娠特有のホルモンで、妊娠中に分泌されます。
ですから、妊娠反応をみる時にはこのホルモンを調べます。
数値だけで把握しきれない?
20 ・7という値はかなり低い数値 なのですか?
柏崎先生 いくつか単位があるので、今回の数値がどの単位で出されたのか不明ですが、推測するに、おそらく mIU / mL ではないかと思わ れます。
妊娠していなければ 0.5 以 下なので、それから考えれば 20 ・7は高い数値。
妊娠、着床されていることは間違いありません。
半年前に子宮外妊娠された時は今回よりも高く、 49 ・3だったとのこと。
このホルモンは子宮以外で妊娠した場合も出るホルモンですから、通常と同じように産出されたということです。
確かに、一般的に望ましい値は 50 程度といわれていますが、これはあくまでも理想値です。
ガンバさんくらいの数値で妊娠が継続した方もいらっしゃいますし、これより高い数値の方が流産してしまうケースもあります。
この時点で結論を出すのは早いのではないでしょうか。
一喜一憂すべきでない
では、妊娠が確定的になってくるのはいつ頃なのでしょうか。
柏崎先生 何をもって妊娠と判断するかは、一般の方にとってはわかりづらいかもしれませんね。
これは現在、日本産科婦人科学会が指針を出しており、我々医療従事者は「エコーで胎のうが見えたもの」を妊娠と認識しています。
しかし妊娠判定は受けたものの、その後、胎のうが見えない場合は化学的流産ということになり、これは妊娠に入りません。
胎のうが見え始めるのはだいたい 妊娠5週目。
ですから、ガンバさんも今の時点であれこれ考えず、5週目まで待って、エコーで胎のうが見えるかどうかというところを出発点として考えたほうがいいのではないかと思います。
私はいつも患者さんにこうお話し しています。今は入学試験が終わって合格発表を待つ期間。
この時点で勉強してもしょうがない。
あとは腰を据えて待つしかありませんよ、と。
また、ガンバさんはカイロをお腹 にあてていたことを心配されていますが、妊娠にはまったく影響しませんのでご安心を。
大切な胚盤胞で思い入れもあると思いますが、万が一、よくない結果が出ても、あまり悲観されないように。
子宮外妊娠とはいえ、一度は妊娠されていますから、少なくとも卵子や精子に異常はないということです。
気持ちをゆったり持ち、今後も前向きに治療を続けていってほしいと思います。