親の存在。頼ってしまえばいい

田村秀子先生の心の玉手箱Vol.15

「孫の顔を早く見せてほしい」。 そんなメールを送ってくる父に、 不妊治療をしていることを 伝えるべきかどうか? 身内だからこそつらいのに……。 田村先生、どうしたらいいでしょうか?

田村秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤 務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営 する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開 設。繊細な感性を秘めた、おおらかな人柄が魅力の先生は、A型・みずが め座。何事に対しても好奇心旺盛な先生は、昨年、まつげエクステに初挑 戦。まるで自分のまつげのようなナチュラルな雰囲気が気に入っていて、か えってアイメイクをしなくなったとか。先生のように、いくつになっても美しくあ りたいと願う乙女の心、大切にしたいですね!
まちゃもんさん(主婦・37歳) Q.結婚して3年、赤ちゃんが欲しくて通院し、 1年半、まだコウノトリはやってきてくれません。 人工授精までやって、今度、 体外受精に進もうと思っています。 毎月リセットのたびに落ち込んで泣いて、 周りからはおめでたい話が聞こえてきて、 うらやましく思ったり……。 そんななか、最近、実父が「孫を早く見せろ」と 言い出しました。「あたしだって見たいんだー!!」 と心で叫びつつ、適当に流していましたが 「○○病院がいいらしい! 二人で行ってきたら」 などとメールが来たりします。 ここまで言われたら、通院していることを 言ったほうがいいのでしょうか? 実母や、旦那の両親は何も言いません。 父は、ややデリカシーに欠けるところがあるんです。 実母だけにでも言うべきでしょうか。

まちゃもんさんの投稿に 寄せられたコメントです!

のん(会社員・35 歳) 私は全部親に言っています。心が軽くなりますよ。親戚のき つい攻撃からも守ってくれます。甘えるとかではなく、病院 に通っていることや、これからの不安などを素直に打ち明け てみてはいかがでしょうか。うちは父親にもはっきり告げて います。知らないうちは「年も年なんだからさ!」とか結構き ついことを言われましたが、全部知っている今では、温かく 見守ってくれています。
まりも(主婦・38 歳) 私の父もデリカシーに欠けるところがあって苦労しました。 覚悟を決めて打ち明けたら、静かに見守ってくれた時期もあ りましたが、「治療しているのに子どもに恵まれないなんて」 という思考に切り替わってからは、父の言動にかなり悩まさ れました。最近は、信頼できる親戚の口添えで、ようやく父も 「よかれと思っていたことがそうではなかった」ことに気付い てくれたようです。話すことでいいほうにも悪いほうにも転じ ることがあるという実体験。ご参考になれば幸いです。

最初から臨戦態勢! やはり母親に話して 間に入ってもらって

まちゃもんさんによれば、お父さんは「デリカシーに欠ける人」とのこと。
つまり“いっちょかみ”をしたいわけですね。
そういう方の場合は、長年連れ添った奥様、つまりお母さんから伝えてもらうのが一番いいと思います。
ですから、先にお母さんに言ってしまうというのはどうでしょうか。
お母さんなら、長年お父さんをうまく操縦してこられて、上手な言い方も心得ているはず。
「あの子たちも頑張ってるみたいよー」
「いろいろ言うと、またストレスになっちゃうから」
などと、お母さんに頼んでぜひ言ってもらいましょう。
不妊症の患者さんは、ホルモン剤の影響などで心にも体にもさまざまなストレスがかかってきますね。
んどい時に一番なんとかできるのは、大抵の場合、親子関係です。
お姑さんや職場では許されないことも、実の親ならわかってくれることが多いですから。
私は、本当は、職場でもカミングアウトするべきだと思います。
必要のないストレスは抱え込むべきではないと思うからです。
患者さんでも、職場で不妊治療のことを告げた途端、スーッと楽になったという人は多いです。
いつも何も言わずに休んだり、仕事を残して帰っていたら、「なんだ、あいつ」ということになりかねませんが、治療していることがわかっていたら、応援してくれる人もいると思うのです。

こちらが大人になって マイルドに対応すれば わかってもらえるはず

お父さんに何か言われるたびに、
まちゃもんさんは「私だって欲しいんだーと心の中で叫んでいる」とのことですが、
もしかしたら、お父さんとはいつもケンカ腰になってしまうのではありませんか?
親子の間柄というのは、ああ言えばこう言うだろう、こう言えばああ言うだろうとわかっているから、一言しゃべっただけで頭の中がすでに臨戦態勢、最初からケンカ腰になっていることが多い。
でも、そんな頭の堅い父親のことはいったん置いといて、自分がもっと大人になってマイルドに受け答えすれば、わかってもらえるのかなと思います。
世の中には、確かにいろいろな形で、実の親だからこそ言いにくいというような関係の方もいらっしゃいます。
でも、まちゃもんさんはすでに「実母だけにでも言うべきでしょうか」と考えていらっしゃるわけですから、もう気付いているはず。
お父さんと無益なケンカをして、あえてストレスの種を増やすことはありません。
お父さんが「病院に行ったほうがいい」と言ってくださるのも、
たしかに本心は「放っておいてくれー!」だけれども、
決して悪いことではないので、気持ちはありがたく受け取ってあげましょう。
ご実家の近くにお住まいかどう かわからないけれど、治療でしんどい時は実家に戻り、家事から解放させてもらって羽を伸ばすとか、いろいろな意味で助けてもらえばいいんです。

実の親子だったら 言ってしまったことも やり直しがきく

世の中には、自分のすべてを吐き出していい相手ばかりいるわけではありませんよね。
親子なら「あれはそんなつもりじゃなかった」と、後で誤解を解いたり、関係の修復が可能ですが、他人が相手ではやはり難しい。
義理のご両親は子どもについて何もおっしゃらないということですが、どうなるかわかりません。
今後、何か言われた時のためにも、今のうちに実のお父さんを相手に練習しておくのもいいと思います。
子どもが思う以上に、親は子どものことを思っているもの。
ただ、表現が子どもの欲する形で現れてきていないだけなのです。

秀子の格言

世の中は、自分のすべてを 吐き出していい相手ばかりじゃない。 それが許されるのが親の存在。 頼ってしまえばいいのです。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。